阪本順治監督新作「せかいのおきく」23年4月28日公開 主演は黒木華「今の時代に繋がる尊さがある」
2022年12月5日 05:00

名匠・阪本順治監督が自身のオリジナル脚本を映画化し、黒木華が主演を務める「せかいのおきく」が、2023年4月28日から公開することがわかった。人と人のぬくもり、そして命の巡りを鮮烈なモノクロ映像で描き、寛一郎、池松壮亮が共演する。
舞台は江戸末期。寺子屋で子どもたちに読み書きを教えている主人公・おきく(黒木)は、ある雨の日、厠(寺所有の公衆便所)のひさしの下で、雨宿りをしていた紙屑拾いの中次(寛一郎)と、下肥買い(しもごえがい)の矢亮(池松)と出会う。
武家育ちでありながら今は貧乏長屋で質素な生活を送るおきくと、古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事につく中次と矢亮。侘しく辛い人生を懸命に生きる3人はやがて心を通わせていくが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ、声を失ってしまう。

本作について、黒木は「『せかいのおきく』、この題名に込められた阪本監督の想いが、より多くの方に伝わるよう、おきくを演じられていたらと思います。今の時代に繋がる尊さがある作品になっていると思いますので、沢山の方に見ていただけると嬉しいです」と話す。
舞台となる江戸時代では、現代では捨ててしまうようなものを買い取り再利用する商人が多く存在し、池松が演じる矢亮の商売である「下肥買い」はその代表例だ。長屋にある共同の厠に溜まった大量の糞尿を買い取り、農村に肥料として売却された。その肥料が人間にとって不可欠な食料を生み出すという、江戸時代の循環型社会を企画の背景に用いたことについて、美術監督であり、本作の企画プロデューサーを務める原田満生は「江戸時代は資源が限られていたからこそ、使えるものは何でも使い切り、土に戻そうという文化が浸透していた。人間も死んだら土に戻って自然に帰り、自然の肥料になる。人生の物語もまた、肥料となる。自然も人も死んで活かされ、生きる。この映画に込めた想いが、観た人たちの肥料になることを願っている」と語っている。

全編が主に京都撮影所(東映・松竹)で撮影され、あわせて場面写真が披露された。「せかいのおきく」は23年4月28日から公開。阪本監督、黒木、寛一郎、池松のコメントは以下の通り。
気候変動による災害、戦争を終わらせられない指導者たち、真っ先に死んでゆくのは、なんら世界経済の恩恵を受けない階級層。消費されるのは、モノだけではなく、“ひと”だ。
本作は、江戸時代における食のサイクルを基軸として、没落した武家の娘と、糞尿の処理に携わる賤民たちを主人公に、低い視座から社会を眺めるだけではなく、“汚い”ところから世界をえがこうとする意欲作。しかも軽妙に、しかし美しく、だ。名付けて、糞ったれ青春時代劇!
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