【「ボブ・マーリー ONE LOVE」評論】この時代にボブ・マーリーのレゲエが全ての観客の心に染み入ってくる
2024年5月19日 09:00

別にレゲエファンでなくても知っている伝説のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの半生を、側で支え続けた妻のリタを始め、家族の協力を得て映画化。ここで描かれるのは、主にマーリーの母国、ジャマイカがイギリスから独立した後の1970年代、政情が不安定で暴力が蔓延していたジャマイカで、マーリーが”音楽で”いかに国民を団結させるのか? そのために命を削る姿だ。
背後から流れて来るのは、誰もがどこかで聴いたことがある”I Shot The Sheriff”や、映画のタイトルにも使われている”ONE LOVE”等、マーリーが残したヒットソングの数々だ。ジャマイカの風が頬を撫でるように心地いいスローで乗りのいいメロディは、常にマーリーに付いてまわる死の予感とあまりにもかけ離れている分、逆にマーリーが信じた音楽の純粋さと透明性を際立たせてもいる。
同じ社会主義を掲げる2大政党の間で血生臭い抗争が展開していた当時のジャマイカで、マーリーは平和のためのコンサート”スマイル・ジャマイカ”を開催しようとする。結果、マーリーと家族が銃弾の標的になるのだが、それでもマーリーは音楽の力を疑ってはいなかった。その根底には、マーリーが1930年代にジャマイカで発展した特有の思想、ラスタファリの信奉者だったことがある。黒人解放運動の礎とも言われ、”兵士と音楽家は変化のための道具である”と明記されているラスタファリの教えが、今も語り継がれ、愛聴されるボブ・マーリーの音楽と生き方の源泉になっているのだ。
そこに、本作が今、作られた意味がある気がする。融和から分断へ、対話から戦争へ、いとも簡単にシフトするこの時代に、マーリーのレゲエが全ての観客の心に染み入ってくる。”ONE LOVE”の中にこんな歌詞がある。「ひとつの愛、ひとつの心。ひとつになれば最高の気分さ。俺は全人類に訴えているんだ。ひとつになって最高の気分になろうぜ」
劇中には、サッカー好きだったマーリーがトラックスーツをソックスにインし、アディダスのシューズを履き、ドレッドヘアを揺らしながらサッカーボールを転がしているシーンがある。家族の監修によりリアルに再現されたというそれらアウトフィットからは、マーリーのライフスタイルが垣間見えて興味深い。身長もルックも全体的なプロポーションも実物とはかけ離れたキングズリー・ベン=アディルが、マーリーへのリスペクトを込めてレジェンドに肉薄している。姿形は違っても彼が表現する笑顔の中の悲しみは、観終わってもしばらく目に焼きついて離れない。また、ユダヤ人によるイスラエル建国までを描いたポール・ニューマン主演のハリウッド映画、「栄光への脱出」(1961年)と、マーリーのアルバムタイトルとの、恐らくマニアにとっては常識の、映画ファンにとっては意外な関係性もさりげなく明かされて楽しい気分になる。
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