デッドラインは2025年――磁気テープの記録を大量喪失しないために今できることは? 国立映画アーカイブでイベント開催
2024年10月2日 13:00
磁気テープ映像の保存に警鐘を鳴らす「マグネティック・テープ・アラート:磁気テープ映像の保存に向けてできること」が10月5日、国立映画アーカイブ(長瀬記念ホール OZU)で開催される。ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」(10月27日)の記念特別イベントとなっており、ビデオレクチャー、トークイベントなどが行われる。
1895年の映画誕生から映像の時代が始まり、その映像をさらに人々の日常生活に浸透させたメディアが、磁気テープだ。その膨大なビデオテープの映像が“2025年までにデジタルファイル化しなければ永遠にアクセスできなくなりかねない”という警告をユネスコが発している。国立映画アーカイブでは、2021年に開催した「緊急フォーラム」に続く第2弾として、改めてこの問題に向き合う。
今回の開催にあたり、国立映画アーカイブ主任研究員・冨田美香氏よりコメントが到着した。詳細は、下記の通り。
「マグネティック・テープ・アラート」の問題については、とにかく周知するために、2021年10月に「マグネティック・テープ・アラート:膨大な磁気テープの映画遺産を失う前にできること」と題した緊急フォーラムを開催しました。
この「アラート」は、ユネスコと国際音声・視聴覚アーカイブ協会が2019年に発した警告で、カセットテープやビデオテープなど磁気テープに記録された音声や映像は、2025年までにデジタルファイル化しなければ二度とアクセスできなくなる可能性が高い、というもので、その根拠にはすごい説得力があるんですね。
最大の理由は、再生機器もその保守に必要なパーツの製造も保守サービスも2022年度末にすべて終了、という点です。次に、磁気テープのメインユーザーだった放送業界はすでにファイルベースに切り替わっているので、技術者は減少の一途であること、さらに、テープの経年劣化も加わって、デジタルファイル化の費用が高騰して、ファイル化を依頼できる数は減る、ということです。再生機器が減るにつれて、目の前にテープはあってもその記録情報にはアクセスできなくなる、ということですね。
実は2022年6月に、SONYがHDCAMとHDCAM-SRについて、一般サポートは2022年度末の終了だけれど、延長サポートサービス期限を2025年度末、特別再延長サポートサービス期限を2027年度末までする旨発表しましたので、デッドラインは少し伸びそうです。ただ、費用は上がるでしょうから、予算的にファイル化できる数が減っていくことには変わりないかもしれません。
3年前に[緊急フォーラム]を開催したとき、“2022年度末までのデジタルファイル化を促す”を最重要と考えていたので、ずいぶん広報をして、イベントの内容や参考資料などもすべて当館のHPやYouTube公式チャンネルで見られるようにしたんですね。
それで情報を発信したつもりでいたのですが、2025年が近づくに連れ、この問題についての取材やトークの依頼を受けることが増えてきまして、まだ全然情報が行き届いていないことを実感し、2025年を前にもう一度やらないといけないな、と思った次第です。
前回は、映画・映像分野の方々にこの問題を周知し、可能な対応策をそれぞれ進めていただくことを目的に開催しました。その時にも映画・映像関係者だけではなく、美術館や図書館、大学の方なども多数参加しておられました。ビデオアートなど、現代美術にとっても非常に大きな問題ですからね。今回は、もっと枠を広げることにしました。
1970年代以降、ビデオテープで記録を撮ることは、民俗学の調査や歴史のインタビュー、伝統芸能や舞台芸術、音楽、スポーツの記録など広範な分野で活用されただけでなく、1980年代には普通の人々が日常生活を撮り、職場や地域でもさまざまな行事の記録を撮るようになりました。それらの映像をおさめたテープは、個人の家庭をはじめ、学校や企業の資料室、各地の歴史資料館や図書館・図書室などに保管されているものも多いでしょう。そういう方々にも、この情報を伝えると同時に、今できることを進めてほしいので、これらの分野を代表する国立機関の、国立歴史民俗博物館、 国立劇場、国立国会図書館から、当該分野における磁気テープ資料の貴重性、デジタルファイル化やデータ保存に関する活動について報告していただきます。磁気テープの映像と一言で言っても、それぞれの分野で被写体や撮影者、作成目的・使用用途、権利関係なども随分違うでしょうから、いろんな分野の方々に、参考にしていただきたいと考えています。
イベントは事前申請制で、当日までに満席になるかもしれません。当日の様子はビデオで撮影し、編集版を、後日、当館YouTube公式チャンネルから公開する予定です。
また、当館のウェブサイトに、「マグネティック・テープ・アラート」やデジタルファイル化についての参考資料、ビデオテープのデジタル化業者一覧などを掲載していますので、そちらもご利用ください。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。