【「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト) 」評論】ゴダールという人と映画にもっともっと近づきたいと胸が騒ぐ “労作”の優しさが身に染みる
2023年9月24日 09:00

締切りまであと2日もあるのに雨が降るんじゃないのと、あきれ顔の家人をしり目にどうしても今日、この原稿を書こうと思った。
今日2023年9月13日はジャン=リュック・ゴダールが自ら死を選んで旅立ってからちょうど一年めの命日にあたるのだ。逝ってなお分厚い伝説の壁に囲まれた“神”ゴダールの素顔に迫るドキュメンタリーと向き合うのにいかにもふさわしい日と思えるからなのだ。
プレス・シートに引かれた脚本・監督・編集シリル・ルティの言葉は、映画を信じ、映画を生きたアーティストの神髄に迫ろうとする一作のスリルを改めて思わせる。
「この映画は、彼の映画についてというよりも、彼自身についてのものですが、それがゴダールのこととなると、映画と人生は融合し、最後には映画についても語ることになるのです」
振り返るとヌーヴェルヴァーグの誕生にも、ジガ・ヴェルトフ集団でのラジカルな実験にも、いつだって間に合わず、もどかしさをかみしめ続けた世代にとってゴダールは神と畏れつつどこかでけむたいような存在で、だからそんな先入観、余計な身構えに邪魔されてその生の、映画の真実、その詩、その真の美に近づき切れずにきたような引け目をついつい感じてしまう。要は不幸な観客なのだが、人間ゴダールを知る人々の証言と映画そのものの断片とそれを創ったひとりの生の様々な局面とを率直に切り取りゴダールをめぐる“物語”をみつめ切ろうとするルティの労作は、人=映画の真相を掬う慎ましやかな姿勢で、ひねくれものの身構えを解きほぐし穏やかにそこに身を浸し続けたいような気持にしてくれる。
「キャメラを見るなと普通の監督はいうけれど彼は見るようにといった」と「恋人のいる時間」の女優マーシャ・メリルがさらりと明かし、イヤホンを装着してゴダールが口にする台詞を聞こえるままに反復する、そんな現場のことの次第を「彼女について私が知っている二、三の事柄」のマリナ・ヴラディが告白してみせる。無論、おなじみのミューズたちとの挿話もうれしいけれど、ナタリー・バイやジュリー・デルピーがものするゴダール像に覚える新鮮な驚きや親しみはまた格別だ。「いつも一人でした」と述懐する実父や妹の言葉に浮かぶ家族との距離、裏腹にヌーヴェルヴァーグ、映画の家族と共にある時のやわらかな表情の微笑ましさ。変わる時代の中でその時々に自分の今にこそ正直な映画を追い続ける孤独な姿に目を凝らせば集大成作「ゴダールの映画史」の重みがいっそう鮮やかに迫りくる。ゴダールという人と映画にもっともっと近づきたいと胸が騒ぐ。そう思わせるルティの映画の優しさが身に染みる。
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