ペネロペ・クルスが天才監督役、ちょっと変わった“映画の舞台裏”を描く「コンペティション」監督が演出の意図を解説
2023年3月16日 17:00
ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラスが共演し、映画業界の舞台裏を描く「コンペティション」が、3月17日から公開される。マリアノ・コーン監督とともに本作のメガホンをとったガストン・ドゥプラット監督が、本作のアイデアや豪華キャストの印象などを語った。
「ル・コルビュジエの家」「笑う故郷」などのドゥプラットとコーンが監督を務めた本作は、知られざる映画製作の過程を臨場感あふれる手法で描いたドラマ。大富豪の起業家は自身のイメージアップを図るため、一流の映画監督と俳優を起用した傑作映画を制作しようと思いつく。そこで変わり者の天才監督ローラ(クルス)と世界的スターのフェリックス(バンデラス)、老練な舞台俳優イバン(オスカル・マルティネス)という3人が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。しかし、奇想天外な演出論を振りかざす監督と独自の演技法を貫こうとする俳優たちは激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へ展開していく。
監督たちの過去作を見たクルスとバンデラスが出演を切望し、企画がスタートした。ドゥプラット監督は、本作のアイデアについて「映画撮影の過程が描かれた作品は過去にいくつもありましたから、私たちには興味がなかったのです。一方で、俳優たちがどうやって感情表現をするのか、どういうツールやメソッドを使って役作りをしているのかということにフォーカスした映画はこれまでなかったと思うので、作ってみようと思いました」と明かす。
キャストについては「全く違うタイプの3人の役者が揃いました。異なる技術を持った俳優たちが、各々の方法でシーンをどう調理していくのか、どうやって感情表現を極めていくのか、彼らが自身の役を作り上げていく様子を間近で見るのは本当に楽しいものでした。映画の中でも同様のことが描かれていますが、実際に3人による演技のマスタークラスを受けているみたいでした」と、撮影を通して学びがあったそう。
過去作にも通ずる特徴として、長回しで撮影されるシュールな会話劇に、変わった演出や特殊効果が挟まれるというものがあり、本作でも突然ダンスが始まったり、鏡やカメラ、マイクといった小道具を使ったりと、次々とアクセントが登場する。その突飛な技あり演出に関しては「リハーサルを行う場所というのは、閉ざされた一つの単なる空間です。それにより、視覚的な魅力が失われることだけは避けたいと思ったので、飽きさせない背景を作ることにしました。単なるリハーサルルームでありながら、そのシーンを印象付けるような力のある空間を作ろうと思ったのです」と意図を説明する。
また、過去作との共通点として、映画に登場する建築にもこだわりがあり、「私たちの映画では、撮影する建築や建物に細心の注意を払っています。本作でもプロデューサーが頑張ってくれたおかげで、建築家のルートビヒ・ミース・ファン・デル・ローエの作品や空間を使用できる許可をもらうことができました。場所や建物というのは、ただの背景ではなく、ドラマを作り出す大事なもう1人の役者であり、ただのデザインという存在ではないのです。今回のだだっ広く冷たいイメージを持つ空間は、キャラクターをちっぽけに映し出し、孤立無援な感じを引き出す大きな役割を果たしています」と解説した。
「コンペティション」は3月17日から公開。