ビクトル・エリセ監督新作「瞳をとじて」50年ぶりの“アナ”出演の予告編 濱口竜介、岩井俊二、細田守らがコメント

2023年12月8日 17:00


「瞳をとじて」ポスター
「瞳をとじて」ポスター

ミツバチのささやき」「エル・スール」で知られるスペインの巨匠ビクトル・エリセの31年ぶりの新作「瞳をとじて」の濱口竜介岩井俊二細田守コメント入り予告編、鈴木敏夫池澤夏樹三宅唱ら映画人、著名人からのコメントが公開された。

本作は、人生と記憶をヒントに、エリセが長年見つめ続けてきた変わりゆく時代と人々の営み、そして映画への想いが詩情豊かに綴られたヒューマンミステリー。

映画監督を引退した主人公ミゲルは、22年前、映画の撮影中に突然姿を消した俳優で親友のフリオの失踪事件の真相を辿り、旅に出る。ミゲルの人生を大きく変えてしまった出来事の記憶を遡る中で、彼が見つけ出した答えとは――。予告映像では、撮影当時5歳で「ミツバチのささやき」主演に抜擢されたアナ・トレントが50年ぶりに同じく“アナ”の名前で、フリオの一人娘を演じる姿もとらえられている。

瞳をとじて」は、24年2月9日からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

▼コメント一覧

濱口竜介 (映画監督)
瞳をとじて』は徹頭徹尾「座っている人間にどうカメラを向けたらよいのか」を問う。そのとき、彼と彼女の「顔」をどう撮ればよいのか。最もシンプルで、もしかしたらつまらない、解けようもない問いに、ふと答えが与えられるような時間が長い旅の果てに訪れる。「夜の人々」「リオ・ブラボー」、そして何よりも「ミツバチのささやき」…、自分自身が映画史そのものである人だけができるやり方で、エリセは失われた記憶を甦らせようとする。その苦闘があまりに切実で、深く胸を打たれた。

岩井俊二 (映画監督)
ミツバチのささやき」「エル・スール」を観たのが学生時代。いつかこんな映画を撮ってみたいと思った、そんなビクトル・エリセの三作目の劇映画にはスマホがあり、フィルムは過去の産物のように描かれる。
フィルムの中に失踪した俳優のに映るフィルムという迷宮。エリセ自身のフィルモグラフィの空白とも重ね合わせると、僕如きに拙速な答え合わせなどできるはずもなく。

鈴木敏夫 (スタジオジブリ)
フランコの独裁政治が終わった後、人々はどう生きたか?
それがこの監督の一貫したテーマだ。
ぼくの横でこの映画を共に見たMさんはこう感想を述べた。
「荘重な映画だ」「刺激を受けた」。

細田守 (アニメーション映画監督)
佇む少女の、人間を超越したかのような眼差しが、あの頃と同じく私の胸を射抜く。
ただ目を閉じて、瞼の裏に浮かぶ像に思いを馳せるしかない。

三宅唱 (映画監督)
再会した人をみつめ、声を聴き、隣に座る、その時間があまりにも尊い。もう決して若くはない人々の澄んだ皺や眼差しや歌声にどうしようもなく胸が高鳴り、つい、もう二度と会えない人まで瞼に浮かぶ。老いること、長い時間が経つことの残酷さや歓びを私自身はまだ十分には知らないけれど、今後、この映画とともに老いることができるのが私たちの人生なのか。こんな出会いが、こんな映画体験が人生に存在するなんて。

■岨手由貴子 (映画監督)
俳優の失踪によって未完のまま終わった映画と、俳優の行方を追っていく数十年後の現実。このふたつの物語が呼応していくさまに圧倒された。
若さ、記憶、過ぎ去った時間、フィルムや映画館など、忘れ去られていくものたちを懐古しながらも、世界に背を向けて慣れ親しんだ〈過去〉と心中するような素振りはない。
むしろ、それらを必要としていないかもしれない〈未来〉をも生きるのだという意思が、そこはかとなく漲っている。
映画にまつわる営みに飲み込まれる169分。その後味は清々しくて、ビクトル・エリセという巨匠の凄みを改めて感じた。

■小島秀夫 (ゲームクリエイター)
ビクトル・エリセ監督(83)の31年ぶりの新作!なんとアナ・トレントにも逢える!映画の親子と映画の中の映画の親子、映画の中の監督とエリセ監督自身とも重なる。なんとも不思議な重層構造なのだ。誰もが歳を取る。監督も俳優も観客も映画館も。その映画たちと生きた僕らの記憶も薄れていく。しかし、本作は映画の“永遠の力”を示す。これはエリセ監督とシネフィルたちが“映画人生”を振り返る老獪な「ニュー・シネマ・パラダイス」だ。

池澤夏樹 (作家)
何よりも映画愛! 未完に終わった映画「別れのまなざし」の監督と主演男優の20年後。失踪と記憶喪失と発見。残っていたフィルムとそれを上映する地方都市の閉じた映画館。
そしてスペイン人たちの顔の魅力! 男優の娘のアナも、元美女のロラも、介護するべレンも実にいい顔をしている。男たちも同様。海辺の村はここにこそ住みたいと思わせる。
そういうことの全部をミゲルを演じるマノロ・ソロの表情術が巧みに繋いでゆく。

■奥浜レイラ (映画・音楽パーソナリティ)
ビクトル・エリセ31年ぶりの新作というだけで胸がいっぱいになるのに、大きく膨らんだ期待を超えた感動と感慨が押し寄せてきて席を立てなくなった。意識的なキャリアの総括を思わせる脚本、配役、セリフは、監督としてだけでなく人生の総まとめとも受けとれる。どのように生きて全うするか。静謐なスクリーンに潜伏したエリセの息遣いが聞こえるような気がした。

■ISO (ライター)
寡作な名匠の復帰を待ち続けたすべての者を祝福する傑作。
再びエリセの眼を通じてアナ・トレントを拝む日が来るとは。
銀幕に映る光からエリセが映画へ向ける一途な憧憬と慈愛を受けとめ、芸術が魂と結びつく瞬間を感知した。
これほど完璧な幕切れに、人生であと何度出会うのだろうか。

■塚田誠一 (シネ・ヴィヴァン元支配人)
シネ・ヴィヴァン・六本木は、現在の六本木ヒルズの下に消えたかつての映画村であるが、その歴史の中にあって最も鮮烈なリュミエールを放った映画は、「ミツバチのささやき」だった。この作を一語に凝縮するなら「ソイ・アナ(私はアナよ)」というアナ・トレント七歳時の台詞だ。この新作長編は余りにも初々しく、ミツバチから50年の時が瞬きの間であったかのように錯覚させる。と同時に、エリセ自身を重ね合わせた登場人物たちの老いを稠密に描き出し、人の生のうつろい(とその記憶を)を表現した。フィルムが力を持っていた時代の映画を観て、啓蒙されるべし。

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