“複雑な時代”を物語る「アートカレッジ 1994」に必要だったアニメーションという言語 プロデューサーと出演俳優が語る
2023年10月27日 14:00
第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月26日、「アートカレッジ 1994」が上映され、会場の東京・TOHOシネマズシャンテでプロデューサーのヤン・チェンと俳優のワン・ホンウェイが登壇。プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏とトークを行った。
同作は、リウ・ジエンが監督を務めた中国の長編アニメ。中国社会が大きく変化する1990年代初頭を舞台に、美術大学に通う学生たちの姿を描く。
ヤン氏は、リウ監督が学校の仕事で映画祭に来られなかったことを詫びながら、「これまで東京国際映画祭には実写の2作品で参加しました。今回アニメで参加することができて新鮮です。日本の観客は映画を静かに熱心に見てくれているという印象があり、とてもうれしく思います」と挨拶。同作の後半に登場するフー・ティヤアンミン役として声の出演をしたワン・ホンウェイも、「初めて声優をやりました。自分の顔が映らなくてすみました」と冗談めかして自己紹介した。
リウ監督と旧知の仲であるヤン氏は、犯罪をテーマにしたリウ監督の前作「ハブ ア ナイス デイ」から、今作では1990年代の美術大学を舞台にしたことについて、「リウ監督には、過去への回帰があったように思います。実際に学校で若い人を教えているリウ監督は、当時の“複雑だった時代”のことを思いだし、新しい芸術のことをスクリーンで表現したかったのかもしれません。私自身、映画を見て当時のことを思い出しました」と説明した。
本作では、ワンをはじめとする映画俳優、ロックスター、作家、司会者、若い映画監督といった、専業の声優でない人たちが声を担当している。これはヤン氏からの提案だったという。
「本作は個性的なキャラクターが多く、芸術、恋愛、自由など、さまざまなものに対してこだわったり迷ったりしています。そうしたキャラクターに声をあてるのは、違うジャンルの芸術家がいいのではないかと思いました。声の質感や芝居をもとにリウ監督がキャスティングし、皆さん思った以上によくやってくれて、うれしい驚きがありました。全体的に非常に満足しています」
声優陣のなかには、ワンが実写映画で俳優と監督としてタッグを組んでいるジャ・ジャンクー監督(「長江哀歌」「罪の手ざわり」)もいる。藤津氏が、ジャ・ジャンクー監督の声優としての演技についてワンに訊ねると、「僕よりも上手だと思います」と笑いながら答えていた。
藤津氏から実写映画で描いてもよさそうなリアリスティックな題材をアニメーションで描く意義について聞かれると、ヤン氏は「いい質問で、観客の皆さんにお話したいと思っていた」と話しながら、「アニメーションは“ひとつの言語”だと思っています」と切り出す。
「本作はかわいかったり、ヒーローが登場する一般的なアニメーションとは違うストーリー展開がなされています。そうした物語をどの“言語”で表現すべきか、その必要性はどこにあるのか、作品をつくる前に必ず考えられなければいけません。本作についてはアニメーションでやる必要性があったことが、独特な絵のタッチや光の当て具合などから分かっていただけると思います。実写では、このような効果は得られなかったはずです。
さらに言うと、このアニメーションは必ず手描きのアニメーションでなければなりませんでした。3DCGなどでやっていたら、思うような効果は出なかったと思います。ただ、もしアニメーションの表現が苦手だったり、慣れない観客の方には、そのことに縛られることはないとも思っています」
声優として出演したワンも、「俳優として、本作はいい方法をとったと感じていますし、新しいものがつくれたと思っています。若い人たちの生活を描くさい、実写で撮っていたら、本作で描かれたようなユーモアやペーソスの効果はでなかったと思います」と話していた。
「アートカレッジ 1994」は、10月31日にヒューマントラストシネマ有楽町で再上映される(トークはなし)。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
舘ひろし、芸能生活50年で初の冠番組がスタート! NEW
【“新・放送局”ついに開局!!】ここでしか観られない“貴重な作品”が無料放送!(提供:BS10 スターチャンネル)
室町無頼
【激推しの良作】「SHOGUN 将軍」などに続く“令和の時代劇ブーム”の“集大成”がついに来た!
提供:東映
サンセット・サンライズ
【新年初“泣き笑い”は、圧倒的にこの映画】宮藤官九郎ワールド全力全開! 面白さハンパねえ!
提供:ワーナー・ブラザース映画
意外な傑作、ゾクゾク!
年に数100本映画を鑑賞する人が、半信半疑で“タテ”で映画を観てみた結果…
提供:TikTok Japan
ライオンキング ムファサ
【脳がバグる映像美】衝撃体験にド肝を抜かれた…開始20分で“涙腺決壊”の超良作だった!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。