戦争の地獄図絵を描いてきた夫婦の沖縄戦をめぐるドキュメント「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部」が公開
2023年6月11日 11:00

「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と40年に渡り、戦後一貫して戦争の地獄図絵を描き、ノーベル平和賞候補になった故丸木位里と丸木俊夫妻による「沖縄戦の図」を紹介するドキュメンタリー「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部」が、6月17日から沖縄の桜坂劇場、6月23日から宮古島のよしもと南の島パニパニシネマで先行公開され、その後7月15日~28日にポレポレ東中野、8月1日~6日に東京都写真美術館ホールほか全国で順次公開される。このほど予告編、場面写真、河邑厚徳監督のコメントが披露された。
1945年の沖縄戦の写真は、アメリカ側が撮影した写真しか存在していない。ふたりは「日本人側から見た記憶を残しておかなければいけない」と、1982年から1987年に沖縄戦を取材し、「沖縄戦の図」14部(「久米島の虐殺 1、2」「暁の実弾射撃」「亀甲墓」「喜屋武岬」「ひめゆりの塔」「沖縄戦 自然壕」「集団自決」「沖縄戦の図」「ガマ」「沖縄戦―きやん岬」「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」)を制作した。
それまではふたりで共同制作を進めてきたが、沖縄で体験者の証言を聞き、生々しく残る戦地を歩き、村人も参加する開かれたものになっていった。完成した「沖縄戦の図」は、平和を願い描いたふたりの作品群の中でも、余すことなく戦争の悪を描き、日本軍の愚かさを伝えてその記憶を未来へ継承しようとする怒り溢れる作品となった。
写真:石川文洋本ドキュメンタリーは、個々の絵についての説明や批評はあった「沖縄戦の図」全14部を全て紹介する初めての試みであり、ふたりが最晩年、6年かけて取り組んだ「沖縄戦の図」の制作の軌跡を辿ることで、沖縄戦以降の沖縄の歴史を振り返り、「反戦反核の画家」と一言では語り切れない命に対する眼差しを丁寧に紹介する。
同時に、ふたりが証言を聞いた人々にインタビューすることで、ふたりが「戦争悪が凝縮している」と驚いた、家族同士が手をかけた集団自決など、「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた「地上戦」である沖縄戦の色々な側面を見せる。存命の直接戦争を語れる体験者が数少なくなっている中、貴重な映像資料となっている。
「沖縄戦の図」全作品は、米軍から「美術館建設のためなら」と先祖の土地が返還された特別な土地に建てられた佐喜眞美術館に収蔵され、「命こそ宝」という概念コンセプトが来場者に伝わる空間とするための工夫も紹介されている。また、なかなか戦争体験を語ろうとしない人が多い中、沖縄戦については沖縄民謡の歌詞としても残っている。若い沖縄民謡唄者の新垣成世と同級生で平和ガイドでもある平仲稚菜が「沖縄戦の図」などから戦争について学び、民謡でも戦争体験を継承していく姿も映し出される。
(C)2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス2020年、はじめて「沖縄戦の図」の前に立った瞬間、金縛りにあったように言葉を失った。美術館を出た時には、一枚一枚の絵を貫いたアートドキュメンタリーを作りたい気持ちに火が付いていた。
(C)2023佐喜眞美術館 ルミエール・プラス
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