前澤友作の宇宙旅行に同行→ドキュメンタリー映画を製作 平野陽三監督はどんな人物?
2023年12月29日 18:00
実業家・前澤友作氏のドキュメンタリー映画「僕が宇宙に行った理由」が、12月29日に公開を迎えた。
2021年12月8日、日本の民間人として初めて宇宙旅行を体験した前澤氏。同じく宇宙に向かったもうひとりの日本の民間人が、本作を手掛けた平野陽三監督だ。宇宙に向かいドキュメンタリー映画を作った監督は“世界初”と言われている。本記事では、そんな偉業を成し遂げた平野監督について深掘りしていこう。
●平野陽三監督の経歴は? 監督初作品に込めた思い、こだわりのポイントも紹介
1985年、愛媛県生まれの平野監督。大学卒業後、ZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイにアルバイトとして入社。その後、社員となり撮影部門に配属となった。やがてキャスティングディレクターとして従事し、「映像の仕事がしたい」という理由で同社を退社。CMプロダクションでのCM制作業務を経て、現在は前澤氏のマネージャーとして関連会社役員を務めている。
前澤氏との宇宙旅行では、YouTubeチャンネルの撮影を担当し、国際宇宙ステーション(ISS)滞在の様子を撮影していた。そして帰還から2カ月後、同プロジェクトに協力してくれたロシアとウクライナで問題が勃発。なすすべがない状況をテレビで目の当たりにした平野監督。その無常さから「1本の作品にしたい」という気持ちが湧き起こり“監督初作品”に着手した。
そう語っている平野監督だが、作品に込めたのは複雑な想いだけではない。特にこだわって作り上げたのは“ロケットの打ち上げシーン”。現地でロケットを見送っているかのような、またロケット船内に乗っているかのような追体験をしてほしいという想いから、音作りをこだわり抜いたようで「ロケットが打ち上がる瞬間の、地面も空気も割れるような圧倒的な轟音、空気を伝わる振動などを体感できる作品です」と話している。
●学生に向けたティーチインに登壇 宇宙空間での“貴重な体験談”を披露
公開直前、平野監督はクラーク記念国際高等学校(東京・高田馬場)の宇宙探究部やパフォーマンスコースの生徒、そして青山学院大学(東京)のマスコミ研究会に所属する学生に向けてティーチインイベントを開催している。
クラーク記念国際高等学校では、生徒から「ISSで食べた食事で1番美味しかったものは?」という質問が飛び出した。
平野監督は「我々は宇宙食を開発して持っていきました。全部で10種類以上作って、検査で半分以下にはねられてしまったんですけど、1番美味しかったのはサバ煮ですね」と回答。さらに、JAXAの宇宙食も持って行ったことを明かし「カレーライスを食べているシーンがあったと思うんですけど美味しかったですね。でもJAXAの宇宙食はほとんど前澤さんに食べられてしまったので、僕はロシアの宇宙食をメインでいただいていました(笑)」と裏話を披露していた。
「映画を見て宇宙への距離感が変わった」と目を輝かせていた生徒の姿も。「印象に残っている訓練や装置について」と聞かれた平野監督は「装置で言えばセントリフュージですね。画で見るよりは直接見たほうが大きいし、迫力あるし、回っているときの音もすごいですし、乗り込むときは棺桶に収容されるみたいに入れられるので、その恐怖感を含めてセントリフュージの衝撃が1番強かったですね」と苦笑しつつ、貴重な体験談を披露していく。
平野監督「そのほかの訓練も大変なものが多かったんですけど、総じて健康な男児で一生懸命取り組める人であれば基本的には大丈夫かなと思います。もちろん女性の宇宙飛行士の方もいらっしゃいますし、ISSにも海軍上がりの女性がいましたが、華奢だとダメで体重の制限があって、特にソユーズはランディングが激しいんですけど、体重が軽すぎるとそのときに骨が折れてしまうらしいので、しっかりした体作りをしないといけないのかなと思います」
「自分の夢が現実になっていくことに対して恐怖や不安はあったか」という問いかけもあった。
平野監督は「なるほど……深いですね」としみじみと語りつつ、「僕は宇宙にいくことが夢ではなく、映画を撮ることが夢でした。今回これを作って12月29日に全国公開されるんですけど、そのときが夢がかなう瞬間なのかなと思っていて。映画の制作は終わっていて、それを今、より多くの方々に見ていただけるか、見ていただいてどう思っていただけるか、というところが1つの着地点かなと思っています」と心境を吐露。「挑戦してみて悪いということは1つもないと思うので、恐怖より楽しみのほうが大きいです」と笑顔を見せていた。
最後には、本作の大ヒットを祈願してパフォーマンスコースの生徒によるダンスも披露された。迫力のパフォーマンスを目の当たりにした平野監督は「ありがとうございました。何が始まるかも聞かされてなかったので、最初はぶったまげましたけど素晴らしかったです。素晴らしいパフォーマンスをありがとうございました」と感謝を述べていた。
●前澤友作と“宇宙の旅”へ――当時の思いは?「僕の中ではNOという選択肢がそもそもなかった」
別日で開催した青山学院大学でのティーチインでは、「前澤氏のドキュメンタリー映画を製作する上で気をつけたこと」を聞かれることに。
平野監督「前澤さんと僕は上司と部下の関係なので、主人公の前澤さんを側近が撮ったという関係値があって、そこをどうしたら払拭できるかというのが、この映画を作る中での1つの戦いでした」
もともとはバックアップクルーだった平野監督。ISSに行くメンバーに“昇格”した際の心境を尋ねられると「“うわっ”って思いましたね」と打ち明けて笑いを誘う。「実際は『今日、お前に決まったから』というわけではなくて、そこに近づくにつれて予感めいたものはあって、周りも『お前になるんじゃない』という空気が固まりつつあったので、腹積もりはありました」(平野監督)。実際に「一緒に宇宙に行こう」と言われた際は「ポジティブでもネガティブでもなくて、僕の中ではNOという選択肢がそもそもなかった。その中で自分の中で何ができるかを考えたとき、最終的には、きっちり起きたことをドキュメンタリーとして記録することが自分の役割だと認識しました」と本音を語っていた。
続いての質問は“無重力空間で撮影する際に大変だったこと”というもの。平野監督は「最初の2、3日間くらいは宇宙酔いに悩まされた」ようだ。そして「四六時中、吐きそうな状態で撮影どうこうじゃなくて、その場にいることすらしんどい状態の中での撮影でしたし、その期間は何を撮っているのか覚えてなかったくらいです。ただ、無重力ではカメラの重さも感じないので、疲れないので撮影はしやすかったです」と振り返った。
やがて「今後、何を成し遂げたいか?」と質問された平野監督。そのアンサーとして示した“言葉”からも、「実直」という二文字が相応しい人物であることがわかるだろう。
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