「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」は“歴代シリーズ新記録”達成なるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年8月9日 11:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週末8月9日(金)から、「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの31作目「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」が公開されます。(2023年公開「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」は“番外編”だったため、シリーズ累計カウントから除外)
この作品で注目すべきは、大きく2点あります。
まず1点目は、「映画クレヨンしんちゃん」が「GW映画→夏休み映画」になったこと。
同シリーズは、2作目「ブリブリ王国の秘宝」(1994年)から4月のGWシーズン前に公開される作品となっていました。
GW映画として定着していましたが、同時期の劇場版「名探偵コナン」シリーズがだんだんと大きくなりすぎてしまい、スクリーン数や観客の食い合いが生まれていました。
そんな中、新型コロナウイルスの影響を機に、28作目「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」(2020年)が9月11日公開、29作目「謎メキ!花の天カス学園」(2021)が7月30日公開と“夏季”に移行。
30作目「もののけニンジャ珍風伝」(2022)では4月22日公開と一度“GW狙い”となりましたが、番外編「しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」では8月4日公開と“夏季”へと戻っています。本作「オラたちの恐竜日記」が8月9日公開となるので、現段階では「夏休み映画」へとシフトしたように思います。
そして2点目は昨年公開された「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」で、「初めて3DCGアニメーション映画化」にも挑戦し、バリエーションも生まれてきた点です。
この3DCGアニメーション化については、制作コストが格段に上がるため、興行収入のハードルが思いっきり上がってしまうのが難点ですが、この試みによりプラスの効果もいくつか生まれました。
まずは、何といっても制作体制に余裕ができたことでしょう。
通常のアニメーション映画は、こだわりすぎるとキリのない面もあるため、とにかく余裕がなくて完成が公開のギリギリになってしまうケースが、ある意味で「平常運転」だったりもします。
そんな中、 「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」で驚いたのが、試写の開催が公開ギリギリどころか、なんとGW後の5月13日には試写案内が届いたのです!
これは、前作3DCGアニメーション版「超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」の効果と言えそうです。
というのも、通常のアニメーション映画と、番外編の3DCGアニメーション版とは基本的にはスタッフが異なるため、通常のアニメーション映画の方に余裕が生まれたのです。
このような効果があると、制作にゆとりが生まれて、作品のクオリティーが上がる面も期待できます。
さらに本作は、「バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」(2013年)と「もののけニンジャ珍風伝」(2022年)という名作を手掛けた佐々木忍監督作品なので、より期待ができる面もあるのです。
実際に作品を見てみると、恐竜を題材に、「トンデモ感」のある設定ではなく、地に足のついた上手い構成で、本作も名作の部類に入ると思います。
そうなると興行収入にも期待がかかりますが、上手くいけば歴代最高を狙えるのかもしれません。
「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの歴代最高の興行収入は、「オラの引越し物語 サボテン大襲撃」(2015年)が記録した22.9億円となっています。
ただ、昨年公開された「しん次元!」版も含めると、「超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」の興行収入は24.7億円と、さらに上になっています。
「しん次元!」版は、「ドラえもん」でいうところの「STAND BY ME ドラえもん」シリーズのようなものなので、現状の「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの歴代最高興行収入は22.9億円と言えます。
以上の流れを踏まえて考えると、やはり「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」が新記録を達成する可能性は低くはないでしょう。
昨年の「超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」の流れがあるので、今年もその層の鑑賞が期待できる面があります。
そして、作品の出来が非常に良い点もあります。
その一方で、打って変わって目下の夏休み映画が激戦状態なので、座席や観客の奪い合いが起こっている状態もあり、手放しでは楽観できない状況もあります。
何はともあれ、「しん次元!」版といったバリエーションの変化は、現状では好循環をもたらすと言えそうです。
「超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」は、構想を含め、製作期間7年におよんだそうですが、モデリングは作れたので、続編の場合には制作費が1億円程度は減らせると思われます(とは言え、まだまだ制作費が高いのは事実でしょうが)。
果たして3DCGアニメーション版の「しん次元!」はシリーズ化するのかも含めて、今後の「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの行方に注目したいと思います!
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
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