シベリアからカザフスタンへ 民間人抑留者描く2作「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」公開
2023年9月22日 10:00
第2次大戦後、旧ソ連(現ロシア)から日本に戻れなかった日本人を描いた長編映画「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」と「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」が12月22日から公開される。
第2次大戦後、戦争捕虜としてシベリア(旧ソ連全土)・モンゴルに57万5千人が抑留され、5万5千人以上の人が亡くなった。だが、樺太等の地域に残った民間人で、戦争捕虜としてではなく謂れのない罪でソ連当局に逮捕され、強制労働を強いられる政治犯収容所や広大なソ連の僻地で行方不明になった人は2千人以上存在すると言われる。その中でカザフスタンには(日本政府が把握していただけで)約20名が送られ、ソ連崩壊の時まで生き残ったのはわずか4人だった。その4人のうち、阿彦哲郎(あひこてつろう)と三浦正雄(みうらまさお)の物語を映画化したのが「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」と「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」である。
「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」は旧ソ連諸国であったカザフスタンがスターリン時代の黒歴史である抑留者の物語を「日本人の側に立って」製作し、「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」は中央アジアを代表する才能たちによる作品だ。残念ながら、阿彦哲郎は2020年6月にカザフで、三浦正雄は2022年1月に北海道で亡くなっているが、彼らの存在とこの映画2作により、ロシアのウクライナ侵攻以降、日本人にとって喫緊の事実を知ることができるだろう。
「阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人」は、戦後、樺太に取り残され、謂れのない罪によって逮捕され、“史上最悪”と悪名高いスターリンの政治犯強制収容所にたった1人の日本人として放り込まれた阿彦哲郎が、「日本に帰って家族に会いたい」という思いだけを胸に、生き抜いて収容所から釈放されるまでを描く。「阿彦哲郎は日本とカザフ友好の礎」と捉えるカザフスタン政府が、制作費300万ドル、製作期間3年、3000人のスタッフをつぎ込んで完成させた歴史大作。主演はキックボクサーでKNOCKOUT REDフェザー級王者の小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)。
「ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代」は、終戦直後、疎開していた北海道から家族を探しに行った先の樺太で逮捕され、わずか14歳で日本から8,000kmも離れたカザフスタンに流刑となり、53年もの間をカザフで過ごした三浦正雄。世界でも珍しい淡水と塩水の性質を持つバルハシ湖及びイリ河を舞台に、後年、現地の自然保護官としても活躍した三浦の子供時代を描く。三浦少年を、映画初主演となる佐野史将が好演した。
2作共に、12月22日から、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
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