第80回ベネチア映画祭、濱口竜介「悪は存在しない」にスタンディングオベーション 環境問題に対する質問に返答
2023年9月5日 16:00
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第80回ベネチア国際映画祭のコンペティションに選出された濱口竜介監督の「悪は存在しない」が、現地時間の9月4日に披露され、大きなスタンディングオベーションを浴びた。
「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口の新作とあって、海外のマスコミからも注目を集めていた本作は、「ドライブ・マイ・カー」の音楽を担当した石橋英子が、自身のライブパフォーマンスで流す映像として濱口に制作を頼んだのがきっかけ。たんなる映像作品よりも物語にしたいという石橋の希望もあり、結果的に長編フィクションが出来上がった。
東京からそれほど離れていない、ある山の村を舞台に、東京の芸能事務所によって開発されるリゾート施設のために、調停役として現地を訪れる事務所のスタッフと、開発に難色を示す地元の人々との折衝を、奥深い自然の風景のなかで描く。
現地入りした濱口監督と石橋、俳優陣の大美賀均、西川玲(子役)、小坂竜士、渋谷采郁は、公式上映のホットな反応にそれぞれ感銘をあらわにし、「イタリアという土地柄なのか、すごく情熱的に迎えて頂いたという気がして、この企画を始めたときには思いも寄らなかった温かい歓迎を受けて感動しています」(濱口)、「企画が始まったときは、まさかひとつの作品になってみんなでベネチアに来られるとは思いも寄らなかったので、本当に嬉しいし、感慨深いです」(石橋)、「反応がとても嬉しかったですし、死ぬときに思い出しそう(笑)」(大美賀)、「あまり緊張をしなかったので、嬉しかった。楽しかったです」(西川)、「言葉にできない経験をしたなというのがいまの気持ちです」(小坂)、「観客と一緒にスクリーンを眺めて、映っている人や音楽が素敵で、そのなかに自分もいられることが改めて嬉しかった。拍手で胸が一杯になりました」(渋谷)と、その思いを口にした。
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公式上映に先立って行われた記者会見では、「とても優しい映画だと感じたが、監督自身の自然とのつながりについて教えて欲しい」「豊かな自然と人間という図式についてコメントして欲しい」「環境問題について話し合いのセリフが出てくるが、監督自身は言葉の効果についてどう感じているのか。また環境問題に対する日本のポジションについてはどうか」などといった、熱心な質問が上がった。
濱口は、「自分にとって本作は環境問題に焦点が当たっているのではない、というのが正直なところです。すべては視覚的に考えるところから始まり、石橋さんが作る音楽にどう対応できるのかと考えたときに、自然というものが一番の題材であると思いました。それは石橋さんの音楽の持っているある種の繊細さや、それ自体では答えを出さない感じといったものが、自然のうごめきのなかに表現されるだろうと考えたからです。
ただ自然だけでは面白くないので、そこに人間が登場する。また現代のなかで自然のなかに人間を置くと、環境問題が生じるというのが正直な思いです。人間が自然のなかに入っていくと、必ず自然を破壊する存在として描く必要がある、というのが今回思ったことです。ただそれが大きなことというより、我々が日常のなかでやっている営みなのだと。ゆえにそれを全面的に否定するわけにはいかず、そのときに対話というのが基本的に必要になってくるのだろうと思います。ただこの社会が、対話を重要視しているかというと、そうではないだろう、と感じ、それがそのままこの映画のなかでも描かれることになりました」と、率直な胸の内を明かした。(佐藤久理子)
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