「ニトラム NITRAM」銃乱射事件を引き起こした孤独な青年を演じた俳優が役作りを語る
2022年3月26日 10:00
1996年4月28日、オーストラリア・タスマニア島の世界遺産ポートアーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件を映画化した「ニトラム NITRAM」が公開された。
閉鎖的なコミュニティで生まれ育った青年は、小さなころから周囲になじめず孤立し、両親との関係も良いとは言えない。同級生からは本名を逆さに読みした「NITRAM(ニトラム)」という蔑称で呼ばれてきた。孤独感や怒りが募り、精神的に追い詰められて犯行に及んだ青年を演じ、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したケイレブ・ランドリー・ジョーンズがオンラインインタビューに応じた。
「マクベス」「アサシン クリード」などで知られるオーストラリアの俊英ジャスティン・カーゼル監督が、事件を引き起こした当時28歳だった犯人の青年が、なぜ銃を求め、いかに入手し、そして犯行に至ったのか。事件当日までの日常と生活を描き出す。
もちろん、脚本を読む前は恐れもありましたが、読んでからは変わりました。監督たちは、この映画をものすごく難しいやりかたで作ろうとしていることがわかったからです。
事件そのものを映像的に再現するのが一番簡単なやりかただったと思うんです。脚本家も監督も、家族の内面的な現実や彼とヘレンとの関係など、事件の外にある、描くことが難しいものに焦点を置いたのです。
この事件を思い出したくないという人も多いはずですが、私はこの映画の製作陣の意図が非常に大事だと思いましたし、彼らのビジョンを実現するために、自分ができることをしたいと思いました。
オーストラリアに着いてから2週間の隔離期間がありました。その時に、監督から「するべきリスト」みたいなものをもらいました。自画像を描く、テレビを見る、音楽を聴くなどの項目があり、1日1本ビデオを撮って監督に送り、OKをもらうというやりとりが、キャラクターの理解の助けになりました。
その行為から、非常にデリケートなこと、すごく静かなことから感情の発露の違いが出てくることがわかったんです。ある種のエクササイズになったような気がします。2週間、選択肢もなく、孤独で過ごすしかなかった。その状況がパーフェクトだったんです。退屈だし、寂しいから、いろんなことが役作りの役に立ちました。中にはペパロニピザを作って食べるだけみたいなビデオもあったんですけれども。
また、監督が選んだ曲に合わせて、喘いで、汗だくになるほどのダンスもしました。きっとこのキャラクターというのは疲れ果てるまで何かをやってしまう人、そういう要素を感じました。私自身が正しいことをしなくてはならない、というような恐怖も押し出してくれ、自分一人では到達できなかったところまで行けた気がします。
そして、隔離後に自分が作り上げてきたキャラクターとして公園を歩いたり、人と話をしました。その時の彼らの反応が、このキャラクターが得たであろうものが出てくれば成功でした。今振り返ると、やはりダンスが一番このキャラクターを理解するのに適切なやり方だったと思います。
このような準備を進めていると、自分の中でなんとなく何かが湧き起こってくるんです。多分、それが監督の計画だったと思います。次第にキャラクターが俳優を支配してきて、こうしろああしろと指示されるような感じになり、俳優はその中ですごく自由になるんです。監督から材料を与えられて、自分なりに俳優として探していけるやり方、ありがたいギフトをもらったような気がします。
お互い人間として尊重することの大切さです。私たちは、自分の知らない人を怖がる傾向にあるし、怖がりすぎて、苦悩している人に手を差し伸べることをしなかったり、そういう人を心に留めることもしないような気がします。そういう意味で、私たちには愛が必要です。そういった基本的なことを忘れてはいけないと思います。
このキャラクターにも、もっと早い段階で助けの手が差し伸べられていたら、あそこまで行かずに済んだと思います。言葉にするのが難しいのですが……、人の感情を当たり前に思わないこと、まわりがやっていても他人を見下さないこと、簡単に状況を判断しないとか、いろんなことを行ってしまいますが、とにかく人間がお互いを大切にすることを大事にしてほしいし、しなければならないと思うのです。
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