なぜ団地は大海原を漂流することになったのか “団地愛”が強すぎる石田祐康監督が明かす
2022年8月23日 14:00

スタジオコロリドの長編アニメーション映画第3弾「雨を告げる漂流団地」が、9月16日からNetflixにて全世界独占配信&全国公開される。本作のシンボルともいえる“団地”を登場させた理由について、石田祐康監督のこだわりが明らかになった。
小学6年生の熊谷航祐と兎内夏芽をはじめとする少年少女たちが、取り壊しが決まった思い出の“おばけ団地”ごと、突如として大海原に投げ出されるという不可解な現象に巻き込まれ、サバイバル生活を余儀なくされる“ひと夏の別れの旅”を描く。

34歳の若さで本作が長編映画第2作目となる石田監督。前作「ペンギン・ハイウェイ」では、主人公のアオヤマ君が住む郊外の街に突如としてペンギンが大量発生する物語を紡ぎ、本作でも団地が大海原を漂流するというファンタジックな世界観が描かれる。
石田監督は、制作に取り組み始めた時に「団地への興味が尽きなくなった」といい、それが高じてとうとう団地に引っ越したというほど“団地愛”が深い。作品の冒頭で夏芽が取り壊し寸前の団地から眺めている景色は、石田監督自身が見ている日常の景色が描かれているそうで、「それだけでも住んでいて良かったなと思いました」と制作当時のエピソードを明かしている。
本作に登場するガスのつまみから浴槽、重たい扉といった団地ならではの細かな描写から歴史を感じさせる汚れまで、団地に魅せられた石田監督のこだわりのもと制作されている。

日本でも団地をテーマにした作品は多く作られているが、本作ではなぜ大海原を漂流することになったのか。その理由について、石田監督は「団地自体は様々な映画で描かれたモチーフですけれど、団地が漂流するというのは聞いたことがないなと思って。船や空母といったかっこいいものが漂流するのはイメージできるのですが、あえて団地を漂流させるという、少し抜けている感じが気に入ってそのまま映画にしてしまいました」と説明している。
石田監督の「団地が大海原を漂流する」という一枚のイメージボードから走り出したという本作の企画だが、そこで繰り広げられるドラマは「初めての別れの旅」という切ないものだ。
本作の主人公のひとりである夏芽は、幼い頃に幼なじみの航祐や彼の祖父と過ごした団地をかけがえのないものとして大切に思っている。しかし、そんな夏芽の思いとは裏腹に団地は取り壊されていくことに。石田監督は「きっと誰にでもある大切な場所は往々にして他人にとっては他人事。でもだからこそ“自分だけの特別な体験”がそこにあったはず。そういう個人的な体験を他人に伝えるのは難しいことですが、そこから飛び出てくる熱量を前にすると、せめて自分だけでも信じてやれないものかとなって……」と制作当時の思いを語っている。
「雨を告げる漂流団地」は9月16日から全国で劇場公開。同日には、Netflixでの全世界独占配信も始まる。
(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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