本木雅弘、小泉今日子と32年ぶり共演は「これまで仕事を続けてきたことへのご褒美」 倉本聰原作・脚本映画「海の沈黙」で元恋人役
2024年10月31日 21:45
数々の名作ドラマを手がけてきた倉本聰原作・脚本で、本木雅弘主演の映画「海の沈黙」の舞台挨拶付き先行上映が10月31日、TOHOシネマズ新宿で行われ、本木と共演の小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、仲村トオル、菅野恵、佐野史郎と若松節朗監督、そして倉本が登壇した。
倉本が長年にわたって構想し、「どうしても書いておきたかった」と語るドラマで、人々の前から姿を消した天才画家が秘めてきた思い、美と芸術への執念、そして忘れられない過去を、超豪華キャスト陣で描く重厚なドラマだ。
初の倉本作品への出演となった本木は、「自分にとって初の倉本作品で、光栄なお誘いでしたが、現場では役者としてもがくばかりの日々。それでも、若松監督、スタッフ、小泉さんに救われ、その包容力に助けられ、なんとか終えることができました」と撮影を振り返る。
本木が演じた天才画家、津山竜次のかつての恋人、田村安奈を演じた小泉は、「私は割と自主性の強い、元気で強い女性の役が多いですが、今回は久しぶりにヒロインらしいヒロインをこの年でやらせていただき、とても嬉しかったです」と感想を述べる。
1982年にデビューした同期で、当時はアイドルとして絶大な人気を誇った本木と小泉は、今作では俳優として約32年ぶりの共演となった。本木は「小泉さんと私は10代からの43年来の同志でもありましたので、倉本さんの作品というエベレスト登頂のような頂きを目指すには、小泉さんの胸を借りて……というような気持ちでした。この作品での小泉さんとの共演は、これまで仕事を続けてきたことへのご褒美のようなありがたさがあります」と感慨深げに語り、四半世紀以上を超えての共演に、「やはり互いに15、6歳の頃の顔がそのまま重なっていくわけですが、変わっていない。そして、そこに小泉さんはとにかく菩薩のような母性があって……」と称える。
そんな本木の言葉を受けて、小泉は「本木君は自己肯定感が低すぎて、15歳の時から悩んで、いつも反省していて。でも、だからああいう役が作れるんだろうなって思う。私みたいにざっくりしてると、ああはできない」と若き日から変わらぬ本木の謙虚な姿勢が、ストイックな演技に直結していると分析した。
北海道から駆け付けた倉本は「やっと完成しました。演技者が素晴らしい。こんだけすごい人たちが集まってくれたことに感激しております」と名実ともに実力派の俳優陣による映画化を喜び、メガホンをとった若松監督は「倉本さんの『海の沈黙』、やっと完成しました。絵に興味のある方、とてもいい映画です。 絵に興味のない方も、本木さんと小泉さんのラブストーリーを十分堪能できます。どうぞお楽しみください」と熱気あふれる観客席に呼びかけた。
本木が演じる津山竜次の美術学校時代のライバル的存在で、小泉扮する田村安奈を妻とした画家の田村修三に息吹を注いだ石坂は、隣の小泉を紹介しながら「ここ夫婦なんです。そしてあちら(本木)が元恋人。謎が深まる映画です」と見どころをアピール。オファーを受けた際に、ほぼ同級生役を演じる本木や小泉との年齢差に戸惑いもあったそうだが、本木、石坂ともに、渾身の役作りでその差を埋めたという逸話を披露した。
美術鑑定の権威・清家を演じる仲村は、「昔インドで偽物のシルクのスカーフをたくさん買ってしまったことがあります。素材も人を見る目もない僕が、もし美術の権威に見えるとしたら、それは全て若松監督のおかげ」と笑いを誘いながら、実は本木、小泉と同期であり、かつては小泉と夫婦役を演じたというエピソードも披露し、会場を沸かせた。
倉本作品の常連でもある中井は、「以前から倉本先生の美というものに対する違和感についてのお話を僕は伺っていたので、いよいよこれを映画化される時が来たんだなと思いました」と述懐。芸術に興味のない文部科学大臣を演じた佐野は、その役柄とは反対に「現場では石坂さんと美術の話を良くしていました。本物の画家でいらっしゃいますし、僕も美術は好きなので、そういう興味もあって」と現場での裏話を語る。今作が映画初出演で、竜次を慕うバーテンダー・アザミを演じた菅野は「素敵な先輩方と、そして監督と倉本先生の作品をご一緒できたことをとても光栄に思う」と喜びを語った。
若松監督は、客席で舞台挨拶を見守った劇中の絵画や音楽担当者のほか、撮影監督をはじめとしたスタッフ陣をひとりずつ紹介し「僕はいつもこの人たちに支えられております」と感謝の言葉を述べていた。映画は11月22日に公開。
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