マット・デイモン「スティルウォーター」で挑んだ“複雑な役柄”への共感 今後の計画も明かす
2022年1月14日 18:00
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マット・デイモン主演のサスペンス・スリラー「スティルウォーター」(公開中)は、「スポットライト 世紀のスクープ」のトム・マッカーシー監督の最新作だ。仏マルセイユを舞台に、殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、父親が真犯人を探し出す――という物語が展開していく。
主演のデイモンが演じるのは、オクラホマ州の石油掘削会社従業員ビル・ベイカー。殺人罪で収監中ながら「自分は無実だ」と語る娘のアリソン(アビゲイル・ブレスリン)を助けるためフランスへ渡る。このほど、デイモンのインタビューが到着。複雑な役柄を演じるための研究、父親であるビルへの共感、パンデミック後の計画について語っている。
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そんなことはない。というか、今はどの国でもナショナリズムが台頭してきている。これは誰もが共感できることだと思うよ。少なくとも僕はそう感じた。個人的に、こうした議論はいつだって興味深い。90年代からヨーロッパで仕事をしてきたけど、ブッシュ時代を通じてアメリカの海外政策は大きな議論の的で、ヨーロッパのどこへ行っても興味深い議論が尽きることがなかった。トランプはどちらかと言うといつも軽蔑(不賛成)の目で迎えられていたね。
ビルは「投票しなかった」と言い、何となく「ノー」と言っている感じなので皆が安心する。そして彼はこう付け加える。「投票できなかったからだ」と。これが暗示する意味は「もちろん彼(トランプ)に投票しただろう」で、実際にもし投票できていたらビルはそうしていただろう。オクラホマに行って現地の人々と一緒に時間を過ごした時、そこは既に一番真っ赤(=共和党のカラー)な州の1つだった。米国一赤い州とはいかないまでも。石油業界で働いている人は常に共和党に投票するし、それについて謝罪の態度を示すこともない。
彼らは誇りを持った人たちだよ。彼女が「アメリカ人らしい口ぶりね」と言って、彼が「よかった!俺はアメリカ人だ!」って言う時みたいに。彼女の「今のあなたの口ぶりは、とてもアメリカ人らしい」という言葉に軽蔑的な意味が込められているかもしれない理由なんて、彼には分からないのさ。
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ああ。そのあと「最後の決闘裁判」を撮った。この映画も前半部分はフランスで撮影したんだ。いいや。ここ数年はフランスで多くの時間を過ごしたよ。コロナの前だったけど。
ひどいよ! とても残念なことに、英語話者の小さくて偏狭な泡の中にいるせいでね。制作中は、お金に火を点けているのと同じ。だから仕事以外のことをする時間は与えられないんだ。
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ビルを複雑な男にすることが僕たちの目的だった。本作を見るとビルに対し大きく感情移入させられる。彼らと一緒に時間を過ごしてみたところ……政治的には同じ意見ではなかったものの、最終的には彼らに対する理解が深まったと感じる。素晴らしい時間を過ごせたよ。彼らは僕たちに驚くほどのアクセスを与えてくれた。この経験の終わりに僕とトムは、こうした分裂をもたらしている政治家たちに腹を立てていた。僕らのような仕事では幸運なことに、リサーチのためにああいった場所に行き、他の人々の生活を見ることができる。
僕はあの場所を去る時いつも、こう感じていた。僕らを隔てるものよりも、1つにする力のほうがずっと大きいと。いつもね。ケニー・ベイカー……僕らを案内してくれたケニーにちなんで、ビル・ベイカーという名前にしたんだ。当然理解できる……彼は素晴らしい価値観の持ち主だからね。 僕がこれまでに会った誰にも劣らないくらいの働き者で、できるかぎり最高の夫と父親でありたいと願っている。ビルは本当に複雑な人物。そういう人物はあまり描かれないので、僕はとても気に入っているよ。最近の脚本では、ここまで興味深い登場人物は珍しいんだ。
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ほぼ作業着みたいなところがいいよね。彼らが履いているジーンズは防火加工がしてあるのでとても硬い。それにブーツも……僕の服装はケニーが担当してくれた。石油掘削員たちが着る作業着のようなものがあるので、素晴らしい衣装デザイナーであるカラン[・ミューレル]がケニーと直接連絡を取っていたんだ。 掘削現場で着用するべき物がある。ビルがヤギ髭を生やし、サングラスをかけ帽子をかぶった姿は、言ってしまえば作業着を身に着けているようなもの。
器具はとても重いんだ。「おい、それ拾ってくれよ」と言われるんだけど、「それ」はこれくらい大きくて、「なんてこった!」と思ってしまう。そうすると皆が「な、重いだろう?」って。だから結果として彼らはスーパーヒーローではないけど、強い。がっしりした屈強な男たちさ。こうしてビルの見た目を作り上げていったんだ。
