新星ポール・キルシェ初来日! プロデューサーがオーディション秘話を明かす「まさに一人の俳優が出現した瞬間」
2023年11月8日 15:00
「愛のあしあと」「今宵、212号室で」のクリストフ・オノレ監督が自伝的な物語を映画化した「Winter boy」の舞台挨拶が11月7日に都内で行われ、主人公を演じたポール・キルシェが初来日し、プロデューサーのフィリップ・マルタン、音楽を担当した半野喜弘とともに登壇した。
本作は、オノレ監督の少年時代を描いた物語。冬のある夜、17歳のリュカは父親が事故で急死し、深い悲しみと喪失感を抱える。葬儀の後、兄に誘われてはじめて訪れたパリで、年上の青年でアーティストのリリオと出会う。リュカは彼に心惹かれるが、リリオには秘密があった。
主人公リュカを演じたキルシェは、主演2作目となる本作で第70回サン・セバスティアン国際映画祭の主演俳優賞を最年少で受賞。「トリコロール 赤の愛」のイレーヌ・ジャコブを母、「肉体の森」などで知られるジェローム・キルシェを父に持ち、兄弟も俳優という俳優一家に育ったキルシェは、本国フランスで“新星”と将来を期待されている。
約300人が参加したオーディションで大役を射止めたキルシェは、「この場所に立てて、そして日本の皆さんに作品を受け取っていただけて本当に最高です!」と笑顔を見せ、「オノレ監督の自伝的映画で、彼の実人生が源だと感じられる物語。でもオノレ監督が最も興味を持っていたのは、今日の若者を語ることだったはず」とコメント。「オノレ監督は自分の持ち物や読んだ本、手袋などを僕に渡してくれたりして、違う形で彼の人生を僕に継承してくれた」と述懐した。
数多くのオノレ監督作品を手掛け、今作が6作目のタッグとなるプロデューサーのマルタンは、キルシェについて「彼が来たのはオーディションが始まって3カ月目くらい。すでに200人近くの候補者を見ていた中で『もう一人候補者がいる』と言われてテストビデオで見たのが、ポールだった」と振り返る。キルシェが自宅でリラックスしながらギターの弾き語りなどをしている様子が収められた映像を見て、「オノレ監督と二人で『この人だ!』と思った。まさに一人の俳優が出現した瞬間だった」と当時の心境を語った。
音楽を担当した半野は、「山河ノスタルジア」(ジャ・ジャンクー監督)で音楽を手掛けたことがきっかけで、オノレ監督から直々に作曲のオファーを受けたという。「作品をイメージした写真や詩的な文章、ある青年がギターを弾き語りしている映像を渡されて、撮影前までにテーマ曲も作ってほしいと言われた」といい、「6曲くらい作って送った後にラッシュフィルムを見せてもらったら、主演はギターを弾き語りしていた青年で、しかもその母親役がジュリエット・ビノシュだった。すべてを後から知りました」とユーモア交じりに明かした。
さらに、「作品の全貌がわかったところで新しい曲を作るのかと思いきや、『最初に送ってもらった曲のすべてがパーフェクトだった』と言われて追加作曲もなし。20数年間映画音楽をやってきたけれど、初めて撮影後に一曲も作らずに仕事が終わりました」と裏話を披露。キルシェは「撮影中は監督も含めてみんなで半野さんが作曲してくれた音楽を聴いていました」と語り、マルタンも「こんなにスムーズに事が運んだのは初めて」と感謝すると、半野は「次は映像を観てから曲を作りたい、とオノレ監督に伝えておいてください」と伝言を託した。
キルシェは母親役を演じたビノシュについて、「共演期間は短かったけれど、偉大な女優で感銘を受けました。撮影初日から強烈な存在感と物語にリアリティを与える力を持っていて、母性的感覚で僕に接してくれた。山中ロケでは夜になると僕らに手料理を振舞ってくれました」と振り返り、最後に「悲劇を乗り越える若いエネルギーと家族のエネルギーを本作から感じてほしい」と観客にアピールした。
「Winter boy」は、12月8日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
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