【劇場版「ワンピース」ネタバレありインタビュー】「ONE PIECE FILM RED」ウタ役・名塚佳織は“結末”とどう向きあったのか

2022年8月26日 19:00


ヒロインのウタ役を務めた名塚佳織(歌唱はAdoが担当)
ヒロインのウタ役を務めた名塚佳織(歌唱はAdoが担当)

ONE PIECE』の劇場版最新作『ONE PIECE FILM RED』が、公開から20日間で興行収入100億円突破という快挙を達成した。公開直後から盛り上がり続け、勢いが加速するなか、このほどヒロインのウタを演じた名塚佳織のネタバレインタビューを掲載! 取材を行ったのは、8月6日の公開初日。舞台挨拶を終えたばかりの名塚に、ウタとシャンクスの関係、そして物語の結末をどう受け止めたのか、その思いを存分に語ってもらった。(取材・文・写真/編集部)

※本インタビューは物語の結末に触れている「完全ネタバレインタビュー」です


■初日舞台挨拶であふれた涙の意味

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――名塚さんの出演が発表されたのは6月8日の新情報発表特番(https://eiga.com/news/20220608/19/)でした。同番組では「今でも嘘のような、まだ信じられない感じがする」とおっしゃっていましたが、無事公開を迎えて実感はわきましたか?

先ほど初日舞台挨拶をさせていただきましたが、その直前まで、やっぱりどこか自分のことじゃないような不思議な感覚でした。ですが、舞台に上がってお客様の顔を見た時に初めて実感したと言いますか……すごくほっとしました。ある意味、ここに来るまでが自分の仕事だったといいますか。無事に今日を迎えて、皆さんに見ていただく、そして楽しんでいただくことが目標だったので、まずはほっとして。ほっとしたら、舞台挨拶で涙があふれてしまいました。無事に今日を迎えられてよかったという気持ちでいっぱいです。

シャンクスの娘であり、世界も最も愛されている歌手・ウタ
シャンクスの娘であり、世界も最も愛されている歌手・ウタ

――ウタの父であるシャンクス役の池田秀一さん、そしてルフィ役の田中真弓さんに温かい言葉を送られて、素敵な初日舞台挨拶でした(初日舞台挨拶の模様はコチラ/https://eiga.com/news/20220806/8/)。おふたりのねぎらいの言葉、名塚さんの感極まった様子から、相当なプレッシャーのなかでウタを演じていらしたのかなと感じました。

そうですね、今思えばプレッシャーはあったのだと思います。でも実は、やってる最中はプレッシャーを感じる余裕すらありませんでした。周りの方には「出演おめでとう」「すごいね」「プレッシャーだよね」と声をかけていただきましたが、自分の中ではそれを考えている余裕すらなくて。とにかくウタのことを考えて、作品が面白くなるように、素敵になるようにしなきゃいけないということだけだったので、緊張することも「どうしよう」と思うこともありませんでした。

でも今日を迎えて、いろいろ振り返ってみると、緊張やプレッシャーがあったんだろうなと改めて思います。だからあんなに必死になっていたんだと思います。

――プレッシャーを感じる余裕もない状況だったんですね。オーディションでウタ役に決まったそうですが、出演決定直後からそういった状態だったのでしょうか?

もちろん、まずは出演できることがうれしかったです。でもその直後には、やらなきゃいけない作業がたくさんありました。Adoさんの歌を聴き込んで、監督たちにいただいた設定を頭に叩き込んで、収録日までにウタが歩んできた人生を自分の中に落とし込まなきゃいけないと思ったので。ウタ役に決まった瞬間から、ウタの人生について考える日々でした。


■ウタの歌唱はAdoが担当 歌とセリフを“つなげる”苦労とは?

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――ウタ役は歌唱とボイスキャストが別ということも、演じるうえで大きなポイントになったかと思います。歌唱を担当されたAdoさんの歌は事前に聞かれていたとうかがいました。

収録の前にデータをいただいて、全部の曲を聴いてから収録に入りました。

――特番のなかで田中真弓さんが「歌が終わった後にセリフに入る時、あまりに違和感がなくてすごいと思った」とお話しされていましたが、歌からセリフに切り替わるシーンの収録はいかがでしたか?

簡単ではなかったなという印象です(笑)。例えばミュージカルのように、セリフからつながって歌になっていくような作り方だったら、スムーズに演じられたかもしれませんが、ウタが歌う楽曲はミュージカルとはまったく違います。

――主題歌を担当された中田ヤスタカさんをはじめ、7組ものアーティストが参加されていますから、全ての曲がまったく異なるカラーですよね。

そうですね、そういう意味でもセリフとのつなぎ目は難しかったです。また、今作はライブというシチュエーションで物語がスタートするので、日常会話として話すわけではなく「ライブパフォーマンスとしてのトーク」もたくさんありました。

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ライブシーンでは、例えばルフィと一対一でしゃべっている時とは違うテンション感なんです。オーディエンスに向かって「次の曲聞いてね」と呼びかけて歌に入っていくとか、歌った後に「みんなありがとう」と声をかけるとか。ライブのイメージも意識しながらつなげなきゃいけない部分、日常会話から歌につながる部分など、いろんなパターンのつなぎ目がありました。そういった意味でも難しかったです。


■父としてのシャンクスは「かわいい」

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――映画が公開された今、改めてシャンクスとウタの関係性をどのようにとらえていますか?