ビルのような男たちは皆、「FFTP」と言うタトゥーをしてる。これは「Fuck(クソ/やれ)Fight(戦え)Trip Pipe(穴を掘れ)」という意味だ。彼らの仕事で地中に穴を作ることを「Trip Pipe」という。このタトゥーは多くを語るよね。これが彼らのメンタリティーなんだ。石油掘削員たちは、本当にタフな男ばかり。この仕事は何よりも危険だから、男たちは恐れを知らないと言える。彼らは誰よりも働き者だよ。どこかで会う約束をしたら、30分前には着いていて、トラックに寄りかかりリラックスして、物知り顔で待ってる。トムと僕がケニーに会う時、彼は自分のトラックに寄りかかっていた。彼らは仕事に対して非常に誇りを持っている。誰にでもできる仕事じゃない。できる人はほぼいないよ。
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彼は父親、そして人としての自らの欠点の周りに、恥と罪と深い悲しみの全てを抱えている。ひどく苦しんでいて、自分がもたらしたダメージを繕おうとしている。映画の冒頭に、竜巻が過ぎ去った後に片付けをしている男のショットがあるが、それこそが彼の人生だよね。胸が張り裂けそうだよ。彼には助けようとする巨大な衝動があるが、それを実現するために必要なツールやスキルを一切持ち合わせていない。自分の身の周りに何が起きているかすら、分かっていないような状態。本当に途方に暮れているが、トライを続ける。映画が終わる頃には、最初に自分が望んでいたものを手に入れる。それでも、世界に対して“彼の目が開かれた”せいで、今までと同じ世界にはもう生きていない。甘く苦い結末さ。
父親として共感することはとても簡単だったと思う。すごく簡単に思考実験ができる。もし自分たちが子どもたちにとって「不在」の父親だったとしたら、どんな感じだろうと想像してみる。そう思いながら目覚める時……それは父親にとって悪夢のようなものだし、そうなってしまった関係を修復するのに僕はものすごく努力するだろう。もし僕の子どものひとりに同じことが起きたら、どれほど自分が責任を感じるだろうか、ビルならどう思うだろうか?ってね。だからすごく共感できたよ。
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彼女は最高だ。本当に素晴らしい。本当に限られた時間の中で、彼女は全ての日程をこなさなければならなかったから、大変な仕事だったよ。刑務所での撮影日数を思い出せないけど、多分10日間だったと思う。2週間よりも少ない期間の中に、10日の撮影日数が組み込まれた。どのシーンも3~4ページに渡るシーンで、感情の変化が激しくなる。刑務所のシーンで彼女は様々な様子を演じている。刑務所を出るのに必死な彼女。絶望している彼女。手紙を(弁護士に)渡してくれと父親に頼む彼女。再審になったと思う彼女。全て本当に複雑なシーンで、彼女は輝きを放ちながら、ただその中を駆け巡った。僕は信じられなかったよ。本当に素晴らしい女優さ。
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いいや、それは起こるよ。様々な理由でセリフが少し変わることはある。ロケーションによっては、そのセリフでは意味をなさないことがあるから。その場合は小さな部分を変えなくてはならない。
自分で書いた脚本の場合、役者本人の動力が欲しいと役者たちに伝えるんだ。なぜなら、よく起きること、よく僕に起こるであろうこと、そして他の人にも起こることとして「ここでこういうことを言うべきではないと思う」と役者が言うんだ。もし役者がその感情を感じられないなら、それは演技に出てこない。セリフに何かおかしなところがあるということだ。
だからそういう時は、「君は自分が何か言うべきだと思う?」と聞いてみて、「うん、言うべきだ」と返ってくれば、「じゃあ君がどう言うか見てみよう」となる。ベン(・アフレック)と共同で脚本を書く時や、ジョン・クラシンスキーやケイシー(・アフレック)と共同で書いた時にはそういう風にした。実際に演技をしながら書くんだ。手探りでね。だから僕は、脚本を変える必要があると感じる人がいれば、いつもその意見を聞くよ。なぜなら自分が書いたものを役者が感じていないという徴候であることが多いから。
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ニューヨークにまた戻ることになったので、これからはもっとたくさん劇場に足を運ぶだろうね。ニューヨークにいる時はいつも劇場に行くんだが、今回の引っ越し先はブルックリンなんだ。待ちきれないよ。劇場に行くことは、僕がずっと話してきたことの1つさ。全てのコンサート、全ての劇を残らず見たい。その世界にまた戻ることがとても楽しみだ。オーストラリアで「Hamilton」を見に子どもたちを連れていったんだよ。ニューヨークで見たことがあったけど、もう一度見にいった。ただ行くことができたという理由で。
ああ。カメオ出演だったけど。でもしばらく滞在することができた。オーストラリアでは当時新型コロナウイルスが全くなかったものの、もちろん劇場ではマスクをしていなければならなかった。でもただ劇場にいるという経験……1年半ぶりくらいに舞台を観て、再び(他の観客との)集団にいることができたのが、ただただ素晴らしかった。
(C)2021 Focus Features, LLC.
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