ノートルダム大聖堂の火災を巨大セットで撮影しリアルに表現 ジャン=ジャック・アノー監督に聞く

2023年4月7日 09:30


ジャン=ジャック・アノー監督
ジャン=ジャック・アノー監督

薔薇の名前」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」などで知られるフランスの巨匠ジャン=ジャック・アノー監督が、2019年に起きたノートルダム大聖堂の火災を題材に、消防士たちの命懸けの救出劇を全編IMAX(R)認証デジタルカメラで撮影し、VFX映像との融合により、圧倒的リアリティで緊張感たっぷりに描き出した「ノートルダム 炎の大聖堂」が公開された。

近年大規模ハリウッド作などで頻繁に採用されるようになったIMAXフォーマットだが、実はアノー監督の「愛と勇気の翼」(1995)が最初の本格的劇映画なのだ。「最も素晴らしい映画体験の一つを提供してくれます」と長年IMAXへの情熱を持つアノー監督に、オンラインインタビューを実施。ノートルダム大聖堂を臨むアパルトマンに住むアノー監督は、スマホでパリの風景を映しながら取材に応じてくれた。

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<あらすじ>
 2019年4月15日、パリのノートルダム大聖堂で火災が発生した。警報器が火災を検知するも大聖堂の関係者たちは誤報だと思い込み、その間にも火は燃え広がっていく。消防隊が到着した頃には大聖堂は激しく炎上し、灰色の噴煙が空高く立ち昇っていた。複雑な通路が入り組む大聖堂内での消火活動は難航し、貴重なキリストの聖遺物は厳重な管理が裏目に出て救出に困難を極める。消防士たちはマクロン大統領の許可を得て、最後の望みをかけた突入作戦を決行する。

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――実際に大規模なセットを炎上させてIMAX撮影された本作ですが、歴史的建造物の大火事という悲劇を映しながらも、死者ゼロだった消防隊の決死の努力、そのドラマと臨場感に驚かされました。当初からIMAX撮影でという企画だったのでしょうか。

私は、映画体験はテレビで見る体験とは全く異なるものだと考えています。ノートルダム大聖堂の悲劇は、世界の誰もが報道でその映像を知っていることです。ですから、私は観客をドラマの部分でその核心に連れて行かなければならないのです。そのためには消防士しか見ることのなかった内部の光景を見せ、そして音を体験させることによって、観客に新たな感情が湧くことを狙い、最初からIMAXでの撮影を企画しました。テレビのドラマやドキュメンタリーでは描けないものが、IMAXのフォーマットで体感できると思うのです。

――火災の再現のために、実際に火を使った炎上シーンもあります。この撮影のためにも消防士を配備されたのでしょうか?

こういった作品を作る時、私は考え抜いて準備して取り組むので、映像的には必ず良いものが撮れる確信はあります。ですが、クランクイン後、一番気がかりなのは撮影にかかわる人々の安全面です。

今回、フランスでも最も大きなスタジオに大聖堂を再現し、実際に火を点けました。しかし、撮影できるのはわずか1分10秒ほどです。それ以上の時間が経つとスタジオ内の酸素が無くなり、その場にいる人間は蒸し焼きになってしまうので、すぐに退去しなければなりません。スタッフはVFX担当はじめ200人ほどいました。実際の炎を再現し、役者もその近くで演技をするというやり方をしているので、あらゆる面での安全策を取りましたし、撮影面で消防士のコンサルタントをつけ、何かあった場合に実際に消火活動が行える消防士も配備しました。

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そして、“何か”は起こりました。実はスタジオの天井を少し焦がしてしまったのです。たった1分の間ですが、とてつもない大きな熱が発生したため、燃えてしまったのです。こういった事態が起こる可能性があるからこそ、現場にプロを揃えなければなりませんし、真剣に危機を考えて臨まなければならないのです。

この映画のために、私は実際にノートルダムの火災に関わった消防士の95%に会っています。ある意味で彼ら全員が僕のコンサルタントのようでした。撮影中はパリの消防団から1日に2人派遣され、全てのカットに対応してくれました。

リサーチに1年間以上をかけ、消防士、大聖堂関係者、その他合わせて300人くらいの方々に話を聞いたので、消防に関しては警察より僕の方が詳しいかもしれません(笑)。そして、一般の多くの方が僕に目撃談をシェアしてくださったことも、制作の助けになりました。

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――やや不謹慎な話になるかもしれませんが、フランスの象徴的な建物の火災を見て、一般の方々と同じく心を痛めると同時に、映画監督として、これは映画になるぞ、というようなインスピレーションが湧いたのでしょうか?

はい、それは感じました。今住んでいるアパルトマンは大聖堂から500メートルほどの場所にあり、3歳の時に“聖なる場所”という意味で初めて訪れた場所もノートルダムでした。その後100回くらいは訪れています。ですので、個人的な思い入れが大きいですし、中世史や中世美術史を映画と並行して学び続けられたのは、ノートルダムの印象が強かったおかげ。終生その存在は大きなもので、私の過去作「薔薇の名前」も今作と連なるものだと思います。

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私は無神論者で信仰はありませんが、幼少期から聖なる場所の写真を撮るのが大好きでした。それはキリスト教的な場所に限りません。日本の寺などもそうでしょうが、そういった場所には特別な気持ちが喚起されると思うのです。例えばスーパーマーケットが燃えているのでは、感じるものが違う、どこかスピリチュアルな側面が加味されると思うのです。

私はノートルダム大聖堂は文明の象徴だと捉えており、キリスト教という宗教を超えたシンボルだと思うのです。だからこそ、他の宗教を信仰している人にとっても心を動かされるものだと思います。世界でも最も訪問者が多い聖なる地でもあるので、本作をご覧いただければ、世界の誰もが共鳴するものがきっとあると思います。

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