「バブル」ヒロイン・ウタにだけ見える、より美しい世界とは? “色”へのこだわりと挑戦
2022年5月12日 17:00
テレビアニメ「進撃の巨人」シリーズ、「甲鉄城のカバネリ」の荒木哲郎監督とWIT STUDIOによる長編アニメーション「バブル」が、5月13日から劇場公開される。本作はヒロインである“ウタの目線”が重要なキーワードに。荒木監督らは、ウタが世界を見た時のフィルターがあることを明かしている。
物語の舞台は、世界に降り注いだ泡(バブル)で重力が壊れた東京。主人公・ヒビキは、幼い頃から特殊な聴覚を持つ少年で、ある“音”をずっと探し求めていたところ、ウタという言葉を知らない謎の少女と出会う。ヒビキが探していたその“音”はウタにも聞こえ、“音”に導かれて出会った2人は徐々に心を通わせていく。
本作は、荒木監督がスケッチブックに「近未来背景のにんぎょ姫が、海に沈んだ東京のビルの上に座っている姿」を描いたことから始まり、「にんぎょ姫」の物語から着想を経て作られていった。そして、脚本を手掛けた虚淵玄の手によって、“少女が恋をした末に泡になる”という「にんぎょ姫」の物語から、“ある少年に泡が恋して少女になる”というプロットを作り上げ物語を紡いでいったのだ。
泡から生まれ、ヒビキという王子さまのもとに突如として現れたウタ。ヒビキたちと同じ時を過ごすうちに言葉や感情を覚え、目の前に広がる壮大な世界を愛していくという、承認や見返りを求めず思いを全うする純粋な存在としてスクリーンで輝きを放っている。
虚淵と共に共同脚本として名を連ねる佐藤直子は「この物語はパルクールの爽快なアクションと、ウタというヒロインが見るこの世界が、いかに美しく尊いものなのかを感じてほしい」と語っており、ウタはヒビキだけでなく、この世界に恋をする存在として描かれていると話している。
その“ウタの目線”というのが重要な要素となっており、劇中では佐藤の発案でウタが世界を見た時のフィルターが用いられている。荒木監督は「佐藤直子さんがあるシーンで『ウタの見る光景は光に満ちていて、ウタはこんなにも世界を美しく見ていたのかとわかる』と書いてくれていて。それを演出方針として採用しました。具体的には“ウタ目線”もしくは“ウタの記憶”のカットには、専用のレンズ前フィルターを用いています。基本的には“シャボンの油膜越し”という説明ですが、四隅に微かなボケと色味を足していて、全体に明るさを上げる処理をしています」と詳細を説明。ウタから見る世界は色彩を上げ、より世界が美しく映える演出を加えており、ウタの目線で観客が本作の世界に没入する仕掛けが作られているのだ。
このように“色”にとことんこだわった本作。美しくかわいらしい明るくカラフルな映像を作るという荒木監督の挑戦により、劇中では空や海はもちろんのこと、木々や花々といった自然が色鮮やかに描かれており、普通のアニメーションの約3倍の労力をかけて「バブル」の世界を輝かせている。さらに、カラースクリプターという色の専門家を本作に招いてコーディネートをしてもらうなど、これまでにない試みを行った。
佐藤は「失ってしまった青春の一瞬のきらめきを表現したかった」と、この世界に生まれて恋をするウタの青春を描きたかったと語っており、一瞬一瞬の愛おしさやこの世界に生きることの豊かさを教えてくれる存在として描いているのだ。
「バブル」は、5月13日に劇場公開。劇場版に先行して、Netflix版が4月28日から配信されている。
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