【インタビュー】「First Love 初恋」八木莉可子×木戸大聖、満島ひかり&佐藤健の支えに感謝 救われた言葉も

2022年12月11日 12:00


(左から)八木莉可子、木戸大聖
(左から)八木莉可子、木戸大聖

満島ひかり佐藤健を主演に迎え、宇多田ヒカルが1999年に発表した「First Love」、その19年後に発表された「初恋」の2曲にインスパイアされる形で生まれたドラマ「First Love 初恋」の配信がNetflixで始まった。

運命に翻弄されながら90年代後半、2000年代、そして現代を生きる男女の姿を描く本作で、主人公の也英と晴道の若かりし頃を演じているのが八木莉可子木戸大聖だ。出会い、恋に落ち、互いをかけがえのない存在として大切に思いつつ、残酷な運命に引き裂かれていく――そのさまを瑞々しく演じている。満島ひかり佐藤健という、多くの若き役者が“憧れ”の存在として挙げる実力派俳優と同じ役柄を演じた2人に、そのかけがえのない経験について話を聞いた(取材・文・写真/黒豆直樹)。

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――お2人ともオーディションを経て、也英役、晴道役を演じることになったそうですが、オーディションで印象に残っていることはありますか?

八木:私はオーディションを受けに行って、マネージャーさんと一緒にタクシーで帰っている途中で「戻ってください」という連絡があったんです。もう1回、お芝居をすることになるのかと思って、急いで台本を見直しながら「ヤバイ! ヤバイ!」と思っていたら、「決まりました」と言っていただけました。

オーディションでは宇多田ヒカルさんについて聞かれたんですけれど、私は仕事で初めて受けたオーディションの課題曲が宇多田ヒカルさんの「traveling」だったんです。その話をしたら「じゃあ、歌えますか?」と聞かれて、その場で歌いました(笑)。まさか歌うとは思ってなかったので、すごく緊張して声が震えたのを覚えています。

也英役に決まって、監督から言っていただいたのは「行儀良くしている中に、(満島)ひかりちゃんに通じる野性的なところが見えた」ということでした。ポジティブな意味で言ってくださって嬉しかったんですけれど「行儀良くしている」ように見えていたのかって思いました。バレてるなぁって(笑)。

木戸:いまの莉可子ちゃんの話と通じるんですけれど、僕が最初のオーディションを受けた頃、ちょうど「おとうさんといっしょ」という子ども番組で“おにいさん”をやらせていただいていたんです。その話をしたら「じゃあ、番組の歌を歌って」と言われて、「なぜ歌を…?」とびっくりしながら全力で歌って踊りました(笑)。

オーディションの前にドラマ全体のプロットをいただいていたんですが、僕は若い頃の、(大人になってからの)先に何が起こるかを知らない晴道を演じるので、マネージャーさんとも相談した上で、あえてプロットを読まずに行ったんです。

それを伝えたら「え? 読んでないんだ……」と言われまして(苦笑)、「マズかったなぁ」と思ったんですが、最終的に晴道をやらせていただくことになり、現場に入る前に監督からお手紙をいただいて、そこに「プロットを読まずに来たあなたはその時点で晴道でした」と書かれていました。

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――どのように役を作り上げていったんでしょうか? 佐藤健さん、満島ひかりさんが演じる役柄の若い頃という点で意識したことはありますか? 佐藤さん、満島さんにアドバイスをもらったりしたんでしょうか。

八木:私自身、経験が豊富ではないので“役作り”というものに関しても、どうしたらいいのか漠然としているところがあって、最初はとにかく台本を読み込んでいました。

也英はエビが好きという設定ですけど、私はエビがちょっと苦手で(笑)。「エビかぁ……」と思いつつ、也英が好きだと思って食べてみたら、おいしく感じるようになったり(笑)。そんな感じで、役作りがわからないまま、自分を役に寄せていくしかないなと思い、母の運転する車に乗るとき、助手席に座るようにして、外を見て「あ、あの角にいま、晴道が立ってる!」って想像してみたり。がむしゃらに自分の生活に也英を落とし込むようにしていました。

ひかりさんが出られた作品はたくさん見ましたし、ひかりさんとお話をさせていただけたのもすごく勉強になりました。也英について感じていることを話したり、ワークショップまで開いていただいて、ひかりさんがどんな風に役に向き合っているかも学ばせていただきました。

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――今回の経験を通して、満島さんはどのような存在になりましたか?

