ディカプリオ「コロナの時代に参加した作品としては重要な1本」 Netflix「ドント・ルック・アップ」を語る

2021年12月14日 10:00


オンラインで行われた記者会見に出席!
オンラインで行われた記者会見に出席!

Netflix映画「ドント・ルック・アップ」の記者会見が12月5日(米国時間)、オンラインで行われた(同日夜には、ニューヨークでワールドプレミア上映を実施)。会見には、主演のレオナルド・ディカプリオジェニファー・ローレンスのほか、共演のメリル・ストリープタイラー・ペリージョナ・ヒルアダム・マッケイ監督が出席し、作品への思いを語った。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

巨大彗星衝突という地球の危機を発見した天文学者と教え子が、世界の人々にその事実を何とかして伝えようと奔走。人類に警告を発するためにメディア・ツアーを行う姿を描いたブラックユーモア満載のコメディだ。

天文学専攻のランドール・ミンディ博士(ディカプリオ)は、落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイト・ディビアスキー(ローレンス)とともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。仲間の協力も得て、オーリアン大統領と、彼女の息子であり補佐官のジェイソンと対面したり、陽気な司会者ブリーによるテレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけるが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へ向かう。

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近年、科学者に対する世間の風当たりが強いように思える。ディカプリオは「彼らは、明らかに世間の風当たりを耳にしている」と断言。「マッケイ監督は、今作では気候変動の危機について言及している。そして、6カ月以内に小惑星が衝突するという状況の中で、科学がいかに政治化されていくのかを描き、緊迫感を生み出してみせた。また、今作にはもうひとつの事実がある。科学界を通して出会った多くの人々――特に緊急性を伝えようとしてきた気候科学者たちに、僕は感謝をしているということだ。(インターネットが普及した世界では)彼らは、まるで新聞の最終ページのような存在になってしまっている」と嘆くと、ローレンスは「真実を学ぶことに人生を捧げてきた人々が、真実を通じて語る――その発言が受け止められず、人々から背を向けられてしまうことは、とても悲しく、苛立しいことだと思う」と補足した。

続けて、ディカプリオは自身の役どころ、そしてローレンスが演じたケイトについて話してくれた。

ディカプリオ「ジェニファーが演じたケイトは、グレタ・トゥーンベリ(スウェーデンの環境活動家)のように、信じられないほどの率直なキャラクター。一方、僕が演じたミンディは、システムの範囲内で行動をするタイプなんだ。僕はこのミンディという役が、人々が真実とは思えないようなことを、しっかりと真実として伝えようとしているところが好きだ。今、新型コロナウイルスが蔓延し、新たな科学的議論が起きている。だからこそ、コロナの時代に参加した作品としては、非常に重要な1本となった」

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劇中で取り上げられるのは、気候変動などのシリアスな問題。そのような題材を用いながらも、本作はコメディ映画として仕上がっている。マッケイ監督は「気候変動は、非常に圧倒的であり、間違いなく人類の歴史の中で最大の脅威。まるで猛獣が攻撃してくるような感覚だ」と前置きし、その意図を明かす。

マッケイ監督「現実に圧倒されることもあるかもしれない。しかし、今作で笑うことができるならば、ある程度の距離を置いて見ることも大事だと思っている。ユーモアを持ちながらも、現実における切迫感、悲しみ、喪失感は同時に感じることができる。そこにこの映画の意図があるんだ」

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長年にわたり、生物多様性、生息環境の保護、気候変動問題を解決するために行動を起こしてきたディカプリオ。「ドント・ルック・アップ」のような主題を「10年くらい探していた」という。

ディカプリオ「本作では、最終的に誰もが“どのような違いを生み出すことができるのか”と感じることが問題になっている。原因に対して、自分はどのような貢献ができるのか? マッケイ監督は、この作品をコメディとすることで、その謎の暗号を解読したと思っている。我々全員が定期的に話し合うことが最も重要なんだ。マッケイ監督のようなアーティストによって、これまでとは異なった物語にすることができだ。そんな映画に参加できたことを光栄に思う」

ケイトは、発見した小惑星に自身の名前をつけられるという設定だ。「当初、ケイトは小惑星の発見を誇りに思っていた。でも、ディビアスキーと名付けられた小惑星を人々が恐れ始めたことで、怒りがこみあげてくるようになる」とローレンスが語ると、ストリープは「その命名のくだりについては、私も考えさせられることがある。例えば、アルツハイマー病(発見した人物の名前は、アロイス・アルツハイマー)は、どう思っているでしょうか? 科学者は、発明、発見による偉業に対して、自分の名前をつけたがるけど……それはどうなんでしょうね」と個人的な意見を明かした。

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また、ストリープは、自身が演じたジャニー・オーリアン大統領について「この役はさまざまな場所から(参考になる人物を)引っ張り出して、役作りをしたと思っている」と説明。「なぜなら最近、非常に多くの馬鹿げた人たちが、公共の場で恥を晒していたから。だから、さまざまな場所からアイデアを取り入れて、この役柄を望むようにまとめることができたのは楽しかった。いかに権力とお金を集め、良いネイルとヘアスタイルをしているのか……ということだけだったけどね」と自虐的に答えるほど、個性的な大統領を演じている。

ペリーは、ニュース番組の司会者ジャック・ブレマー役として参加。モデルになった人物はいたのだろうか?

ペリー「実は、現在朝の番組に出演し、僕が憧れている人物に電話したんだ。ひとりはジョー・スカボロ(MSNBC・朝の番組「Morning Joe」司会者)。もうひとりはマイケル・ストレイハン(ABC・朝の番組「グッド・モーニング・アメリカ」のレギュラー)だ。彼らに脚本の一部を送り、彼らがそれを読んでいる映像をiPhoneで撮影して送ってもらったんだ。もっとも彼らはプロの司会者で、僕が演じた役はプロとは言えないけどね。ただ役作りをするうえでは、とても役に立った」

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ヒルは「(ディカプリオは)お金と時間を費やして、この問題(=環境問題)を主張してきた。僕はコロナ禍の2年間、多くの人々がどのように苦しんできたのかを学んだつもりだ。皆が家に閉じこもっているなかで、(今作を通して)僕らは笑ったり、考えたり……何かを作ったりすることは素晴らしいことだ。感情的にも意味のあるものになった」と振り返る。そして「これまでベストな俳優たちと仕事をしてきたが、ディカプリオほど義理堅く、誠実な友人はいない」と語っていた。

ドント・ルック・アップ」は、一部劇場で公開中。12月24日からNetflixで配信。

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