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【「首」評論】北野武監督が描く業、欲、裏切り 構想30年アイデアが結実した“新説・本能寺の変”

2023年11月25日 14:30

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「首」(公開中)
「首」(公開中)
(C)2023KADOKAWA (C)T.N GON Co.,Ltd

北野武が構想に30年を費やして描き出した“本能寺の変”。登場する武将たちの“偉人オーラ”は鳴りを潜め、代わりに強調されていくのは“狂人”としての側面だ。人間として業や欲、裏切りにフォーカスし、大義や情け、綺麗事は一切無し。でも時折腹を抱える笑いアリ。そんな緊張と緩和のドラマが「北野監督の卓越した演出ד顔圧高め”俳優陣の演技合戦」で描かれていく。

巨匠・黒澤明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画。北野監督にとっては、「アウトレイジ 最終章」以来、6年ぶりの新作となった。これまで幾度となく映像化されてきた“本能寺の変”だが、過去を遡ってみても、これほど異色の“真相”は見当たらない。誰もが目の当たりにする初めての光景となっているはず。ちなみに、描写は相当“過激”。タイトル通り“首”はポンポンと飛び、血みどろの大規模合戦も……これは地上波で流すことはできないだろう。

織田信長の跡目を狙って武将たちがさまざまな策謀を繰り広げていくのだが、そこに忍、芸人や百姓といった人物も深く関わっていく。誰しもが主人公の群像劇として進行していくのだが、各々共通しているのは“成りあがるためならば、邪魔者は容赦なく消す”という思考。立身出世のためならば、身内や愛を注ぐ者ですら切り捨てる。痛快かつ冷徹。これぞ北野流“戦国の常識”なのだ。

特筆すべきは、信長(演:加瀬亮)、秀吉(演:ビートたけし)、家康(演:小林薫)のイメージ解体&再構築だ。信長は最低で最悪、最凶暴君らしさが際立ち、勇ましさ、格好良さというポジティブなポイントは微塵もない(体現する加瀬亮が最高だ)。人たらしとされてきた秀吉は、もはや人でなしになっており、家康は名将というよりは、化けに化けまくる狸だ。いわゆる“英雄”としての姿を徹底的に排除。それぞれが欲をかく人間に堕ちているという点が面白い。

では、“本能寺の変”を引き起こした謀反の張本人・明智光秀(演:西島秀俊)は? 本作では真面目一徹&融通が利かない、「死ぬまで働けますか?」と問われているような過酷シチュエーションで勤務中……だけではなく、謀反の推進力となる“意外な要素”を付け加えているので要注目。そして、北野監督らしい“ラスト”にニヤリ。エンドロールを眺めながら「誰一人まともな奴なんていなかったな」と考えていた。

(岡田寛司)

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