ウタからするとシャンクスは本当にかっこいいお父さん。ウタはお父さんの事が大好きなんだろうなと感じます。私も自分の父親のことが大好きで、すごく尊敬していますし、シャンクスと同じように「ちょっとかわいいな」と感じるところもあります。

――シャンクスがかわいいという感覚は新鮮です。

シャンクスに対して「かわいいな」と感じるのは、ウタだからこその見方なのかもしれません。シャンクスといえば、やっぱり「かっこいい」が先にくると思いますが、ウタとして見るとかわいいの方が先にきます。ウタの中ではかっこいいのは当たり前なんです(笑)。かっこいいのが大前提にあったうえで、実はチャーミングなところがあったり、駄目なところもあったり、女心が分かってないなと感じることもある。でもそこも魅力だと思います。

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――今作で「シャンクスのかわいさ」を感じたシーンはありましたか?

ウタとの最初の出会いの場面で、ウタが泣きだして、どうしていいかわからなくてワタワタしているところです(笑)。すっとスムーズに抱き上げたりできない感じがシャンクスらしかったです。でも愛情をいっぱい注いでくれてる感じもあって、素敵なシーンでした。


■ウタとシャンクス“親子のクライマックス”について 池田秀一とのアフレコ舞台裏

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――ウタとシャンクスの登場シーンで、特に印象深かった場面はどこですか?

やっぱりシャンクスがウタを抱きしめているシーンですね。シャンクスが自分の腕の中に優しく包んでくれる姿が素敵で、そこでウタが言う「会いたかったけど、会いたくなかった」という言葉がすごく好きでした。優しさに包まれているのに、ちょっと意地を張っているようなウタの姿に、彼女の幼さが出ていたような気がします。

――クライマックスのシーンですね。あのシーンの収録はシャンクス役の池田秀一さんとご一緒にされたのでしょうか?

一緒に録りました。あのシーンはもちろん、映画全編を通してシャンクスの声には池田さんの優しさがにじみでているように感じました。優しさを真っすぐに感じとれるセリフだけでなく、照れ隠しのように、そっけない雰囲気で言うセリフにも優しさがあるんです。シャンクスは(ウタの)目をまっすぐに見て(言葉を)かける時とそうじゃない時があると言いますか。そのちょっとした違いを声で表現されているのもすごいなと思いました。

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――ワンピースの作中ではシャンクスが圧倒的な存在感を放っていますが、池田さんは現場ではどのような存在でしたか?

すごくお茶目な方なんです。ご一緒させていただくのは初めてでしたが、収録はもちろん、取材やイベントでもお話させていただきましたが、池田さんご自身もシャンクスのようにかわいらしい、チャーミングな方でした。

池田さんは、「うれしい」「つらい」といった感情をあまり表面に出されないと言いますか、常に一定のテンションでいらっしゃるんです。でも、よく話を聞いていると、表情から「今すごくうれしいんだな」と伝わってくるんです。

そういった抑えた表現のなかに厚みのあるような池田さんのお人柄が、シャンクスのお芝居にも乗っているように感じました。だからこそ、作中でもシャンクスの存在感がにじみ出てくるのかもしれません。控えめな中に、池田さんの思いの強さのようなものが乗っかっていたように感じました。


■物語の結末を知った時――どこに向かって走り出したのか

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――先ほどシャンクスとウタのラストシーンの話が出ましたが、物語の結末を最初に知った時はどのようなお気持ちだったのでしょうか?

台本をいただくまでは何も聞いてなくて、台本をいただいた時点で初めて物語の結末を知りました。初めて台本を読んだ時は、皆さんが映画を見た時と同じであろう感覚と言いますか、あのラストは「まさか」でした。「ここに行き着くのか」と驚いて、ものすごく衝撃をうけました。

――ウタの結末を知ったうえで演じるのは、切なさもあったのでは?

そうですね……ただ、エンディングをわかった状態でスタートをきってはいけないんです。ウタは、最初から“覚悟”は決めていましたが、破壊願望があったわけではなく「みんなを幸せな空間に居続けさせてあげたい」「みんなが楽しく、幸せに過ごせる世界を構築してあげたい」という気持ちが強かっただけなんです。だから演じるうえでも絶対に“死”に向かっていけないと思っていました。

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監督からも「ウタは死にたいわけではないので、そこに向かって走りださないでください」と言われました。だから、ラストのことを考えず「とにかくみんなが楽しい世界。みんなが幸せになれる世界を私が作るんだ」という気持ちで演じはじめました。

――物語の幕開けのライブシーン、ウタからはたくさんの希望を感じましたが、その裏には作り手の皆さんのそういった思いがあったんですね。

そうですね。「みんなと一緒に生きて行くんだ」という気持ちを強く持って、ウタとして「ONE PIECE FILM RED」のスタートを切りました。スタッフやキャストの想いがみなさんにも届くとうれしいです。

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