山下智久、ワインから学んだ人生観 海外ドラマ初主演作で複雑かつ芳醇な物語を体現
2023年9月22日 13:00
世界中で愛され、ワインブームに火を付けた亜樹直による伝説的人気コミックを、山下智久主演で日仏米共同製作の国際連続ドラマとして実写化したHuluオリジナル「神の雫/Drops of God」が、Huluで独占配信中だ。
原作で物語の中心だった男性キャラクターが、フランス人女性・カミーユ(フルール・ジェフリエ)に変更され、主人公のワイン評論家、遠峰一青を演じたのが、歌手として、そして映画やドラマで国際派俳優としても活躍の場を広げる山下智久だ。
今作出演を機にワインに開眼し、役作りと並行してワインの魅力を掘り下げて学んだという山下。複雑な環境で生まれ育ち、家族とワインの歴史をひも解くように、自身の世界を広げていく主人公を、繊細かつしなやかな演技で体現した。ワインとの向き合い方、役作り、長期に及んだ海外の現場など、山下に話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
<あらすじ>
世界的ワインの権威アレクサンドル・レジェが死去。フランス・パリで暮らす彼の娘カミーユと、彼に師事していた若きワイン評論家の遠峰一青は弁護士に呼び出され、彼の遺言を聞く。それは、ワインに関する3つのテストの勝者どちらかに、総額160億円にも及ぶ世界最大のワインコレクションを含む莫大な遺産を譲るという驚くべきものだった……。
とても壮大で、ワインを通して人間を学び、そして自分たちも自然の一部だと再認識させてくれるような、学びのある作品に仕上がったと思います。同じ品種のブドウでも、育てる農家さんによって味が変わりますし、その年の天候によっても全く違うものに仕上がります。そういったことから、ワインも人間も自然に生かされていることに気づいたんです。僕自身もこの役、この作品を通して成長させてもらえたような気がします。
彼は本当に複雑な人間だと思いました。お金持ちの家に生まれて、すべてを持っているようで、でも愛だけが足りなくて……。彼にとっては、愛が一番大切な要素だと思いました。でも、硬い味わいのワインも空気に触れて、時間を置くと味が開いてくるようなワインもあったりする。彼は、どちらかというとそっちのタイプの人間だったのかもしれないな、とワインと紐づけて、役のことを考えたりもしました。
僕自身もどちらかというと社交的なタイプじゃないですし、心を閉ざしてしまっていた時期もあると思います。人のことを嫌いになったわけじゃなかったけれど、心を閉ざすということは、防衛本能なのかもしれないです。そういう意味では、なんとなく彼の気持ちを理解できる部分もありました。
ワインはいい湿度と環境で保存してあげることによって味も変わってきますし、同じように人が変われることも、ある意味でこのドラマのテーマだと思いました。演じながら、人種の壁も含めて、隔てている何かを取っていく作業が大事なんだな、と感じましたね。
たくさんワインを飲みましたし、お金を使って勉強もしました。そういった経験を経て、ワインの哲学的なこと、生産者さんはどんな気持ちで作っているのか、隣接した畑でも日照時間などで全然違う出来上がりになることがあることなど、また、細かいワインの性質を勉強すればするほど、ワインは人間のようだと思いました。ワイン一本一本性格が違うし、ある種の出会いだなとも思って。ワインを勉強したことによってよりワインのことを好きになりましたし、ワインはアート性が高いものだとわかりました。
そして、仲間といいワインを一緒に飲むことが、大切な時間であると思います。僕の知り合いのワイン愛好家の方が、もしワインを漢字にすると「和(を)飲(む)」だと仰っていて、いい仲間といい時間を過ごすためという意味になって、素敵だなと思いました。
深いテーマの物語で、愛というものに対して、その見方にはいろんな角度があって正解がないからこそ、あなたはどう思いますか? と投げかけているような気がしました。家族の愛も、果たして血のつながりがすべてなのか? というところも含めて、愛にもさまざまな要素があるいうことを感じながら演じました。
人間関係についても、やはり誰しも一人で生きていくことには限界がありますし、僕自身がお仕事をさせていただけるのも、いろんな人たちの支えのおかげだと思っています。それは切り離せないものだなって。例えば、応援してくださるファンの方たちがいるから僕がいて、僕がいるからみなさんが現場に来てくれる……だから、自分とかかわってくれる人も自分のようなものかもしれないなって。僕が君で君が僕。そんな感覚が、昔に比べると明確になってきた気がします。
ものづくりや、作品に対する想いは万国共通で、芸術に対して真摯に向き合うという気持ちは日本の人であろうと外国の人も一緒だなとわかりました。日本の環境と異なっていたのは労働としての撮影システムです。1日に働ける時間が決まっていたり、土日は休みだったりで。それは、僕もスケジュールのリズムを作ることができたので助かりました。
作品が良くなるために、スタッフさんも含めて整えられる時間があると集中力も上がるし、それによっていろんなアイディアも出てきやすくなる。忙しい時と緩める時の緊張と緩和を大事にして、緩める瞬間を作っていく作業は、僕は今後もやっていきたいです。
今回長期間ダイエットをしていて、それ以外の時は1週間に1回はワインを飲む時間を作っていました。ご飯食べなかったので、とにかくワインの糖分が沁みましたね(笑)。その時は、ワインを好きな気持ちが爆発していました。過酷なダイエット期間でしたけど、一青もこれぐらいワインが好きなんだろうなってわかって、気持ち的には良かったです。
過去の仕事の影響も大きいですが、僕にはアメリカ人のはとこがいて、日本と外国のカルチャーの違いって何なんだろうな、ということを子どもの頃からよく考えていました。彼の国ではよくて俺の国ではダメなこと、そしてその逆もあったりするのが不思議だなあって、好奇心がかきたられて。
このドラマも、本当に楽しそうだなと思って参加しましたし、海外での経験は外側のカルチャーの違いを取り払って本質を見つけようと、文化の違う方々と気持ちを一つにできることが魅力的だと思っています。今回、先に配信された海外で作品の評価が高くて、そういう意味でも、ちゃんと本質に近づけたんじゃないかなと思います。
僕だけじゃなくて、日本のキャストの皆さんと一緒に会議をして、日本語のセリフはめちゃくちゃ直しましたね。フランス語で書かれた作品が英語になって、その英語が日本語に訳されているので、日本語の表現としてちょっと不自然なところは徹底的に直しました。割とこちらの意見を柔軟に取り入れてくださる環境で、監督も尊重してくれました。そういった作業も含めてとても思い入れの強い作品になりました。
パリから離れた地方都市に1カ月ぐらい滞在して、夜はみんなで一緒にご飯食べたりすることが多かったです。フランスの方たちは、みんなでワインと食事を囲んでおしゃべりするのが大好きですよね。本当にドラマの最終話にもあるような雰囲気でした。
スタイリスト:櫻井 賢之[casico]
フォトギャラリー
執筆者紹介
松村果奈 (まつむらかな)
映画.com編集部員。2011年入社。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。