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「アメリカの複雑さが今までの私の映画に出ている」 「ボストン市庁舎」フレデリック・ワイズマン監督に聞く

2021年11月14日 09:00

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フレデリック・ワイズマン監督
フレデリック・ワイズマン監督
Wiseman by Wolfgang Wesener

ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンの新作で、マサチューセッツ州ボストンの市役所と街の姿を捉えた「ボストン市庁舎」が公開された。多様な人種と文化が共存する大都市の、警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生と死亡記録、ホームレス支援、同性婚の承認など数百種類ものサービスを提供する市役所の仕事の舞台裏、職員の仕事ぶりと意識、そして、市民ために真摯に働くマーティ・ウォルシュ市長の姿を映し出し、理想の行政の在り方、民主主義の重要性を観る者に問いかける。ワイズマン監督にオンラインで話を聞いた。

――本作はトランプ大統領在任時期に撮影されており、ウォルシュ市長はトランプ政権を批判していました。監督ご自身も、当時の政権に思うところがあって、この映画を撮られたのでしょうか?

いえ、私は純粋に市役所についての映画を作りたかったのです。しかし、トランプは日々愚かなことをして、ウォルシュは毎日市民の利益のために働いていました。カメラを回し続け、そういった対比がはっきりと見えるようになっていきました。

――マサチューセッツ州ボストンは、監督の生まれ故郷でもあります。この映画を撮ることになった理由のひとつでもあるのでしょうか?

自分がボストンで生まれたことに特に影響は感じていません。ここ20年はパリで生活していますし。ボストン生まれだといっても、ほとんど郊外のケンブリッジという街で育ったのです。ボストンで仕事をしたことはありますが、中央行政にかかわりはありませんでしたし、政治にも積極的にかかわっていたわけではないのです。

――裁判所、図書館、学校や病院など、これまで様々な角度からアメリカについてのドキュメンタリーを発表されています。ご自身がアメリカ人であることについて、どのように考えられますか?

誇りに思っているということはありません。自分がアメリカ人であることは否定しませんが、アメリカはとても複雑な国であり、その複雑さが今までの私の映画に出ていると思います。

――コロナ禍はあなたの仕事にどんな影響を与えましたか?

パンデミックのせいで、仕事ができなくなりました。それは大きな変化です。フィクション映画は作りましたが、19カ月もの間、ドキュメンタリー映画を作っていません。そして、ずっと孤独でした。19カ月自分の部屋に閉じこもっていたようなものですから。

――あなたの作品では、市井の様々な人々の顔を映します。その一人一人の表情が、俳優のようにそれぞれの人生と役割を背負っているように見えます。長年多くの人々をカメラで捉えてきていらっしゃいますが、もう顔を見ただけで、どのような人生を歩んできた人間だと分かり、被写体を選ばれるのでしょうか?

撮っているときににそういった見方はしていません。私は人間がなぜそういうことをするのか、そういうことを言うのか、ということを撮ろうとしているのです。むしろ、編集者として、その経験を理解できるような形にまとめていこうと思っています。

――274分という長時間の映画ですが、市庁舎のさまざまなセクションの業務、それぞれの仕事に真摯に取り組む職員の姿、そして市民の生活を見ているとあっという間に時間が過ぎます。今回の映画化にあたり、撮影前にはどのような交渉をされたのですか? また、ウォルシュ市長とはどのようなお話をされましたか?

撮影にあたっては、どこでも、自由に行ってよいという許可をもらえました。ウォルシュ市長とは鑑賞後、オンラインミーティングを持ちました。この映画が非常に好きだという感想をもらいました。

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