豊原江理佳が突き進む、アリエルらしい“生き方” オーディション秘話も「反省会を1カ月くらい…」
2023年6月13日 15:00
海の中にいても、太陽の光で照らされているような、アリエルのイメージそのままの笑顔を浮かべ、豊原江理佳は幾度となく“愛”という言葉を口にした。
ディズニー不朽の名作アニメーションをロブ・マーシャル監督の手で実写化した映画「リトル・マーメイド」(公開中)。豊原は、ハリー・ベイリーが演じた魅力的なアリエルのプレミアム吹替版声優を担当し、ベイリーに負けない力強く美しい歌声を響かせている。
既に演劇・ミュージカルの世界では、その歌声と類まれなる存在感で、名だたる作家・演出家たちの話題作に次々と出演する、知らぬ者のいない逸材。今回、その才能がついに映画の世界に“発見”された。
実写版ならではの面白さ、アニメーションの素晴らしさを受け継ぎつつ、新たに紡ぎ出されたヒロインの魅力について、豊原にたっぷりと語ってもらった。(取材・文/黒豆直樹)
オーディションだったのですが、私が個人的にYouTubeで(アリエルを演じた)ハリー・ベイリーさんが「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌っている動画を見て「もし(吹替版の)オーディションがあったら絶対に受けたいです!」と事務所に言ってたんです。そうしたら、ちょうどディズニーさんからも「オーディションがあります」とお声がけをいただきまして、受けさせていただきました。
こんな風に自分から(まだ話が来ていない段階で)「やりたいです」と言ったのはほぼ初めてでした。なんでなんでしょうね(笑)。 もともと「リトル・マーメイド」は大好きな作品でしたが、ハリーさんの透明感のある、まさしく人魚のような声にビビっときたんでしょうね。「絶対にやりたい!」という気持ちになっていました。
それが、私の感触としてはボロボロで……(苦笑)。(セリフの)アフレコをするのも初めてだったので、全然うまくできず、歌も緊張で声が上ずっちゃいました。家に帰って「あそこをもうちょっとこうしておけば」という反省会を1カ月くらいしていました。
なので、「合格」と知らされた時はビックリしました。その日、まず「まだ正式に決まっていなくて、アメリカ本国との最終面接があります」と言われて行ったら「決まりました」とおっしゃっていただいて、信じられないというか、地に足がつかないようなフワフワした気持ちになりました。プリンセスってなれるんだ! と思いました。
もともと、自分の性格なんでしょうけれど、不安やプレッシャーがじわじわと後になって押し寄せてくるタイプなんですね。最初に決まった時は嬉しかったし、収録もひたすら「楽しい」「あのアラン・メンケンさんの歌が歌えるんだ!」「私がアリエルをやれるんだ。幸せ!」みたいな気持ちでした。
プレッシャーは、収録を終えて、正式に情報が発表された4月以降、取材を受けたり、メディアに出させていただくようになってからじわじわとやって来ていますね。すべてが終わってから(笑)。
ディレクターの方と事前にしっかりと話し合って、どんな風に収録を行うのか、事前にどんな準備が必要なのかを伝えていただいた上で収録に入ることができました。
特にセリフの部分のアフレコはめちゃくちゃ緊張しましたが、チームの皆さんが、私が萎縮しないように、本当に丁寧にわからないことを手取り足取り教えてくださりながら進めてくれたんです。なので、こちらも「うまくできずにすみません」みたいな気持ちにならずに収録に臨めました。逆に私の方から「ここはできればもう一度、録らせてもらっていいですか?」と言い出せるような、素晴らしい環境を作っていただけたと思います。
すごく楽しかったです! 自分の声があの「リトル・マーメイド」の楽曲のオーケストラの中に入るというのが嬉しくて、ウキウキしていました。楽しかったです!
