終活に向かう老婦人と運転手の人生が美しいパリで交差する「パリタクシー」 主演の仏国民的歌手、リーヌ・ルノーに聞く
2023年4月7日 15:00
昨年のフランスの大ヒット作で、終活に向かう老婦人、マドレーヌを乗せたタクシー運転手が、美しいパリの街を横断しながら、彼女の波乱万丈の人生の物語に寄り添う姿をエモーショナルに描いたヒューマンドラマ「パリタクシー」が公開された。マドレーヌを演じたフランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーがオンラインインタビューに応じた。
無愛想なタクシー運転手シャルルは、金も休みもなく免停寸前で、人生最大の危機に陥っていた。そんな折、彼は92歳の女性マドレーヌをパリの反対側まで送ることに。終活に向かうというマドレーヌは、シャルルに次々と寄り道を依頼する。彼女が人生を過ごしたパリの街には多くの秘密が隠されており、寄り道をするたびに、マドレーヌの意外な過去が明らかになる。そしてそのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かしていく。
もともとカリオン監督の方からアドバイスを求められたので、多くの話をし、マドレーヌという役について話し合いました。役作りはほぼ監督の希望に従いましたが、いくつかの提案をしました。例えば、アイスクリームを食べるシーンでは、レストランの中ではなくパリとセーヌが見える外で食べる方が素敵だと思ったのです。
マドレーヌは、夫から暴力を受けます。私にそのような経験はありませんが、私の祖母は殴られていました。しかし、家庭内暴力は現代のフランスでもあることです。そうした点では、女性の立場はかつてと変わったとはいえ、変わっていない部分もあるのです。
私はたくさん泣きました。それはラストが非常に悲しいからです。現在のフランスでも高齢者を老人ホームに入れる習慣が出来上がっています。老人ホームには家族はいません。マドレーヌにも家族はいませんが、タクシーでシャルルと多くのことを話したので、シャルルが自分の家族のようになっています。しかも、私とダニー・ブーンは実人生で本当の友人なので、家族のように思っています。ですから、マドレーヌがホームに入るシーンでは、運転手を演じた彼も心を乱されたと思います。
世界で一番美しい通りと言われるシャンゼリゼ通りは広くなりました、オペラ座のある地区は変わっていません。私がステージに立ったことのある、ムーランルージュは、外観も内装も当時のまま変わっていません。パリはあまり変わらないのです、世界で一番美しい街だと思います。
今の私の闘いは真実の中で死ぬことです。つまり生きることと同じように、死を選択する権利があって当然だと思います。助かることのない人間が苦しむままにいることはいけないことだと思います。私の母親は1カ月以上延命措置で苦しみ続けました。
私は毎日母親に死なせてくれと頼まれましたが、私は何もできませんでした。そういった苦しみを短くしたいのです。人生を生きることが不可能になったら、その苦しみを変える権利を持つべきだと私は考えています。
ノン、ノン、ノン!(笑)。全く同じことを繰り返してしまうと思います。私はずっと自分の思い通りに生きてきました。もし、若い頃に戻れてもまた同じように生きるでしょうから。