アイナ・ジ・エンド、5時間半の超大作に生まれ変わった初主演作!岩井俊二監督との撮影は「尊い時間だった」
2024年7月25日 20:00
昨年10月に公開された岩井俊二監督の「キリエのうた」に追加シーンを加え、再編集を行ったドラマ「路上のルカ」のワールドプレミア上映会が7月25日、東京・新宿バルト9で行われ、主演のアイナ・ジ・エンドと、岩井監督が舞台挨拶に登壇した。
歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエ、行方のわからなくなった婚約者を捜す青年・夏彦、傷ついた人々に寄り添う小学校教師・フミ、過去と名前を捨ててキリエのマネジャーとなる謎めいた女性・イッコら、降りかかる苦難に翻ろうされながら出会いと別れを繰り返す男女4人の13年間にわたる愛の物語を、切なくもドラマチックに描き出した本作。
「キリエのうた」日本公開版は2時間59分だったが、編集当初の素材は6時間近くあり、タイトルも異なっていた。撮影に使用された脚本は時系列に沿って描かれていたが、その脚本と初期編集版をもとに岩井監督自らが再編集を行い、全10話、5時間半超えのドラマ版を完成させた。
アイナにとっても、本作は大切な作品だったという。「お芝居がほぼ初めてでした。台本をいただくタイミング、セリフを言うタイミングも何も分からずに現場に入ったんですが、覚えているのは広瀬すずちゃんが台本をいただいた時に『こんな分厚い台本を見たことがない、おさまるのかな』と言っていたこと。やっぱり『キリエのうた』って台本が多いのかな、セリフも多いのかなと思っていたんですが、まさか5時間半バージョン。その作品がタイトルも生まれ変わって世に出ていくこと、すずちゃんの言葉から始まったのかなと思っています」と振り返る。ちなみに台本の厚さは「岩井さんの親指くらい」だったという。
もともと「キリエのうた」自体が撮影途中まで、「路上のルカ」というタイトルで撮影を行っていたという。「最近はうちの台本は真っ白で何も書いていないことが多くて。それでクランクアップのときに、タイトルと名前を書いた表紙をつくって。役者さんにおみやげとして渡すということをやっていたんですが、(松村)北斗くんには『路上のルカ』と書いて渡してしまったので。申し訳なかったな」という岩井監督。その後、劇場公開版の編集をしているうちに「路上のルカ」というタイトルがしっくりこなくなったため、「キリエのうた」に変更することにしたという。
撮影は約2年前。「自分もちょっとずつ大人になって。キリエの人格を忘れていました」というアイナだが、「路上のルカ」を観て、その時の心境をすべて思い出したという。「岩井さんと(広瀬)すずちゃんといただけで、わたしってルカだったんだなと。少女の心を宿してくださったんだなと。本当に尊い時間だったんだなと。あんな感性は、生きていても二度と宿らないだろうなと思うくらい、本当に珍しい感受性で歌を歌っていたので、あらためて歌唱シーンを見ても、あの歌は二度と歌えないです。すずちゃんと岩井さん、松村さんがいてくれて、歌えた歌だなと。そういう歌のシーンも『キリエのうた』よりも長い尺をつかっていただいているので。その時代でしか感じられない歌を感じてほしいなと思いました」。
その言葉を聞いていた岩井監督も「本当に僕にとっては至福の時間というか、幸せな時間でした。それだけに映画の時は入りきれなかった曲がけっこうあって。ここでリベンジじゃないけど、泣く泣く切っていたシーンが全部帰って来たので。会話だったりも、細やかに見ていただけると思う。そして(映画版を)何度も観られた方も新鮮なやり取りが出てきますし、あと順番がちがうので。そもそもアイナさんの登場シーンからして全然違う。まったく違う作品を観ている感覚になるんじゃないかなと思います」。
そんなアイナについて「僕にとっては、役者をはじめてやるということではなく、ここ数年リスペクトしている日本の表現者というか。歌に踊り、作詞・作曲、なんでもやってしまうけど、やれるというだけでなく、アイナ・ジ・エンドという唯一無二の世界をつくっている表現者なので。年齢は違いますけど、そんな表現者を現場にお招きして、僕もそれなりに緊張していました」と振り返った岩井監督。「そういう存在なので、これからもどんどん世界を驚かせてほしいですし、また一緒に映画をつくれたらなと思います」とラブコールに、アイナもうれしそうな笑顔を見せた。
ドラマ「路上のルカ」(全10話)は、7月28日午後6時半から日本映画専門チャンネルでテレビ初放送。
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