【「キングダム エクソダス〈脱出〉」評論】「善も悪もあることを心得よ」あの名セリフ再び。ファン待望のTVシリーズ25年目の完結編
2023年8月6日 14:00

日本では1995年と97年に劇場版が公開され、先が読めない展開、グロテスクなショック映像、エキセントリックな登場人物と、独自の魅力によって「北欧のツイン・ピークス」と呼ばれたテレビドラマ「キングダム」、その25年振りの完結編である。デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーが引き続き監督を務めている。
かつて衣類の漂白場だった沼地にそびえ立つ巨大病院キングダム(国立コペンハーゲン病院)。謎の声に導かれやってきた夢遊病者のカレン(ボディル・ヨルゲンセン)は、用務係ブルザー(ニコラス・ブロ)らと出会い病院を支配する悪に戦いを挑む。一方、スウェーデンから着任した医師ヘルマー(ミカエル・パーシュブラント)は筋金入りのデンマーク嫌いで、同僚と距離を置きつつ、ある調査を開始する。
当時トリアー監督が設立した映像会社ゼントローパの目玉作品として、94年に第1シーズンがデンマーク国内で放映、医療ドラマ+ゴシックホラーの斬新なジャンルで、最高視聴率は53%を記録。97年には第2シーズンが放送、続く最終シーズンも脚本は完成していたが(スティーブン・キングはこれを読んだ上でリメイク版「キングダム・ホスピタル」を製作)メインキャストの急逝などで中断に追い込まれる。だが、根強いファンの声に後押しされ16年ごろから企画が再燃、トリアー自身もパーキンソン病と闘いながら、この度完成にこぎ着けた。
「キングダム1&2」は前述の「ツイン・ピークス」、そして詩人T・S・エリオットやカール・ドライヤー(各話に登場するトリアー着用のタキシードはドライヤーの私物とのこと)などに触発されつつ、実際に病院で起きた超自然的エピソードが脚本に織り込まれ、米ドラマ「ホミサイド 殺人捜査課」の影響を受けた手持ちカメラの完全ロケ方式は、のちのドグマ95運動へと発展した。
だが「エクソダス」は、カレンが「キングダム」をテレビで観ているシーンから始まるという、意表を突くメタ展開で前作との差別化をはかる。粒子の粗い映像などスタイルは踏襲しつつ、アレクサンダー・スカルスガルドらの豪華キャストや、凝ったCG表現などの新機軸に驚かされる。また笑いに走った第2シーズンへの反動からか、ポリコレ全盛の現代にもかかわらず、人種、ジェンダーなどへの際どい言及もあり、世間の偽善や欺瞞を煽るようなトリアーの挑発は健在だ。
3部作好きな監督の原点にして完結編である本作、予想外の結末には戸惑うかも知れないが、善悪不二のテーマ性は強く感じた。3部作の総尺は900分=15時間、この機会にぜひ完走を目指してもらいたい。
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