高石あかり、19歳の誓い 舞台版「鬼滅の刃」で熱演した禰豆子役が話題に
2021年12月19日 11:00
7月に封切られた映画「ベイビーわるきゅーれ」(阪元裕吾監督)で主人公となる女子高生の殺し屋を好演した高石あかり(※高は、はしごだか)にとって、2021年は大きな飛躍の年となった。国民的人気漫画を舞台化した第2弾「『鬼滅の刃』其ノ弐 絆」では、前作に続き人気キャラクターの禰豆子役を熱演。本日12月19日に19歳の誕生日を迎えた高石に話を聞いた。(取材・文/大塚史貴)
軽やかな足取りで取材場所に現れた高石は、「ミスID2016」セミファイナリストに選ばれ、ダンスボーカルグループとしてデビューを目指す育成ユニットで、2018年3月まで活動。19年4月から女優としての活動を本格的にスタートさせて2年半余りになるが、まずはロングランヒットとなった「ベイビーわるきゅーれ」できっちりと結果を残したといえる。ダンス経験は、今作でのアクションに生きたのだろうか。
高石:ダンスをやっていたから、何となく出来るだろうと思っていたんですが、色々教えてもらったら体の軸の中心が全く違っていて、すごく興味深かったです。アクション監督の園村健介さんから、「こけ方が上手でいいね。ダンスやっていた?」とおっしゃっていただいた時は嬉しかったです。手のキレとかはダンスと全く違うのですが、大胆さという部分では生かすことが出来たんじゃないかと思いました。
公開規模が大きな作品ではなかったが、ロングランを飾るほど多くの人に愛された理由を聞いてみたところ、「観てくださった方々のコメントを見ていると、『自分に近い』って書いてあるものが多かったんです」と口を開く。さらに、「(自分が演じた)ちさとも(伊澤彩織が扮した)まひろも、社会に馴染めていないわけではないけれど、抱えている悩みを人にうまく伝えられない。そういう些細な部分に寄り添える作品だと思うんですね。監督の演出やセリフも含めて、観てくれた方々にとってどこか刺さるものがあったんじゃないかな」と持論を展開する。
筆者は、今作を異色ではあるけれど青春映画として認識した。ハキハキとした受け答えをする高石は、芝居に対して話をするのが楽しくて仕方がない様子。今まさに青春真っただ中の高石にとって、青春をどう定義しているのか問いかけてみた。
高石:正直なところ、学生生活は私にとっての青春ではなかったです。今も変わらずですが、ずっと人前に出て表現をすることが私の青春。これから心変わりがあるのか、大人になったら変化していくのか分かりませんが、ずっと青春をしている気がします。役者の仕事が子どもの頃からの夢で、ずっと憧れてきてきたので……、もう楽しくて。だから今もまだ夢の中にいるような気分なんです。
ただ高石はこれまで、人から「女優・高石あかり」と呼ばれることに対してどこか違和感を拭えずにいたという。霧に覆われた思いを綺麗に取り払ってくれたのが、筆者が執筆した尾野真千子のインタビュー記事(https://eiga.com/movie/94632/interview/)で尾野が語っている内容だったという。
高石:尾野さんのインタビューにある「夢は映画女優」という言葉がすごく響いたんです。私も女優と言われるようにはなりましたが、自分が思い描いたものには程遠い。すごくモヤモヤしていたんですが、この記事を読んで道が拓けたんです。もっと上を目指さなければいけない。私も尾野さんが目指しているものになりたいと思ったんです。歩みを止めたら、そこで終わっちゃう。きっといつまでも、上を目指していいんですよね。
子どもの頃にテレビドラマを見ていて、女優になりたいと思うようになったそうだが、何がきっかけになったのか聞いてみると、大ヒットドラマ「花より男子」を挙げる。「あのドラマの井上真央さんを見て、『つくしちゃんになりたい!』ではなく、『女優さんになりたい』って言い出したみたいです(笑)。当時の卒業アルバムとかに、必ず書き残していますね」。
初志貫徹の精神があったからこそ、「ベイビーわるきゅーれ」はもちろん、舞台版「鬼滅の刃」の禰豆子役にも繋がったことは言うまでもない。劇場版アニメが空前の大ヒットを飾ったこともあり、自身にまつわる変化を実感することはあったか聞いてみると、満面の笑みを浮かべながら話し出した。
高石:コンビニへ行くと、「鬼滅の刃」に関連したお菓子が必ずといって良いほど扱っているじゃないですか。自分とイコールになるものと毎日どこかしらで触れ合う機会って当然ながら初めての経験なので、不思議な感覚です。禰豆子を演じたというだけで印象も変わるわけで、人が出来ないことを体験させてもらっているという実感はあります。この経験を、これからの人生に生かしたいですね。
周囲の見る目はもちろんだが、役者として“ゾーンに入る”という究極の集中状態を、身を持って経験したことも高石に新たな気づきをもたらしたようだ。
高石:「鬼滅の刃」の舞台1作目の稽古で、禰豆子が鬼と化して兄を守るシーンを何回もやり続けたんです。10分くらいのシーンを7回くらいやったかな……。私は1回終わるごとに息が出来ないくらい辛かったんですが、途中でパチンって線が切れたみたいになっちゃったんです。周囲の音が全く聞こえなくなって、周りもよく見えない。目の前の敵にしか焦点が合わず、頭の中には倒す、守る、しかないんですよ。その体験がすごく楽しかったんです。これまで生きてきたなかで、一番興奮したかも……。その経験がしたくてたまらないんです。それ以降、時々出て来てくれるようになったんですけど。そんなことも含めて、もっと知らない自分に出会いたいんです。その状態のときの自分って、私であって私じゃないと思うので、どうなっているのか映像としても見てみたいんです。
そんな高石だけに、いまの心の拠りどころは「仕事です! 仕事が私の心の拠りどころ」と即答。「仕事以外に何かないの? とよく言われるんですけど、自分には演じるということ以外、いまは何も考えられないんだと思います」とほほ笑む。だからこそ、他者の芝居を見て嫉妬や悔しさを覚えることもないと明かす。
高石:人のお芝居を見て、悔しい! じゃなくて、やりたい! になるんですよ。この表情すごい! と思うと、どうやったらその表情を作れるのか、どういう感情をイメージしたらその表情が作れるのかを考えて、ニヤニヤしちゃうんですよね。
好奇心はどこまでも旺盛で、知らない世界の話であれば瞬きすることすら忘れ、前のめりになって聞き入る。たとえそれが、説教であっても。担当マネージャーによれば、「仕事の話をしている時が、一番目をキラキラさせています。叱っている時でも前のめりなんです(笑)。前向きに転換できるタイプなんでしょうね」と苦笑いを浮かべながらも、姉のような眼差しで見守っている。
本格的に女優として活動を始めて、ほどなくしてコロナ禍に入ったこともあり、当初思い描いた2021年ではなかったかもしれない。それでも、忘れがたい光景があると高石は語る。
高石:舞台のカーテンコールです。ずっと緊張感が漂っていて、感情を切らさないように集中してきたなかで、それがいったん途切れる瞬間なんですよね。客席のライトもついて、お客様全員が舞台側を見てくれている。ひとりひとりのお顔も見ることが出来ますし、評価とかその後のことはいったん横に置いておいて、そこに至るまでのことが「これで良かったんだよ」と言ってもらえているようで、全肯定の瞬間として忘れることが出来ませんね。
22年は新たな映画の仕事の話も進行しているようで、高石の知的好奇心は増すばかり。10代ラストイヤーをどのように躍動し、20代に突入していくのか目を離すことが出来そうにない。
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