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【北野武監督作「首」“唯一無二”の6人が語り尽くすリレーインタビュー】第2回:難波茂助役の中村獅童

2023年11月2日 12:00

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取材に応じた中村獅童
取材に応じた中村獅童

北野武監督の6年ぶりとなる最新作「」が、いよいよ11月23日から封切られる。構想に30年間を費やし、「本能寺の変」を題材にした壮大なエンタテインメントを完成させた。映画.comでは、カンヌ国際映画祭でも熱狂的に受け入れられた今作のリレーインタビューを、6週連続で展開。第2回は、難波茂助に扮した中村獅童に話を聞いた。(取材・文/鈴木元、写真/間庭裕基、編集/映画.com副編集長・大塚史貴)


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――ファンとして北野武監督作品に感じていた魅力は。

淡々と進んでいく中でのドラマや、役者としては役柄の持っている本質であったり、表現の仕方も、説明ゼリフがまずないですよね。そういったリアリズムの世界に自分も入ってみたいと思っていました。

――テレビ番組などで共演した際に、その思いは伝えなかったのですか。

「出たいって自分から立候補した方がいいよ」と大森南朋くんにも言われていたんですけれど、いざバラエティ番組で楽屋にご挨拶に行ってもなかなか切り出せない。この間、映画拝見しましたとまでは言えるんですけれど、その先がどうしても出てこない。

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――では、念願のオファーだったわけですね。

ちょうど緊急事態宣言が発令されている頃で、家で今後の仕事のことについてここ数年は歌舞伎が中心だったのでそろそろ映画もやりたいねという話をしていました。たけしさんの映画は念願だったので、オーディションがあったらチャレンジしたいという話をしていた翌日に電話がかかってきたんです。僕も家族も皆ビックリしましたが、ぜひやらせていただきますと。その時は役柄も何も決まっていなかったんですけれど、北野作品であればどんな役でもということで。

――原作小説は読んでいたのですか。

オファーも何もいただいていない段階で、映画化するならという気持ちで読みました。
僕が武将側というのは皆さん想像がつくと思うのですが、役者としてのチャレンジで言うなら曽呂利新左衛門や茂助でまた違った中村獅童の一面を出すことができたらなあとは思っていました。役者というのは常に今までに出会ったことのない自分に出会いたいですし、いろいろな側面、役柄によって変化のできる表現者でいたいと思っているので。

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――茂助役はどのタイミングで決まったのですか。

監督に一度ご挨拶しましょうということになり、会議をしているスタジオにうかがいました。その空き時間に廊下まで出てきてくださって、よろしくお願いしますとご挨拶したら、「茂助だな。よろしく頼むよ」って。監督がどの時点で僕を茂助に決めたかは分からないですけれど、はっきりと監督の口から聞いたのはそれが初めてでした。

――役が決まってから脚本を読んで抱いた茂助像はどのようなものですか。

僕なりの解釈ですけれど、秀吉の分身じゃないかなと。農民から武将に憧れて天下を獲りたいという思いは、秀吉と通ずるところがあるわけです。ですので、なにがなんでも成り上がってやるんだという一本道じゃないですかね。

――衣装を着けると気持ちが高まるものですか。

やっぱり貧相な気持ちになりますよね。裸に近い衣装だったので、随分と汚れもかけて、歯も汚して、メイクさんもけっこう凝ってくださったので過去一番汚い役なんじゃないかと思います。

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――合戦のシーンは大きな見せ場になりましたね。

雨の中、田んぼみたいな泥沼での立ち回りだったので、本気で走ったら転ぶだろうなと思いつつ転んでもいいやという気持ちでやっていました。本当に転んで泥まみれになってもまだかかっていくところは、監督がモニターを見ながら受けていたそうです。スタッフの方が終わった後にこっそり教えてくださるんですよ。「監督受けてたよ」って。そうすると、ああ良かったなあと思いますよね。

――クランクアップした時の気持ちはいかがでしたか。

泣きましたよね。これでオールアップですって助監督の方がおっしゃって挨拶をするんですけど、念願の北野監督とご一緒させていただけてうれしかったですというところで、ちょっと感極まって何て言ったか覚えていないです。撮影が終わって僕が支度場に戻ろうとした時に、監督に「今日良かったよ。編集楽しみにしておいてね」とおっしゃっていただけて、その言葉もめちゃくちゃうれしかったですね。

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――役者としてのビートたけしの凄さを感じたことは。

何かをやろうとしないところですね。役者って油断をするとやろうとしちゃうんですよ。特に若い頃はどうしてもやろうとしちゃうし、今でも油断すると、そういうところが自分にもあるのかもしれないけれど、監督は必要以上のことをやろうとしないので見ていてとても勉強になりました。

――「」を通して感じた北野武監督の凄さはなんでしょう。

子どもの頃から芸人・ビートたけしさんに笑わせていただき、映画をお撮りになって感動して、それを見続けながら自分もいつか役者としてたけしさんとご一緒させていただきたいという思いの中でやってきました。その潔い生きざまといいますか、普段お話ししていても歌舞伎や能のことや、音楽でいえばパンクのことなど何でもよくご存じなんですね。だから、緊張もするんですけれど本当に楽しいんですよ。これまでの人生経験一つ一つがこの作品に反映されているんじゃないかと改めて感じました。

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――カンヌ映画祭への参加を北野監督に直談判したと聞きましたが。

そうそうそう。僕と大森くんと浅野忠信くんは、撮影している時から海外の映画祭に行くんだったら自腹でも行った方がいいという話はしていました。監督のお宅でお食事会があった時に、自腹で行くのでお供させてくださいと言ったら、「いいよ、行こう行こう」とおっしゃってくださいました。そうしたら次の日に配給から「カンヌに行くことが決定しました」という連絡がきて。恐らく監督が言ってくださったんでしょうね。

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――実際に体験したカンヌはいかがでしたか。

たけしさんたちがレッドカーペットを歩くのを遠目から声援を送る感じなのかなと思っていたら、まさか一緒に歩かせていただけてうれしかったですね。でも、ああいうのって帰りの飛行機に乗って日本に帰る時に夢じゃないよな、レッドカーペット歩いたんだな、と実感するんです。自分は日本人、歌舞伎役者として紋付き袴で参加したいというのが夢でしたので、それがかなったといううれしさは当然ありましたけれど、本当の意味でのうれしさというのは帰る頃になってからやっと実感が湧いてくるものなんだな、と。

――最後に北野監督へのメッセージをお願いします。

人間・北野武という方に心底、心を奪われました。またご一緒させていただけたらうれしいです。


」リレーインタビュー第3回は、11月9日に配信予定。

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