稲垣吾郎、「窓辺にて」の役柄は素の自分 今泉力哉監督に「心の中を見透かされているよう」
2022年10月26日 14:17
フリーライターの市川茂巳(稲垣)は、編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が若手作家と浮気していることに気づいていたが、それを妻に言い出せず、自身の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。そんなある日、文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)が書いた小説の内容に惹かれ、主人公にモデルがいるのなら会わせてほしいと伝える。
今泉監督とは2018年の同映画祭で知り合ったといい、稲垣は「監督の映画のファンだったので、お会いできて嬉しかったです。その後に雑誌の取材で対談をしました。その時に監督のなかではすでにこのお話があったそうです」と本作の道のりを紹介。
今泉監督は「実はそのときにプロデューサーから稲垣さんと映画を作る企画をいただいている状態でした。稲垣さんはそれをまだ知らないので、対談中に稲垣さんが『もし僕で映画を作るならどんな内容でどんな企画になりますか』っておっしゃっていたのですが、こっちは今考えているときだったので、なんてごまかそうというのが最初でした」と告白。
劇中の「理解しても裏切られる」というセリフについて聞かれた今泉監督は「稲垣さんは、自分の想像できないような信頼とか期待を背負っていた方なので、現場で芝居を見ていて稲垣さんの人生も役にのっかっている感じがしました。言葉に重みがあって、そういうシーンはいくつもあったような気がします」と振り返る。
それを受けて、稲垣は「監督がそういう風に今までの僕の経験を照らし合わせて見てくれていたのはわからなかったですが、すごく理解はできるなと思いました。もし結婚していて、妻にそんなことがあったとしたら、ショックはショックでしょうけれど、その場でうまく感情表現ができないというか。このくらい怒らないといけない、落ち込まないといけないっていう一つの線みたいなものがあって、そこに達していないといけないと思ってしまうとか、主人公のような気持になるのかなと思います」と自己分析をする。
また、観客から役作りについて聞かれた稲垣は「これまでここまで役作りしない役ってないんじゃないかなってくらい、僕が言いそうな言葉や思っていることを監督が見透かしているかのようでした。あてがきってパブリックイメージにあてて書くことがあると思いますが、そういうのではなくて、本当に僕の素というか。心の中を見透かされているようで不思議だった」と明かす。さらに、「今泉監督の作品は、俳優さんたちが自然に演技しています。今泉組のお芝居のスタイルに自分をチューニングしていく形で合わせていったことは、俳優として最高の体験でした」と充実した撮影の様子を語った。
「窓辺にて」は11月4日より公開。第35回東京国際映画祭では、コンペティション部門に出品されている。同映画祭は11月2日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。