「どうする家康」演出・野口雄大の初監督作「さまよえ記憶」がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭に出品
2023年6月14日 15:00
NHK大河ドラマ「どうする家康」の演出を手掛ける野口雄大監督が自主制作した「さまよえ記憶」が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023(7月15日~23日開催)の国内コンペティション短編部門に選出された。
川で行方不明になった息子を探し続けている母親と、それを見守る父親が、情報質屋という店を営む謎めいた女性との出会いによって、大切な記憶を問いかけられる物語。学生時代に師事していた落合賢監督と企画開発をしている中で、「パーソナルなことを描くと強度があるし、途中で折れないものが必要」というアドバイスを受け、20歳の頃に友人が原因不明で亡くなった原体験をベースに脚本を執筆した。
母親役の永夏子とは以前、落合監督作品を手伝った頃からの知り合いだったが、あえてオーディションに来てもらい「覚悟を持って演じてくださった」と依頼。一方、父親役のモロ師岡は「キッズ・リターン」を見てからの大ファンで、SNSにDMを送ったところ「ぜひ話を聞きたい」と熱意が伝わりオファーにつながった。
昨年秋、有給休暇を取って4日間で撮影し、クランクアップ時は「やり切った。自分が持っている力は出したという達成感があった」と手応え。同時に「普段は恵まれた環境でやっているんだと改めて思いました。インディペンデントでスタッフィングもキャスティングも自分でやりましたし、この作品のために集まってくれた皆さんには感謝しかありません」としみじみ語る。
編集などポストプロダクションも休日を使って地道に行った。そして完成を迎え「この一歩は、自分の予想をはるかに上回る大きなものでした。それまではやりたいことがあっても踏み出せないところがありましたが、恐れないようになりましたね」と笑顔。友人に対しても、「彼の生きた証を残したかった。僕自身もこの作品を作れたことによってマイナスの記憶がポジティブなものに変わりましたし、彼もよくやったと言ってくれると信じています」と願った。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭でのお披露目が決まり、「自分の子どもができたような感覚で、その子が巣立っていく姿を見届ける気分です」と楽しみな様子。そして、「記憶は忘れられるものではないですが、つらいことがあった人もそうでない人もそれぞれの記憶に対して向き合うきっかけになればと思っています」と期待した。
「さまよえ記憶」は、8月4日から池袋シネマ・ロサで公開。