杉田協士監督の「彼方のうた」、ベネチア国際映画祭ベニス・デイズでワールドプレミア
2023年9月11日 20:00
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ベネチア国際映画祭のパラレル部門であるベニス・デイズ(Giornate degli Autori)で、杉田協士監督の「彼方のうた」がワールドプレミアを迎えた。2004年に創設された本部門は、日本であまり馴染みがないかもしれないが、インディペンデントな映画制作による独創的な作品をサポートするセクションだ。
現地には杉田監督とともに小川あん、中村優子、荒木知佳の女優陣が揃い、観客との質疑応答をおこなった。
上映後、日本メディアの取材に応じた一同は、「映画を始めた頃から、自分の映画がベネチア国際映画祭のような場で上映されるとは思ってもいなかったので、本当にありがたいことだと思っています。映画祭自体、お客さんが本当に映画が好きで観に来ているのがわかる。前作でいろいろな映画祭を回ったんですけれど、いままででだんとつお客さんが入っているし、平気で出て行ったりもしますけれど(笑)、本当に真剣に観て下さっているのがわかりました。いままで作ってきたこの映画のことが、観客のみなさんと観ることで今日わかったという気持ちになり、すごくいい上映だったと思います」(杉田)
「映画が世界共通言語だということが実感できたことがとても嬉しいです。ひとりの観客として今回はこの作品を観ることができて、ここでこの映画を観ることができてよかったという気持ちと、この映画にありがとうという気持ちで一杯です」(小川)、「観客のみなさんと一緒に観ることができるというのはとても特別な、幸せな感覚で、この役を演じていたときの孤独な感覚と幸せがないまぜになった、言葉にできないような気持ちです。きっと10年後、20年後にも、今日の上映のこと、拍手して頂いたときのことを思い出すだろうと思います」(中村)、「上映後のQ&Aも本当に熱心に聞いて下さっている感じがして、お客さんがとても嬉しそうにこちらを観てくれているのが印象的でした。大きな画面で観ることによって、大きい音がもっと大きく聞こえたり、細かい表情がよく見えて、こういうことだったのかと気づく瞬間があり面白かったです。心に突き刺さりました」(荒木)と、それぞれ心に残った思いを述べた。
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マルセイユ国際映画祭でグランプリ、俳優賞、観客賞の3冠を受賞した「春原さんのうた」から2年ぶりの本作は、杉田監督のオリジナル・ストーリー。書店員の春が、かつて街で声をかけたことのある男と女に再会し、交友が始まることで人間関係が動き出す。説明を排したミニマルな作りのなかで、孤独や、そのなかで生まれる不思議な連帯感などが、自然の音や沈黙に支えられ語られる。観る側に集中を強いると同時に、一旦溶け込むとこの不思議な世界観のなかに身を置くのが心地よくなるような、杉田ワールドが展開する。
杉田監督は、「じつはわたしもこの映画のことをよくわかっていないんです(笑)。言葉にできない部分がどうしてもあって。でもお客さんと一緒に映画を観たらとても心に響いてきました。訳もなく心に響く、というのが自分の映画の原点だと思っています。かつて侯孝賢の『恋々風塵』を観て、始まって5分ぐらいのなんでもないシーンで涙が出てきて、いま自分は泣いているけれど、その理由はわからなくてもいいと思えた。だから自分が自分の映画をわからなくてもいいと思っているんです。感覚としては、自分が最前列の観客になったような気持ちです」
ベネチアでの反応は、そんな杉田映画の魔術の手応えを実証したようだ。(佐藤久理子)
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