プライベート旅行は三島由紀夫文学館へ…日本を愛する仏教徒のロシア鬼才が「チャイコフスキーの妻」で描いた女性のエゴと執着
2024年9月5日 17:00
![キリル・セレブレンニコフ監督](https://eiga.k-img.com/images/buzz/112369/8f059257a8b1ffd6/640.jpg)
ロシアの天才作曲家を盲目的に愛した“世紀の悪妻”アントニーナの残酷な愛のかたちを描いた、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作「チャイコフスキーの妻」が9月6日公開される。ロシアではタブー視されてきた「チャイコフスキーは同性愛者だった」という事実と、“世紀の悪妻”という汚名を着せられたアントニーナの知られざる実像を、史実をもとに大胆な解釈を織り交ぜて描き出す。
フランスで異例の大ヒットを記録した本作の監督、キリル・セレブレンニコフの特別インタビューを映画.comが入手した。
![画像2](https://eiga.k-img.com/images/buzz/112369/1e564f698bcbc0d3/640.jpg?1725435117)
チャイコフスキーを人々が期待するような形で描くつもりはありませんでした。ある意味では、社会問題やロシア社会を描いたといえるかもしれません。ロシア社会では、チャイコフスキーのような天才作曲家の私生活について信じない人々もいれば、彼の噂やゴシップをもっと聞きたがる人々もいます。それはアントニーナも同様で、彼の私生活について何かを聞いても信じようとしません。彼女は夫と愛し合っていると確信していますが、現実は異なり、その事実を知ることは彼女にとっては悲劇でした。それと同時に、この物語はアントニーナという一人の女性の物語とも言えます。彼女は、男性社会の中で周囲の男たちに立ち向かい、男性によって作り上げられた法律に反発したのです。愛のために社会と戦うというアントニーナの女性像は、現代に生きる私たちにとっても影響を与えるものがあると思います。
![画像3](https://eiga.k-img.com/images/buzz/112369/0fda8e34c6ca64eb/640.jpg?1725435140)
女性は時として、現実ではなく空想を愛してしまうような気がします。そして、アントニーナはチャイコフスキーという人物ではなく、イデア的な“ロシアの天才作曲家”を追い求めていたといえるでしょう。またこの物語は、巨大なエゴに関する話であるとも思っています。仏教徒である私には身近な話ですが、エゴは人にとても悪い影響を与え、周囲を破壊してしまいます。彼女のエゴとチャイコフスキーへの執着は大きく関係していると思います。
私はロシアのインディペンデント系の音楽シーンが大好きなのです。彼らは皆、私の友達で、ショートパリスは私のこれまでの映画にも曲を提供してくれています。オクシミロンもとても良い友人で、今回初めて映画に出演してもらいました。彼らにとっても、19世紀を舞台にした映画に参加できたのは興味深い経験だったのではないでしょうか。
![画像4](https://eiga.k-img.com/images/buzz/112369/e52c4365bca99dac/640.jpg?1725435165)
日本に訪れたのは今回が2度目でした。前回は国際交流基金の招聘だったのですが、今回はプライベートでの来日でした。日本はとてもユニークで、見るものすべて美しく、特に伝統とモダンなものとの融合が素晴らしいと思います。現代アート、自然、禅…様々な素晴らしいものを堪能しました。日本や日本で暮らす人々からインスピレーションを得たので、いつか日本で映画を撮りたいと思っています。ショッピングもとても楽しかったです!渋谷で売っている中で最も大きなスーツケースを2つ買って、日本製の服などを沢山購入したので、私はかなり日本経済に寄与したと言えるのではないでしょうか(笑)。皆さんにお見せしたいものがあって…(ゴジラのマスクを被って登場)。昨日はルール・トリエンナーレのオープニングがあったのですが、そこでこのマスクを被り、「日本から来たゴジラです!」と挨拶をしました(笑)。
![画像5](https://eiga.k-img.com/images/buzz/112369/e1903270971e5070/640.jpg?1725435192)
黒澤明や大島渚、今村昌平などのレジェンド達には、幼少期から強い影響を受けていて、それは今の日本への関心に繋がっていると思います。また、三島由紀夫の文学や彼のパーソナリティもとても興味深く、今回の来日で三島が最期に行った食事処を訪れたりしました。彼も私の人生に大きな影響を与えた人物と言えます。映画とは離れますが、ふじのくに⇄せかい演劇祭の初代芸術総監督である鈴木忠志さんはモスクワ芸術座で演出をしていたり、舞踏家である工藤丈輝さんはモスクワの劇場で公演を行っていたり…彼らの活動からも影響を受けています。
私は日本、そして日本の皆さんのことを愛しています。今後、もしかしたら演劇作品、ミュージカル作品もしくは映画作品を日本で制作することがあるかもしれません。私の作品に興味を持っていただけたら、とてもうれしく思います!
