映画賞大賞受賞者8割が男性 深田晃司監督らジェンダーバランスの是正訴える「審査員も含め表現の当事者が多様であることが民主主義の根幹」
2022年8月24日 20:30

「表現の現場調査団」による「ジェンダーバランス白書2022」の発表記者会見が、8月24日に厚生労働省で行われた。美術、文芸、演劇、映画、教育という分野から代表者が各分野について調査結果を発表。映画分野では深田晃司監督が出席し、芸術分野における男女不均衡の是正を訴えた。
「表現の現場調査団」は、表現の現場におけるさまざまな不平等を解消し、ハラスメントのない、真に自由な表現の場を作ることを目指し、2020年11月に表現に携わる有志14名によって設立された。現在5年間の継続を前提に、調査活動、発信、提言などに取り組み、2020年度には実態調査に基づいた「ハラスメント白書2021」を発表。ハラスメントの一因として、ジェンダーバランスの不均衡がある。各分野における活躍の登竜門となる賞を審査する側と受賞する側のジェンダーバランスの不均衡や、あるいは各機関やイベントでの選定や評価をする側とそれを受ける側のジェンダーバランスの不均衡など、権力勾配がある状況を実証するべく、今回の調査が行われた。
美術、デザイン、文芸、建築、音楽、写真、漫画、演劇、映画の9分野で行われた調査の結果、男性の審査員が占める割合は77.1%。大賞受賞者の中で男性が占める割合は65.8%。映画分野のみの結果では、審査員の74.3%(男性1万2160人、女性4180人)、大賞受賞者は84.2%(男性受賞者779人、女性受賞者180人)。なお、映画はどの分野よりも大賞受賞者の女性の割合が低いが、それは日本アカデミー賞をはじめとした商業映画を対象とした賞で顕著で、約4000人いる日本アカデミー会員のジェンダーバランスの悪さも結果に直結していると分析した。

映画分野は、2011年から2020年までの日本アカデミー賞、毎日映画コンクール、報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞、ブルーリボン賞、新藤兼人賞、日本映画監督協会新人賞、日本映画プロフェッショナル大賞、キネマ旬報ベストテン、映画芸術ベストテンワーストテン、ぴあフィルムフェスティバル、TAMA NEW WAVE、TAMA映画賞、東京国際映画祭、東京フィルメックス、山形国際ドキュメンタリー映画祭、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、イメージフォーラムフェスティバル、大阪アジアン映画祭の19団体を調査対象とした。
今回の調査結果について深田監督は、「新人や学生映画、低予算映画では女性が活躍しているが、商業映画になると少なくなる実情がある。若手が増えているとポジティブに捉えることもできるが、女性が出産後にキャリアを失っていく実情、女性がキャリアを継続しづらい状況がある」と説明し、映画業界の「労働環境の悪さが影響している」と指摘。また、製作費の大きい作品を任される女性が少ないのも一因だと述べた。
さらに、いくつかの映画祭、映画賞の特徴を挙げ「女性の審査員が多くなると、女性の受賞者も多くなるという傾向も感じられますが、大事なのは、女性だから女性を選ぶ、男性だから男性を選ぶということではない。自分も審査員の経験があるが、自分が男性だから、男性を選んだという意識もない。ただ、そこには無意識のバイアスが働くことがあり、あらゆる人間は自分自身の抱える属性や出身地、生まれ持った環境から完全に自由になることはできない。ということで、自分が性別を意識して選んでいることはない、とこの議論において主張することは意味がないと思う。審査員も含め表現の当事者が多様であることが民主主義の根幹であることを考えれば、まず当事者性を増やしていくことが直近の課題である」と主張した。

また、今回の調査を基にした、関係者への働きかけは「これから」とのこと。「action4cinema」の活動など、映画業界を変えるためのアプローチを行っている深田監督は「これはデータに過ぎないので、どう扱っていくか。現場の実態を把握していない映画会社の幹部の方などに向け、きちんと声として届けたい。外に開いた公共の財産として皆さんに使ってほしい」と結んだ。
会見には映画分野の深田監督、萩原氏のほか、美術分野のホンマエリ(アーティスト、アートユニット「キュンチョメ」)、文芸分野の小田原のどか(彫刻家、美術家、評論家)、演劇分野の森本ひかる(アクタートレーナー・ファシリテーター)、教育分野の田村かのこ(アートトランスレーター)、社会調査支援機構チキラボ代表の荻上チキ氏が登壇した。
「ジェンダーバランス白書2022」は「表現の現場調査団」公式HP(https://www.hyogen-genba.com/)で公開されている。
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