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【「マイスモールランド」評論】川和田恵真監督と嵐莉菜。ニューカマーが日本に灯す“ささやかな希望”

2022年5月8日 10:00

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「マイスモールランド」
「マイスモールランド」
(C)2022「マイスモールランド」製作委員会

新たな才能たちの出会いにより誕生した本作を心から祝福したい。監督は、英国人の父と日本人の母を持つ川和田恵真是枝裕和監督作品などでの監督助手を経て、これが商業映画デビューとなる。日本では難民申請がほとんど認定されない(申請者数に対する認定率は1%未満)という悲しき現実を、新人ながら果敢に題材として選んだのは、自身が感じてきたであろう“生きづらさ”とも無関係ではないはず。

自ら脚本を書き、難民申請が不認定となり在留資格を失ったクルド人家族が直面する困難を、長女サーリャの視点から描く「マイスモールランド」。その主演に川和田監督が抜擢したのは、やはりマルチルーツを持つ嵐莉菜。2020年からモデルとして活躍中だが、映画は初出演にして初主演となる。

埼玉県の川口市や蕨市を中心に、トルコから逃れてきたクルド人約2000人が暮らし、その大半は難民申請中だという。監督はそうした在日クルド人たちへの取材をもとに、彼らが伝統や文化を守り助け合って生きる様子や、日本の社会に溶け込もうとしても“ガイジン”扱いされる疎外感、難民に対する入国管理局の非人道的で理不尽な処遇などを綴っていく。

本作が社会派ドラマでありながら瑞々しい魅力を獲得できたのは、嵐莉菜扮する17歳のサーリャが自身のアイデンティティに思い悩んだり、バイト仲間で同世代の聡太(「MOTHER マザー」の息子役が記憶に新しい奥平大兼)と少しずつ気持ちを寄せ合ったりといった、大勢が若い頃に体験するであろう普遍的な心模様を描写している点に負うところが大きい。青春映画として、また家族映画としても鑑賞可能な、多彩な輝きをつつましやかに放つ珠玉作なのだ。

サーリャの父は幼い息子に、自らの胸を指して「俺たちの国はここにある」と教える。その小さな故郷(スモールランド)は、今の世界から失われた代わりに、想像の力で「いつでも、どこにでもある」。同時に、本作が私たち観客の心に灯すのは、日本がまだ見ぬ理想郷、さまざまなルーツを持つ人々やマイノリティーが当たり前に“日本人”として共に暮らす、多様性と包摂が実現した社会という希望だ。

映画はそんな望ましい未来への道しるべを示すのではなく、問いかけを残して終わる。どうすればこの国は、この社会は変わるのか。観客それぞれが自問し、考えたことを語り継ぐなら、それがきっとより良い明日につながるのだと信じたい。

(高森郁哉)

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