【「ソウルに帰る」評論】世界が注視する俊才監督が新鮮なアプローチで描いた、アイデンテイティ難民
2023年8月13日 20:00

2022年カンヌ国際映画祭、ある視点部門での上映を皮切りに、各国で高い評価を受けた本作は、フランス生まれのカンボジア人、ダビ・シュー監督の長編フィクション2作目にあたる。
フランスでは海外との養子縁組がポピュラーだが、韓国では1950年代の朝鮮戦争の余波で、子どもを養子に出す家庭が急増した。本作はそんな背景を踏まえた現代の物語だ。
生後数カ月で父親に養子に出され、フランスの家庭にもらわれたフレディは、フランス人同様に育つ。日本でバカンスを送るはずが運命のいたずらで韓国になり、さらに韓国で親切な人々に出会ったことで、実の両親を探す旅に出る。
一方、母親からは何の音沙汰もないことにひどく傷つき、何年経っても誕生日が来るたびに、「実母はどこかでわたしのことを思っているだろうか」と考える。そんな揺れ動く自分をどうにもできず、自虐的に生きるフレディが痛い。
オ・グァンロク(パク・チャヌク映画の常連)、キム・ソニョン(「愛の不時着」「ベイビー・ブローカー」)らが脇を固めるが、ヒロインを演じるのはビジュアル・アーティストで演技経験はなかったというのが驚きのパク・ジミン。彼女も韓国で生まれ、9歳でフランスに家族と渡った移民だという。勝ち気で自立し、奔放な一方で、誰のことも真に愛せない孤独なフレディを、体当たりで表現し、映画を牽引する。
出口のないフレディの人生は、どこに向かっていくのか。本作は現代のグローバリゼーションのなかで見過ごされがちな、「アイデンテイティ難民」のテーマを新鮮なアプローチで切り取っている。
(C)AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCRIONS/2022
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

35年目のラブレター
【感動実話に“とんでもない絶賛”の嵐】噂を聞きつけ実際に観てきたら…忖度なし正直レビュー!
提供:東映

すごすぎて言葉にならない映画
【人類史上最悪の“ブラック仕事”爆誕】よく考えずに転職したら…死んで生き返る“無限労働”だった…
提供:ワーナー・ブラザース映画

日本の映画料金は高すぎる!!!!!
【そこで衝撃の価格破壊!!】2000円→???円になる“裏ワザ”教えます
提供:KDDI

「イノセンス」4Kリマスター版
【いま観ずに、いつ観る?】公開20周年記念、劇場“初”公開!“究極”の「イノセンス」が解放される
提供:TOHO NEXT

石門
就活中に妊娠、卵子提供のバイト、生活に困窮…壮絶、しかし共感する驚愕体験【100%超高評価作】
提供:ラビットハウス

ヤバい映画みつけましたよ
【いた…凄まじくクレイジーな監督が…!】壮大VFXの映画をほぼ1人で製作、撮影に7年、完成に12年
提供:Henge