蜷川実花監督による“異界”に誘われた神木隆之介&柴咲コウ 共鳴した「CLAMP」の哲学を語り合う
2022年4月30日 10:00

「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ。全ての出来事には意味がある」――。カリスマ的な人気を誇る創作集団「CLAMP」の漫画「xxxHOLiC」の世界観を形作る、こんな哲学がある。同作の刊行当時からのファンであり、「ヘルタースケルター」「人間失格 太宰治と3人の女たち」など圧倒的な映像美で知られる蜷川実花監督は、約10年をかけて構想を膨らませ、遂に初の実写映画化を実現させた。
実写映画「ホリック xxxHOLiC」(4月29日公開)でタッグを組むのは、神木隆之介と柴咲コウ。ふたりは、ドラマ「Dr.コトー診療所」(2003)以来、約19年ぶりの共演を果たした。原作漫画「xxxHOLiC」と蜷川監督、神木と柴咲――本作は、運命的な巡り合わせを経た企画のようだが、これもまた、「こんな作品が見たい」という誰かの“願い”の上で実現した必然ということなのだろうか。映画.comは神木と柴咲に、蜷川監督とのタッグ、絢爛豪華なセットや美術、「CLAMP」の世界観を貫く哲学などについて、話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)

人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が見える孤独な高校生・四月一日君尋(ワタヌキ・キミヒロ/神木)はある日、1羽の蝶に導かれ、対価と引き換えにどんな願いも叶えてくれる、妖しく美しい“ミセ”に迷い込む。“アヤカシ”が見える能力を消し去り普通の生活を送りたいという彼の願いを叶える対価として、“いちばん大切なもの”を差し出すよう囁く主・壱原侑子(イチハラ・ユウコ/柴咲)。同級生の百目鬼静(ドウメキ・シズカ/松村北斗)や九軒(クノギ)ひまわり(玉城ティナ)と日々を過ごし“大切なもの”を探す四月一日に、“アヤカシ”を操り、世界を闇に堕とそうとする女郎蜘蛛(吉岡里帆)とアカグモ(磯村勇斗)の魔の手が伸びる。

最初に互いの印象と、久々の共演を終えた感想について。ふたりは「時を超えた共演」に思いを馳せ、感慨深げに語り出す。


写真家としての蜷川監督とは仕事をしたことがあるが、監督作品への出演は初となった神木と柴咲。蜷川監督とは、どのようなコミュニケーションが交わされたのだろうか。

神木は、“アヤカシ”が見える能力に苦悩し、人の醜い部分を見ることに疲弊している四月一日を演じた。冒頭では、「もうこれ以上何も見たくない。死にたい理由は特にない。生きていたい理由は、もっとない」と呟くなど、どん底の精神状態にあり、原作よりも心の闇や過去の傷が強調されている。

四月一日は、自身の忌まわしい能力のせいで周囲に迷惑がかからないよう、人と関わることを避けて孤独でいようとする半面、誰よりも人とのつながりを求めている、複雑なキャラクター。神木は、「悲しさや寂しさを抱えながら、侑子さんや百目鬼、ひまわりと関わることで、徐々に表情を取り戻していくような、四月一日自身も知らないうちに変化している成長を表現したい、そんなふうに思って撮影に臨みました」とも述べている。

一方の柴咲は、自分のことを一切語らず、最後まで正体が明かされない“ミセ”の主・侑子を、その圧倒的なオーラで体現した。四月一日や“ミセ”に訪れた客に的確な助言を与える一方、願いを叶えるために支払う対価に関しては厳格な一面も。また、侑子には「同じ服は着ない」というこだわりがあり、全16種類もの一期一会の艶やかなスタイルを、ファッションショーのように披露している。


蜷川監督は、「柴咲さんには画面を征服する力があって、映るだけで説得力がある。当然のことながらお芝居も上手いけれど、侑子という役は、お芝居が上手いだけでは成立しない、彼女が本来持っている“何か”に助けてもらう役だったと思います」と絶賛。柴咲は、「美術の力、装飾の力、メイクと衣装の力がすさまじかった」と振り返る。

原作同様、侑子のセリフには人間の業を見つめ、世の道理を説く印象的なものが多い。柴咲が口にすることで、より説得力のある言葉として、見る者の心に響く。

蜷川監督作品とあって、やはり本作の見どころのひとつは、神木が「この世のものとは思えない綺麗な光景だった」「本読みをいくらやっても分からないことも、あのセットに入ると全部分かる」と形容したセットデザインと美術。セットから衣装や小物に至るまでこだわり抜かれており、幻想的で浮世離れした空間が立ち上がっている。とりわけ、主な舞台となる“ミセ”の各部屋は鮮やかな花々で飾られ、妖しい光に満ち、縁側、障子や襖、蓮の池、藤棚などの美術が、異空間としての印象を濃くしている。柴咲は、「本当に夢のような世界の一幕でした」と回想する。


蜷川監督の脳内を完全再現したかのような“ミセ”のセットとともに、新宿のゴールデン街、渋谷のスクランブル交差点を模した足利のオープンセットなどでも撮影が行われた。ゴールデン街は、人間の生命力に溢れた異界への入口というイメージで、“ミセ”へと続く路上のシーンが撮影された。一方、四月一日が何度も駆け下りるエスカレーターは、「無機質でつまらない日常の繰り返し」を表現しているという。

さらに、蜷川監督作品の代名詞ともいえるのが、その豪華なキャストたち。原作の人気キャラクターで、クールでありながら四月一日をいつも気にかけている百目鬼役の松村をはじめ、秘密を抱える美少女・ひまわり役の玉城、妖えんで残酷な悪女・女郎蜘蛛役の吉岡、その手下で、女郎蜘蛛に心酔するアカグモ役の磯村らが顔をそろえた。神木と柴咲に、撮影の思い出話も教えてもらった。

物語では、「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ。全ての出来事には意味がある」という哲学が貫かれている。ふたりの人生で、いま思えば必然だったと感じる重要なターニングポイントはあったのだろうか。

侑子が大切にしている「願いを叶えるには対価が必要」という思想を軸に、さまざまな欲望を胸に秘めた人間の業や、残酷なまでの因果応報が描かれる。そんな「CLAMP」ワールドの魅力は?


最後に、3度目の共演があったら、次はどんな作品や役どころが良いか、教えてもらった。
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