「THE FIRST SLAM DUNK」フランスで高評価 批評家が興奮「信じられないほどの実験性に悶絶するほど」【パリ発コラム】
2023年8月30日 20:00
フランスでは7月26日から、井上雄彦監督の劇場アニメーション、「THE FIRST SLAM DUNK」(2022)が公開された。昨年末、「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」とほぼ同時期に日本で公開され、興行成績でアバターを凌いだ、というのが、こちらでの宣伝文句になっている。
封切りほぼ1カ月を経た現在の動員は5万人を超えたところで、数字としてみると決して大きくはないが、評判はきわめて良い。映画サイトALLOCINEの星取りでは、観客の評価は5点満点の4.3。プレスは3.9で、ちなみに一足先に公開になったピクサーの「マイ・エレメント」は3.5、「オッペンハイマー」は3.8であることを鑑みれば、相当評価が高いことが実感できるはずだ。
辛口で知られるリベラシオン紙は、「内省的かつ、燦然とほとばしるアニメーション」と評し、ル・モンド紙も「2Dの世界に、3DCGのアニメーション作画の統合をもたらした」と称賛。他にも「本作はスポーツに関する偉大な作品であると同時に、あたかもチームが監督の『演出』により強固になるかのごとく、肉体の強度とその表現についての考察でもある。この意味においてスポーツと映画は共通のドラマツルギーを持つ。永遠のフォルムが指先により生み出され、信じられないほどの実験性が追求されている。その様はほとんど悶絶するほどだ」(レザンロックプティブル)など、批評家の興奮がそのまま伝わってくるような評価が目立つ。
フランスでも井上の原作漫画は以前から翻訳されており、原作のファンは少なからずいる。それだけに、むしろ10代よりも、20代以上のファンに支持されているという印象だ。
わたしも劇場に週末の昼間に観に行ったのだが、予想していた子供連れの家族客よりも、大人の男性客のグループが多かった。4人で観に来ていた男性グループに声をかけたところ、みんな30歳から32歳で、「子供たちよりも自分たちぐらいの原作ファンが多いのでは?」と言う。映画の感想を求めると、「とても興奮した。期待以上だった」「3DCGのアニメーション作画のクオリティが高く、漫画とは異なる、映像ならではの醍醐味があった」「スポーツの世界の興奮と、家族の感情的なドラマが融合しているところが日本映画らしいと思った」と答えてくれた。
ただし公開戦略的に成功したかといえば、正直そうでもなかったという印象がある。原作ファン向けに、SNSなどを主体に情報は出回っていたものの、街頭ポスター貼りやプレミア先行上映といった、典型的な宣伝は目立っていなかった。さらにおそらくは、期待したほどにファミリーに訴求しなかった結果なのだろう、夏休みの封切りのわりには公開からそれほど時間がたたないうちに、夜の上映がメインに切り替わった映画館が多く、昼間観にいけるところが少なくなってしまった。夏休みで子供向けのアニメやファミリー映画の公開が多いこともあり、時間枠も限られてしまったのかもしれない。
フランスの場合、夏といえばまずバカンスで、一般的に映画館の客足はぐっと減る。大人層を狙う作品は、早くても、バカンス客が戻ってくる8月末あたりからの公開時期にするのがふつうだ。アニメ作品ということで、子供と大人両方を狙って夏に、という設定が、逆効果になったのかもしれない。
もっとも、公開4週目を迎えて映画館数と時間枠が増やされたので、これからロングランをするところもあるのではないか。
今日、フランスにおいて日本のアニメーションは、ピクサーやディズニーと同じぐらい人気が定着し、新しい才能にも敏感に反応する。本作の場合はもちろん、原作漫画という土壌があり、作家本人が監督を手がけたという話題性もあったと思うが、「新人監督」がこれほどに評価が高いのは稀だ。口コミでさらに、原作を知らないアニメ・ファンにも届くことを期待したい。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の伝説的一作
【超重要作】あれもこれも出てくる! 大歓喜、大興奮、大満足、感動すら覚える極上体験!
提供:ワーナー・ブラザース映画
時代は変わった。映画は“タテ”で観る時代。 NEW
年に数100本映画を鑑賞する人が、半信半疑で“タテ”で映画を観てみた結果…【意外な傑作、続々】
提供:TikTok Japan
年末年始は“地球滅亡” NEW
【完全無料で大満足の映画体験】ここは、映画を愛する者たちの“安住の地”――
提供:BS12
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
オススメ“新傑作”
【物語が超・面白い】大犯罪者が田舎へ左遷→一般人と犯罪、暴力、やりたい放題…ヤバい爽快!!
提供:Paramount+
外道の歌
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…犯人への壮絶な復しゅう【安心・安全に飽きたらここに来い】
提供:DMM TV
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
映画を500円で観る“裏ワザ”
【知らないと損】「2000円は高い」というあなたに…“エグい安くなる神割り引き”、教えます
提供:KDDI
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。