「チャイコフスキーの妻」は、9月6日から、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
(C)HYPE FILM - KINOPRIME - LOGICAL PICTURES – CHARADES PRODUCTIONS – BORD CADRE FILMS – ARTE FRANCE CINEMA
関連ニュース
![推しと結婚できたが、彼はゲイだった。愛を拒まれ狂気に陥った女は… 「白鳥の湖」旋律が戦慄へ「チャイコフスキーの妻」予告&場面写真](https://eiga.k-img.com/images/buzz/111573/813af5c004440484/320.jpg?1721891214)
![同性愛者だった天才作曲家と“世紀の悪妻”と汚名を着せられた妻の残酷な愛描く「チャイコフスキーの妻」9月6日公開](https://eiga.k-img.com/images/buzz/111145/54fa2da1bedccaa6/320.jpg?1719988895)
![天才作曲家ラベルの名曲誕生秘話を描く音楽映画「ボレロ 永遠の旋律」8月9日公開](https://eiga.k-img.com/images/buzz/110393/15275a0e6973ef62/320.jpg?1716772140)
![世界的バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー映画第2弾監督はアントン・コービン](https://eiga.k-img.com/images/buzz/90479/0d933b18048d47ec/320.jpg?1623477142)
![名キャメラマン上田正治さんの遺作「雪の花」封切り “盟友”小泉堯史監督「本当に残念」、松坂桃李「ものすごいパワーとエネルギー」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/115310/52a823620995a3f4/320.jpg?1737692342)
![山田裕貴主演でミステリーランキング2冠「爆弾」映画化! 伊藤沙莉×染谷将太×渡部篤郎も参戦【超特報映像もあり】](https://eiga.k-img.com/images/buzz/115213/f233412747676ec5/320.jpg?1737347542)
山田裕貴主演でミステリーランキング2冠「爆弾」映画化! 伊藤沙莉×染谷将太×渡部篤郎も参戦【超特報映像もあり】
2025年1月21日 05:00
映画.com注目特集をチェック
![ショウタイムセブンの注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5380/b5d72760f5ef3c7b/320.jpg?1738849989)
ショウタイムセブン
【阿部寛がヤバすぎる】異常な主人公 VS イカれた爆弾テロ犯…衝撃のラスト6分、狂気の向こう側へ
提供:アスミック・エース
![芸能生活50年で“初”体験!の特別企画](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5381/cc8994b4c8dc1049/320.jpg?1738287500)
芸能生活50年で“初”体験!
【無料】映画の面白さが何倍にもなる特別番組…貴重な瞬間を見逃すな!(提供:BS10 スターチャンネル)
![「アベンジャーズ」と関係するかもしれない“大事件”の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5377/ec993b422a223802/320.jpg?1738809133)
「アベンジャーズ」と関係するかもしれない“大事件”
【物語のカギは“日本”!?】このマーベル最新作は観るべきか、否か――?
提供:ディズニー
![セプテンバー5の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5376/0193745c34c4d2bc/320.jpg?1738639833)
セプテンバー5
【“史上最悪”の事件を、全世界に生放送】こんな映像、観ていいのか?ショッキングな実話
提供:東和ピクチャーズ
![次に観るべき“珠玉の衝撃作”の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5375/6356d5dc8d9b1d53/320.jpg?1738716873)
次に観るべき“珠玉の衝撃作”
【余命わずかの親友から奇妙なお願い】「私が死ぬとき隣の部屋にいて」――魂に効く“最高傑作”更新
提供:ワーナー・ブラザース映画
![激しく、心を揺さぶる超良作の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5336/e472dd9e95eda90b/320.jpg?1738287092)
激しく、心を揺さぶる超良作
【涙腺が危ない】切なすぎる物語…さらに脳がバグる映像美×極限の臨場感にド肝を抜かれる!
提供:ディズニー