車いすテニス国枝慎吾さん、クライミングにも意欲!? 盲目のクライマー小林幸一郎さんとトーク 映画「ライフ・イズ・クライミング!」バリアフリー試写会
2023年5月11日 10:00
視力を失ったクライマーとその相棒が、アメリカへ旅に出て、想像を超えるクライミングに挑むまでを描いたドキュメンタリー映画「ライフ・イズ・クライミング!」バリアフリー・プレミア試写会が5月10日、YEBISU GARDEN CINEMAであり、クライマーの小林幸一郎さんと、ガイドの鈴木直也さんが登壇。スペシャルゲストとして、パラテニスプレイヤーの国枝慎吾さんを迎えトークを行った。
視覚障がいを持つクライマーのコバこと小林さんとサイトガイドのナオヤこと鈴木さん。2001年に出会ったふたりは、パラクライミング世界選手権で4連覇の快挙を成し遂げた。21年、2人はユタ州の大地にそびえ立つ真っ赤な砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つことを目指し、アメリカへと旅に出る。
本作を一足早く鑑賞した国枝さんは「ふたりの絆がまぶしかった。コバさんが見えないからこそ、全てナオヤさんを信頼しているのがわかる。でも、なんでこんなつらい岩を登るのか? それを聞きたかった」と率直な疑問をぶつける。それを受けて小林さんは、「何万回と壁打ちを繰り返す人にそう聞かれても(笑)」と切り返し、「クライミングは勝ち負けも順位がつくものでもなくて、もう完全自己満足でしかないものなんです。ただ、その先には登り切った先に、大きな達成感があることが自分たちのゴールだと思う。それってやっぱりやった人間だけが知る感覚であると思うんです」とクライミングの醍醐味を伝えた。
国枝さんは「コバさんが『見えないからこそこれだけの信頼できる仲間ができた』と仰っていて、それがすごく羨ましいと思いました。自分自身も歩けませんが、車椅子を使ってテニスすることで、みんなができないと思ってたことをできるっていうことを見せられましたし、コバさんにはナオヤさんがいることで、同じくみんなができないであろうと思うことができて。そういった補完関係がすごくできていると思う。この映画を通してやっぱり諦めなければ何でもできるんだというメッセージがあるような気がしました」と改めて感動したポイントを語った。
本作では、小林さんのガイドである鈴木さんの抜群のコミュニケーション能力とサポート力も見どころだ。鈴木さんは「大会は6分間しかないんです。その中で僕がいい加減な指示をするとコバが、『足どこだ!』なんて怒ったように言うこともあるので、僕も怒ったように返すこともあります。でも怒っている暇があったらクライミングでは前に進んだ方がいいので、その先の普段の生活ではケンカすることが基本ないんです」とお互いを理解し合う関係性について語った。
小林さんは「私は白い杖をついている視覚障害者で、『これは、障がいのある方を追いかけたドキュメントですね、目が見えないのにクライミングなんてすごいですね』と言われますが、この映画の主人公は鈴木直也だと思って観てほしい。障害者を追いかける映画ではなく、鈴木直也という男が、目が見えない人、外国人、大人や子どもなど様々な人と分け隔てなくどんな風に向き合って付き合っているのか。社会の中で我々がどんな風に生きていくのか、皆さんそれぞれに重ねて考えていただけるんじゃないかな」と自身の視点で映画をアピールした。
四大大会すべてとパラリンピックで優勝する「生涯ゴールデンスラム」を達成した国枝さんは、今年1月に現役引退を発表。また、世界選手権4連覇を成し遂げた小林さんも、3月に開催されたパラクライミング日本選手権出場をもって現役選手引退を表明している。
かつてない偉業を達成したふたりが現役引退について問われると、小林さんは「選手生活引退と表現されますが、自分の心情としては変化がない。18歳でクライミングに出合い、28で目が見えなくなったけれど、クライマーとしての自分が変わるわけではない。旅をし続けることも、自分の生活が変わることはない、競技という楽しみ方をちょっとお休みする気分です」と表現。国枝さんは「クライマーのおふたりを前にこんなこと言うのは何ですが、富士山を登り切った気がしました。今はその登り切った富士山を下山する気持ちで、その途中で他の新しい目標となる山を見つけられれば」と語る。
その後小林さんは、「国枝さんは富士山の例え話をされましたけれども、(国枝さんの引退は)やはり山登りのその先に待っている達成感と近いのかなと思います。やっぱり国枝さん、これはもうその謎を解くためにクライミングするしかないですね。私の周りにも何人も(車いすのクライマーが)います」と国枝さんをクライミングに誘う。テニスのほか、バスケットボール、水泳、バトミントンなどに挑戦している国枝さんも「一度見てみたいです。いや、やるしかないですね」と前向きにクライミングへの意欲を見せていた。
なお、本日の上映会は音声認識技術を用いてトークをリアルタイムに文字化する「UDトーク」を使用し、会話をスクリーンに表示して行われた。映画本編はスクリーンに字幕付き、音声ガイドはUDCastに対応している。映画は5月12日新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開。
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