【第73回ベルリン国際映画祭】金熊賞は仏・日共同制作のニコラ・フィリベールによるドキュメンタリー、「すずめの戸締まり」は受賞逃す
2023年2月26日 10:50

第73回ベルリン国際映画祭の閉幕セレモニーが開催され、金熊賞が、仏・日共同制作のニコラ・フィリベールによるドキュメンタリー、「On the Adamant」に授与された。昨年のベネチア映画祭に続いて、ドキュメンタリーが最高賞を制覇した。新海誠監督のアニメーション、「すずめの戸締まり」は惜しくも賞を逃した。
授賞式でフィリベール監督は驚きを隠せない様子で壇上にあがり、審査員に向かって、「正気ですか?」と一言漏らした後にスピーチをし、「わたしはどんな区別をするのも嫌いです。ドキュメンタリーも映画です。そしてわたしたちはこの映画を撮るときに、ケアする側とされる側というようにはまったく考えませんでした。もしもケアされる人々に共感できないとしたら、それはなぜなのか、この映画を観ながら考えて欲しい」と語った。
本作は、無料のデイケアセンターとして使用されている、パリのセーヌに浮かぶ船、アダマン号を舞台に、そこを訪れる精神疾患を抱えた人々と、彼らをケアする人々の交流を見つめる。フィリベール監督ならではの、辛抱強く被写体に寄り添う眼差しが、彼らの感情の機微を掬いとる。今年のベルリンは、ウクライナやイランの問題においてとくに連帯が訴えられたが、本作もまた、人々の連帯、ヒューマニティを優しく語りかける作品だ。審査員長のクリステン・スチュワートは、「人間にとって、感情表現がいかに欠かせないものかということを、映画的にとらえた作品。巨匠の手さばきでおおらかに構築され、とても心を動かされた」と、評価した。
審査員グランプリは、クリスティアン・ペッツォルトが、スランプに陥った自己中心的な作家の目覚めを繊細に描いた「Afire」が受賞。監督賞は、フィリップ・ガレルが自身の家族を配役して描いた家族の物語「Le Grand Chariot」に、脚本賞は前作で同映画祭の監督賞を受賞しているアンゲラ・シャーネレクの「Music」に授与された。もっとも2作とも批評家の星取りでは、評価が低かった。一方、星取りで人気の高かった、韓国出身のセリーヌ・ソンによるアメリカ映画、「Past Lives」は無冠に終わった。

授賞式中もっとも感動的なシーンは、初めての映画出演で、ノンバイナリーの子どもを演じた「20,000 Species of Bees」のソフィア・オテロの俳優賞受賞だろう。撮影当時9歳の彼女は、驚くほど自然体でありながら、困難な環境に直面する苦しみを表現している。スチュワートは、「映画は監督のメディアですが、俳優の演技の知性が映画に驚くほどの貢献をもたらします。とくにそれが子どもの場合はなおさらです」と賛辞を送った。オテロは涙を流しながら、「信じられない。素晴らしい賞をありがとうございます」と語った。
助演俳優賞には、スチュワートが「その演技に頭をふっとばれた」と評した、「Till the End of the Night」でトランスのキャラクターを演じたテア・エレがさらった。審査員賞はポルトガルのホアオ・カニージョが家族の葛藤を描いた「Bad Living」に授与された。

今年のコンペティションはアメリカ勢が少なく、ドイツ、フランス、スペインなどヨーロピアンな作品が目立ったが、受賞結果もそれを反映した形となった。
3年ぶりに通常開催に戻った今回は、チケットがソールドアウトになったものが少なからずあり、地元の人々も待ちわびていたことを感じさせるものだった。(佐藤久理子)

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