寝床は食パン、ペットは糸くず!? “靴をはいた小さな貝”マルセルの生態が明かされる映像独占入手
2023年6月21日 09:00
第95回アカデミー賞の長編アニメ映画賞にノミネートされた「マルセル 靴をはいた小さな貝」の本編映像を、映画.comが独占入手。食パンを寝床にしたり、糸くずをペットにして散歩させたりと、“靴をはいた小さな貝”マルセルのかわいらしい生態が明かされている。
本作は、2010年~14年にYouTubeで順次公開され、累計5000万回再生を記録した短編作品を長編映画化したもの。おしゃべりで好奇心旺盛な小さな貝マルセルの冒険を時にコミカルに、時にエモーショナルに描き出す。新進気鋭の映像作家ディーン・フライシャー・キャンプが監督を務め、本人役で出演も果たしており、フィクションでありながらもドキュメンタリーのように見せたモキュメンタリー手法をとった。全米公開時には、製作・配給会社のA24が、複数のハリウッドメジャーとの熾烈な競争の末に、北米配給権を獲得。アカデミー賞のほか、第50回アニー賞の3部門で受賞し、第80回ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞にノミネートされるなど、高く評価された。
アマチュア映画作家のディーン(キャンプ)は、あるAirbnb(民泊サービス)で、祖母のコニーとふたり暮らしをしている小さな貝・マルセルと出会う。マルセルの離ればなれの家族を見つけるため、ディーンがYouTubeに彼の動画をアップしたところ、SNS上で瞬く間にバズり、一躍全米の人気者になる。
本編映像では、体長およそ2.5センチでありながらも、知恵を絞って暮らしているマルセルの生活ぶりが垣間見える。冒頭で映し出される、植木の下にある1枚の食パンを、マルセルはベッドとして使用している。ふかふかな肌触りで、最高の寝具となっているようで、彼はその空間をベッドルームではなく“ブレッドルーム”と呼んでいる。
さらに映像では、ディーンが飼う犬のアーサーが、マルセルに挨拶。アーサーの激しい動きに動揺を隠しきれない様子のマルセルだが、「犬を飼うのは良いよね」とすました風に語り出す。「僕も、糸くずに毛を結んで散歩させている」といい、アランという名のペット(糸くず)に「愛してるよ、アラン」と声をかけるなど、愛情をもって育てているようだ。人間と肩を並べたいのか、少し見栄っ張りだがキュートなマルセルの一面が伝わってくる。
キャンプ監督は、映画化のオファーが届いた頃を振り返り、「これまでのアニメーション作品にはなかった、本物らしさと親近感がある作品づくりを目指しました。著名なクリエイターたちも推奨するドキュメンタリー映画『グレイ・ガーデンズ』(ジョン・F・ケネディの親戚で、母ビッグと娘リトル・イディの生活に密着したドキュメンタリー)や、『UPシリーズ』(イギリスで制作されたドキュメンタリー番組)のように、マルセルの物語をあらゆる尊厳、リアリズム、そして粗削りな実直さをもって描きたいと強く思いました」と語る。
しかし、架空のキャラクターを描くリアルなドキュメンタリーをどのように作るか、という難題にぶつかったディーン監督。やがて、ある作品からヒントを得たようで、「ニック・パーク監督の1989年の短編アニメ『快適な生活』。この作品を核としてマルセルのビジョンが具体化し始めたのです」と明かす。
「快適な生活」は、本作で採用されているストップモーションという技法にも、大きな影響を与えた。「パーク監督は『快適な生活』で、ストップモーションアニメと、イギリス西部のブリストルとその近郊で行った街頭インタビューから抽出した実際の音声を巧みに融合させています。動物園のなかの動物であるキャラクターたちは、既存の音声に合わせてアニメ化されています。普通なら漫画的に滑稽に見えるシーン(檻のなかのライオンが住まいの広さについて不満を言うシーンが印象的)は、淡々とした観察とありふれたドキュメンタリー的表現に基づき、ありえないほどのリアリズムを帯びています。この対比により、この作品はあらゆるジャンルの概念を超越し、現代社会で味わう屈辱感を描くコメディ風刺作品としても、日常の一コマをひたむきに描くノンフィクション作品としても見事に機能しています」と、その素晴らしさを解説した。
「マルセル 靴をはいた小さな貝」は、6月30日に東京の新宿武蔵野館、渋谷パルコ8F ホワイト シネクイントほか全国で公開。
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