八木:最初は「偉大な大先輩」「お話しするのも恐れ多い」という感じで見ていたんですけれど、すごくフランクにお話してくださって、プレゼントをくださったりもして。久しぶりにお会いしたら「莉可子ちゃんに渡したいものがたくさんあって」と食器やコップなどのほか、亀の子たわしまでいただきました(笑)。お会いするとすごくホッとするんですよね。おこがましいですが、自分にとって道標のような方だと勝手に思っています。

木戸:僕もずっと健さんをテレビで見ていましたし、とにかくカッコいいし、オーラがあって、あの健さんと同じ人物をちゃんと演じられるんだろうか? という不安はずっと……撮り終わったいまもあります。

健さんが演じる役って、ときどきすごくかわいいんですよね。晴道もどんなことにも真っ直ぐなバカで(笑)、かわいいキャラクターで、特に酸いも甘いもわかっていない若い頃を演じるということで、その部分は強く出していきたいなと思っていました。完成した作品を見てすごく感じたんですけれど、健さんもひかりさんも、“大人が初恋”をしているあのピュアさ、かわいさがあって、大人の2人に「かわいい」って思えるってすごいなと思いました。

撮影の序盤で僕がすごく悩んで、どうしていいかわからなくなってしまったことがあって、そうやって頭で考え過ぎている時点で、(感覚で動く)晴道から遠ざかっていたんですよね。その時、健さんとひかりさんに相談させていただいて、健さんはご自身がお世話になっている演技のトレーナーさんを紹介してくださったりもしました。

直接お話した時に、それまでに撮影された映像を見てお2人が「いいよ。全然、大丈夫」と声をかけてくださって、救われました。健さんは「俺もわかんねぇから」とおっしゃっていて(笑)、それを聞いて「あぁ、これだけの俳優さんでもそうなんだ。いま、こうやって悩んでいるのは間違いじゃないんだ」と思えました。

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――お話を聞いていると、大人になった晴道が、そうと知らずに也英の息子の綴(荒木飛羽)と仲良くなり、アドバイスをしたり、背中を押したりしますが、その関係のような……。

木戸:そんな感じだったかもしれません。いま、そう言われて初めて気づきましたけど、確かに。親子でもないし、兄弟でもないけど、相談させてもらえるすごく頼りになる存在の方でした。

――第1話の雪の中で抱き合うシーンをはじめ、キスシーン、デートなど、各話で印象的な2人でのシーンがありますが、お2人が印象に残っているシーンや演じるのが恥ずかしかったシーンなどはありますか?

木戸:ジャンルごとにいろいろありますね。「大変だったシーン」とか「恥ずかしいシーン」とか(笑)。

八木:恥ずかしかったのは、キスシーンが2回あったんですが、2回目のほうを先に撮ったんです。でも、私がものすごく緊張してしまって、撮影前に大聖くんと全然、目を合わせられなくて。それを大聖くんが心配して監督にも相談して……(苦笑)。

木戸:その前日の撮影が、也英が過去を打ち明ける大事なシーンで、その翌日がキスシーンだったんですね。ホテルから出発するロケバスで(八木の表情が)硬い感じで「え? 何かしちゃったかな?」とか変な方向に考えてしまって、監督やプロデューサーに「僕、何かしましたっけ? 莉可子ちゃん、大丈夫ですか?」と聞いたら、「大事なシーンで緊張しているんだよ」と。そこは僕が最初からわかっていないといけないところだなぁ…ごめんなさいって(苦笑)。

八木:その話を撮影後に全て聞いて「本当にごめんね。そっけない態度になっちゃって」ってLINEしました(笑)。それは恥ずかしかったこととして、よく覚えていますね(苦笑)。

木戸:僕が印象に残っているのは也英と晴道が言い合いをするシーンです。若い頃の2人があそこまでの言い合いをすることってなくて、それまではずっとラブラブでいた中で、あのシーンがあって。もともと、雨ありきで想定されていたシーンではなかったんですけど、雨が降ってきちゃって、その中でお互いの思いをぶつけ合ったんですけど、全9話の中でもすごく大きな転換点でもあり、撮影の状況も含めてすごく印象的でした。

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――改めて、お互いについてどんな印象をお持ちですか?

