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「せかいのおきく」は究極の3R映画 美術・衣装・小物に新品は一切なし

2023年3月17日 08:00

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4月28日から公開
4月28日から公開
(C)2023 FANTASIA

本日3月17日は「みんなで考えるSDGsの日」。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)が目指す持続可能な社会の実現のために、映画の撮影現場でも環境保護の取り組みが行われている。名匠・阪本順治監督の最新作「せかいのおきく」の撮影現場でも、江戸の循環型社会が描かれる本作の物語と同様に、環境に配慮した取り組みが行われた。

黒木華が主演を務める本作は、声を失った武家の娘・おきく(黒木)と雨宿りで出会った中次(寛一郎)、下肥買いの矢亮(池松壮亮)の青春物語。人間と自然が共生し、経済として成り立っていた江戸の循環型社会を描いていることも本作の特徴だ。

江戸では資源が少なく、衣食住のすべてが貴重なものだという考えが浸透しており、例えば、料理で使う鍋や食器は、割れたり穴が開けば焼き接ぎでくっつけるなど修理して使い続けていた。紙屑買いが集めた反古紙は漉き直して再生紙に何度も生まれ変わった。また、本作に登場する「下肥(しもごえ)買い」は「汚穢屋(おわいや)」とも呼ばれ、江戸市中から糞尿を集めて農家に運び畑の肥料として活用していた。

画像2(C)2023 FANTASIA

映画美術のセットは、建物や装飾、小道具など様々なものを新しく作り、撮影後は大量のごみとして排出されることも多々あるが、本作では、企画・プロデューサーで美術監督の原田満生氏の指揮のもと、美術セットや小道具、衣裳に至るまで劇中に出てくるもの全て、新しいものは一切使用しない、「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」映画(原田氏が命名)として撮影することを決めて準備が進められた。

主人公・おきくが住む長屋のセットは、東映京都撮影所にある様々な名作が生まれたオープンセットをリユースして作られた。また、おきくと中次が手を取り合う本作のメイン写真にもなっている雪が降るシーンでも、松竹京都撮影所にある、長屋オープンセットをリユースして印象的な舞台を創りあげた。

ポスターにも登場する、おきくと中次・矢亮の3人が雨宿りする厠の建物は、新材ではなく古材を使って制作。中次と矢亮が下肥買いの仕事で乗る「汚穢(おわい)船」や、肩に担ぐ桶や大八車などもリユースされているものだ。

「汚穢船」について、美術監督の原田氏は「『せかいのおきく』で中次と矢亮が漕いでいる汚穢船は、昭和の高度成長期(今から60年くらい前)に造られた木船。現代では、木の船は殆どなく、多くが FRP(繊維強化プラスチック)で作られた船なのでとても貴重でした。この木船は栃木市で川の遊覧船として使われていたもので、古くなったので、本作のマリン統括ディレクターの中村勝が3艘を譲り受けました。その遊覧船を加工して汚穢船としてリユース、その際も新材ではなく、古材を使用しています。そのほうが、風合いも出て統一感がでるメリットもあります。それまでの歴史を背負っている、そのような存在感が出るのです」と説明。

続けて、「『せかいのおきく』の撮影が終わったら、次の作品では昭和初期の屋形船として加工してリユースしています。本作のように、3Rを徹底して映画の世界観を作り上げることができたのは初めてのことです。今あるものをリユースしていく取り組みは、映画の現場としても目指すべき姿です。この作品をきっかけに伝えていくことも大切だと思っています」と語る。

衣裳も全てリユースされており、池松演じる矢亮の衣裳の生地は明治時代のもの、そのほかは昭和初期の生地をリユースし、仕立て直している。そして、撮影で使用した美術セットや衣裳は全て捨てることなく撮影所に残し、また次の作品で活用してもらえるよう保管しているという。

せかいのおきく」は4月28日から公開。

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