陸に上がったアリエルが、初めて見るもの、触れるものに興味をそそられていく様子を歌っていて、ずっと想像していた“火”ってこんなもので、触ると熱いんだとか、彼女の心が動いていく様子が曲になっているので、それを「しゃべるように歌う」というのを大事にしました。
結構忙しい曲で(笑)、陸に上がってからエリック(ジョナ・ハウアー=キング/声:海宝直人)に会うまでが1曲の中に収められていて、あちこちを見ながらそれを曲にしたようなものなので、あんまりおっとりした気持ちでいると置いてかれちゃうので、そこは難しかったです。
観ていただく方にもアリエルが、初めて見るものばかりの世界へのめまぐるしさとワクワクしている気持ちに共感しつつ、一緒に付いて来ていただければと思います。
もう本当に幸せで……。そもそもハリーさんの動画を見る以前から、小さい頃から聴いて育ってきた曲でした。何もストッパーをかけることなく、気持ちのままに歌わせていただきました。
最初はハリーさんの歌声を聴いて、アレンジの部分も頭に入れてたんですけど、最終的には私自身の表現になるようにという思いで、自分を解放して、アリエルの心のままに歌いました。
収録は別々で録ったんですが、私はリン=マニュエル・ミランダさんによる今回のアレンジが大好きで、踊りながら楽しく録りました(笑)。
感動しました。自分の声が映画の中に入っているのは初めての経験でした。もちろん、なかなか客観的に見られずに反省してしまう部分もありましたが、やっぱり、キャラクターたちが生きているのが感動的でした。
これはもう絶対に映画館で感じてほしいんですけど、海の中のシーンが本当に美しくて、アリエルたちと一緒に海の中にいるような感覚を味わえると思います。
実写ならではという部分では、アリエルとエリックが惹かれ合っていく様子が、すごく丁寧に繊細に描かれていると思います。2人の間に“運命の赤い糸”があるような、ずっと前から約束していた出会うべき2人だったんじゃないかと感じました。
でも、もちろん彼らは人魚と人間なわけで、別々の種族なんですよね。その壁を乗り越えて、運命の相手と出会い、惹かれ合う姿に壮大な“愛”を感じました。2人が(単に一目惚れではなく)価値観で惹かれ合うという部分も素敵だなと思いましたね。
お父さんのトリトン王(ハビエル・バルデム/声:大塚明夫)とアリエルの愛情がしっかりと描かれているところもすごく好きです。アリエルが最後にお父さんの偉大さに気づくところ――自分の道を進んでいくけれど、お父さんがちゃんと支えてくれているし、お父さんに「愛してる」と伝える瞬間に、アリエルは大人になったんだなと思います。いろんな愛がひとつになって送り出されるあの感じが素敵だなと思います。
私自身、大人になって親のありがたみを感じますし、親だけでなく、そばにいてくれる人、支えてくれている人、誰でもいいんですけれど、愛ですよね。愛はあるんだというのを信じさせてくれるシーンだなと思います。
アリエルには自分の好きなもの、お気に入りの部屋があって、誰にも振り回されず、どんなに父親に反対されても、ブレずに自分の「好き」を貫きます。
誰しも、特に子どもは、親であったり、周りの人たちの期待に応えようとしてしまう部分ってあると思うんです。でもそうじゃなく、「危ない」とか「ダメ」と言われても、「でも人間の世界に惹かれる」「行かなきゃいけないんだ」と自分の心に誠実なところがすごく好きです。
自分の心の声に耳を傾けるからこそ、目にすることができる景色ってあると思うし、アリエルはそれを自分の意志でつかみ取ったんですよね。自分の心の声を聴く“勇気”を持っている部分はすごく尊敬します。
そうなんです! だからお父さんにコレクションを壊されちゃうところは、大切なフィギュアたちを捨てられちゃうみたいですごく悲しくなりますよね。
この作品、大人だからこそ刺さる部分はたくさんありますよね。私、海の魔女のアースラ(メリッサ・マッカーシー/声:浦嶋リんこ)も大人になってからだと、自分の中にもある“いじけた部分”の象徴のような気がして、すごく刺さったし、ものすごく魅力的に見えました。全然嫌いになれないんですよね(笑)。「真実の愛なんてないんだよ」というセリフも、これまでに本当にたくさん傷ついてきたんだなとか、これまでのアースラの人生のことを考えさせられました。
そういう部分も本当に刺さりました。10代の頃は自分がミックス(※父親がドミニカ共和国出身で母親が日本人)であるという部分も含めて、ルーツに悩んでいたんです。
アリエルと同じで、私も親にすごく愛されて育ったし、食べるものに困るようなこともなかったんですけれど、それでも「ここではない、どこか違う場所に自分の居場所があるんじゃないか?」という思いを感じていました。
それから東京に出てきて、大変なこともいろいろあったんですけれど、自分の手でつかんだ自由というものの大きさを今回、この映画を観て改めて感じました。
陸に上がったアリエルが声を出せないので、言いたいことが言えなくてというシーンも、東京にウキウキで出てきたはいいけれど、みんな歩くのもすごく速いし、めまぐるしくて誰も私のことなんて見えてないんだと思えて、1日をすごく長く感じて、家に帰ったら急に静かで泣いてしまって……という上京した頃の自分を思い出しました。
私も「やりたい」と思うことは、やってみようと思える性格なんですよね。あまり失敗した時のことを考えないので、勢いですね(笑)。さっきも言いましたけれど、時間が経つにつれて「こういうリスクがあるかも」とか考えちゃうんですけれど、そう考える前に勢いでやってしまうんですよね。
「自由になりたい」という思いも強かったし、「東京に行けば、なりたい自分に近づけるかもしれない」というポジティブな部分に目を向けて行動しちゃうんですね。そこで決断して良かったなと思うし、今が一番楽しいです!
歌や演技という自分の好きなことを仕事にできていることも嬉しいですし、10代の頃は見た目で判断されてしまう部分があるのを感じていたんですが、最近はそれを感じることも少なくなっていますし。自分で選んだことだし、だからこそ「楽しくあろう」と常に思っています。
大きな夢を持つことが全てではないと思うけど、自分の心に真っ直ぐに生きる、自分の心の声に従うことで見えてくるものもあると思いますし、自分で選んだからこそ、責任も芽生えます。
この映画を観たら「どうしようかな?」「やってみたいけれど」と思っている人の背中をアリエルがきっと押してくれるんじゃないかと思います。
大人が見ても本当に刺さる作品だと思うので、夢でも趣味でも、ちょっとしたことでいいので、自分の「好き」なものを見つけて、自分が「こうありたい」と思う生き方を考えるきっかけになってくれたらと思います。
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