八木:大聖くんのほうが5歳年上なんですけれど、同級生を演じるということで、タメ口で話しかけたほうがいいのか? でも先輩だしとかいろいろ考えて、最初は距離があったんです。でも、すごく優しく接してくれて「同い年の役なんだから、気にせずに話してね」と言ってくれて、カメラが回ってないところでも「晴道」「也英」って呼ぶようにさせてもらいました。

大聖くんが晴道でよかったということは、撮影中に何回も思ったし、本人にも大事なシーンのたびに言っていました(笑)。

木戸:ありがとう(笑)。莉可子ちゃんの存在自体が“天然物”というか、何か取り繕ったりすることなく、自然体で僕と接してくれて、それが「野口也英」そのものでしたね。莉可子ちゃんと会話することが、僕が役になっていく中で、晴道が也英と話をする時間になっていたなと思います。

――大人になってからの姿も含めて、晴道と也英の人生にどんなことを感じますか? 若いお2人の目線から、本作の魅力について教えてください。

木戸:やっぱり、人が恋に落ちたとき――「この人、好きだな」と思ったときの、その人への反応みたいなものって“時代”とかがコントロールできたりするものじゃないんだなと思いました。

いまならスマホで簡単に連絡が取れるけど、昔はその都度、手紙を書かなくちゃいけないとか、そういう変化やツールの進化はあるかもしれないけれど、人間としての反応という部分は90年代も、それ以前も現代も、そして未来も変わらないものなんだと思うし、だからこそ、どの世代の人が見ても「あぁ、こういう反応しちゃうよね」「自分もこうだった」とかそれぞれの初恋の思い出と重ねて見られるんじゃないかなと思います。

八木:ピュアなラブストーリーが描かれていて、でも単に「2人がくっつきました」というだけでなく、紆余曲折があって、キレイなだけじゃない感情も描かれていて、別の人と出会ったり、いろんなことがあって……。でも、全てを通して見たら、そういう部分も含め、すごくキレイで愛おしく思える作品になっているなと思います。

私は、この作品を見た後に、ふと一歩外に出てみたら、世界の解像度が変わって、彩度も上がって温かい世界になったように見えて、いろんなことを肯定的に受け止められるようになった気がしました。

――宇多田ヒカルさんの楽曲にインスピレーションを受けて誕生した本作ですが、劇中でも90年代の終わりに宇多田ヒカルさんがデビューした際の衝撃が描かれています。お2人が10代の頃に、その登場に衝撃を受けたり、「自分たちの世代だ!」と感じた存在は?

八木:私が10代の頃に象徴的な存在と感じたのは「ボカロ」ですかね? たぶん、私が小学生くらいの頃に出てきて、中学生くらいの頃にはみんな、好きだったと思います。

最初は「アニソンなんでしょ?」みたいに思ってたんですけど、「いや、アニソンじゃないらしい」「人間の声じゃない」といった声とともにだんだん、みんなハマっていったんです。「踊ってみた」とかで実際、学校でクラスのみんなで踊ったりしたこともあります。あのボカロという、新しい存在が出てきたというのが、自分たちの世代を象徴するものだなって感じます。

木戸:僕は学生時代にバスケをやっていたんですが、当時、高校の大会で八村塁選手がコートにいて、自分も観客席で見ていたんですけれど、あの時点で明らかに一人だけ規格外の存在でした。

その人がいま、NBAという世界No.1のリーグにいて、そこでトップを争う活躍をしている。いま思うと「あの時、八村選手を見られたってすごいことだったんだな」と感じますし、自分たちの世代を代表するような存在だなと感じますね。

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