“人間兵器”と呼ばれる難民たち……国境での強制排除の過酷な真実描く「人間の境界」予告編、新場面写真
2024年3月27日 12:00

2023年ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で審査員特別賞を受賞したポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド最新作「人間の境界」の予告編、新場面写真が公開された。
ベラルーシ政府がEUに混乱を引き起こす狙いで大勢の難民をポーランド国境へと移送する“人間兵器”とよばれる策略に翻弄された人々の過酷な運命を、シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年など複数の視点から描き出す群像劇。安全な生活を送れると信じてポーランドへ渡ってきたシリア人家族。しかし、ようやく辿り着いた直後、武装した警備隊から非人道的な扱いを受けた上にベラルーシへ送り返され、そのベラルーシからも再びポーランドへ強制移送されるという、どちらの国からも難民を押し付け合うような暴力と迫害に満ちた過酷な状況を強いられ、無限地獄のような日々を過ごすことになる。
政府や右派勢力からの攻撃を避けるためスケジュールや撮影場所は極秘裏のうちに、わずか24日間で撮影を敢行。大量のインタビューや資料に基づき、隠蔽されかけた国境の真実を描きながら、心を揺さぶる人間ドラマとして映像化した。また、実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングし、ドキュメンタリーと見紛うほどの圧倒的なリアリズムが産み出されている。
国際的な高評価の一方で、当時のポーランド政権は本作を激しく非難し、政府vs映画という表現を巡る闘いが注目を集めたが、ほとんどの独立系映画館がその命令を拒否。ヨーロッパ映画監督連盟(FERA)をはじめ多数の映画人がホランド監督の支持を表明し、本国で異例の大ヒットを記録した。
このほど公開された予告編は、冒頭のテロップで、2021年にベラルーシがEUの混乱を狙いポーランド国境に大量の難民を移送し、この難民たちが<人間兵器>と呼ばれることになった映画の背景を紹介。続けて、ベラルーシ経由でポーランドに渡ることで安全なうちにEUに亡命できると信じたシリア人家族たちが飛行機でベラルーシに向かう様子を映し出す。EUに暮らす親戚のサポートもあり手筈は万端なはずだったが、ポーランドにたどり着いたと歓喜する彼らを待ち受けていたのは、彼らを“観光客”と揶揄する武装したポーランドの国境警備隊による強制排除だった。一家は極寒の森に敷かれる鉄条網を隔てた両国から繰り返し暴力に満ちた迫害を受ける状況を強いられていく。映像では、ポーランドの国境警備隊に抵抗し、難民たちを懸命にサポートしようとする支援活動家グループの奮闘、警備の任務に当たる若い隊員の苦悩も切り取られている。
ホランド監督は、「ワルシャワから3時間たらずの場所で、難民は彼らの運命を左右する人道的大惨事に直面している…私はその事実に心を動かされました。彼らの状況に象徴的なものを痛切に感じ、そしておそらくは、私たちの世界の道徳的・政治的崩壊につながりかねないドラマの前日譚を見たのです」などと、本作を製作することを決意した理由を明かしている。
5月3日からTOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開。
(C)2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., Ceska televize, Mazovia Institute of Culture
フォトギャラリー
Amazonで関連商品を見る
関連ニュース





国境の難民の現状、薄毛兄弟の植毛旅行、仏文学の文字映像化など多彩なテーマ 短編コンペ「社会への眼差し」「寓話の現在」【ひろしまアニメーションシーズン2024】
2024年8月16日 14:00

映画.com注目特集をチェック

ワン・バトル・アフター・アナザー
【個人的・下半期で最も観たい映画を実際に観たら…】期待ぶち抜けの異常な面白さでとんでもなかった
提供:ワーナー・ブラザース映画

めちゃくちゃ笑って、すっげぇ楽しかった超刺激作
【これめちゃくちゃ良かった】激チャラ大学生が襲いかかってきて、なぜか勝手に死んでいきます(涙)
提供:ライツキューブ

てっぺんの向こうにあなたがいる
【ベスト“吉永小百合主演映画”の話をしよう】独断で選んだTOP5を発表! あなたの推しは何位!?
提供:キノフィルムズ

スパイによる究極のスパイ狩り
【前代未聞の心理戦】辛口批評サイト96%高評価、目を逸らせない超一級サスペンス
提供:パルコ

レッド・ツェッペリン ビカミング
【映画.com編集長が推したい一本】むしろ“最前列”で観るべき奇跡体験! この伝説を人生に刻め!
提供:ポニーキャニオン

酸素残量はわずか10分、生存確率0%…
【“地球で最も危険な仕事”の驚がくの実話】SNSで話題、極限状況を描いた超高評価作
提供:キノフィルムズ

なんだこのかっこいい映画は…!
「マトリックス」「アバター」など数々の傑作は、このシリーズがなければ生まれなかった――
提供:ディズニー

宝島
【超異例の「宝島」現象】こんなにも早く、心の底から“観てほしい”と感じた映画は初めてかもしれない。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント