ミニシアター「K2」下北線路街に2022年1月誕生 オープンに先駆けたクラウドファンディング実施中
2021年11月8日 10:00
クラウドファンディング・プラットフォームを運営する「MotionGallery」が2022年1月、下北線路街の商業施設・シモキタエキウエ直結「(tefu) lounge」(テフ ラウンジ)に企画プロデュース団体Incline(インクライン)の主体社としてミニシアター「K2」(ケーツー)を立ち上げる。日本初のクラウドファンディング・プラットフォームが運営に携わる映画館となり、オープンに先駆け、本日11月8日から各種リターンを用意したクラウドファンディングを開始している。
2019年の下北沢は、小田急線「東北沢駅~世田谷代田駅」の地下化に伴い、全長約1.7キロメートルの線路跡地を開発して生まれる新しい街「下北線路街」(https://senrogai.com/concept/)が立ち上がろうとするタイミングだった、「K2」の物語は「ここに新しく映画館をつくれないか」と相談が舞い込んだことから始まった。
2020年1月、日本国内ではコロナが猛威を振るい始め、時に映画館は名指しもされながら、強い自粛を求められた。そのなかで顕在化したのが、ミニシアターへの多大な影響だ。 映画館という特殊な施設には、立ち上げや運営には少なくない予算が必要。それだけでなく、長い時間をかけて地域に文化を育んできた場所という意味においては、一度失われるとその回復は容易ではない。ビジネス的な目的よりも、文化的な目的に向けて運営されていることが多いミニシアターにとって、コロナ禍が与えた経営的な影響は甚大だった。
「MotionGallery」代表の大高健志氏も発起人を務めた「ミニシアター・エイド基金」は、「その状況に少しでも時間的余裕を」という考えを持って始まった。「ミニシアターを守りたい」という映画ファンの声。その声から、各地のミニシアターがどれだけ地域に根ざした活動を日々コツコツと行ってきたのかと強く実感することになった。ミニシアターは、その街の文化を映す鏡のような場所であり、文化の多様性を私たちに教えてくれる場所。そんな社会的意義をコロナ禍で改めて共有・認識することになった。
ミニシアターが新しく生まれる――それは映画作品の出口が一つ増えるというような単純なことではない。下北沢という街のための新しい文化施設が生まれ、年齢も性別も関係なく、街の人が思い思いに立ち寄れる“共有地”が増えること。「下北沢という文化の土壌がある中に立ち上げられるのだから、最初から街の交流装置として位置づけられていたら、それだけで他の街とは絶対に違うミニシアター像というのが立ち上がるはず」という思いが込められている。
「K2」が目指すのは「文化が好きな人たちの結節点となるような映画」。そして、普遍的な学びを共有する場所として「雑誌『K2』の発刊」「オンラインスクリーンでの特別上映プログラム」も取り組んでいく。
コロナ禍に新しく生まれる映画館だからこそ、オンラインとオフラインの“ハイブリッドの形”を模索。代表的な事例は、映画館での劇場公開に連動したバーチャル・スクリーン「Reel」だ。「Reel」で上映される作品は、映画館で実際に上映されている期間に限り有料でオンライン鑑賞ができる。売上の一部は、その作品を上映している各劇場に均等に配分。オンライン上映で発生する利益を、デジタルが浸透している都市だけでなく、地方の劇場にも等しく分配することで、日本全体の映画文化を担保し続けようとするアクションであり、リアルとバーチャルでの映画鑑賞の体験を、相互に補完する狙いがある。なお「Reel」の第1回作品は、「K2」のこけら落とし上映作品でもある「偶然と想像」(濱口竜介監督)となっている。
また、ベーシック・インカムプラットフォーム「BASIC」を利用したファンコミュニティーも立ち上げる。このコミュニティーは、ストック型で持続的な支援につながる月額参加型。映画体験をより豊かにしていくためのアクションを行う(前述の「オンラインスクリーンでの特別上映プログラム」を含む)。「Reel」とは異なり、「K2」単体のアクションとして、「K2」で上映する作品の関連作品、同時に鑑賞することで新しい意味が生まれるような作品をセレクションし、オンライン配信する。
クラウドファンディングは、公式HP(https://motion-gallery.net/projects/k2-cinema)にて、22年1月31日の23時59分まで実施中。目標金額は、300万円。資金の主な使い道は、開館に向けての初動費用。1日館長、内覧会招待、オリジナル雑誌創刊記念号などのリターン(500円~25万円)が用意されている。
北原豪氏(Incline LLP役員/株式会社Sunborn代表/株式会社weroll共同代表)、大高氏、大槻貴宏氏(下北沢トリウッド代表/ポレポレ東中野代表)、本多愼一郎氏(本多劇場グループ総支配人)のコメントは、以下の通り。
僕は10代20代をミュージシャンとして下北沢のライブハウスで過ごし、30代で音楽を辞めてからも下北沢の文化や街が好きで、今は住民として子育てしながら過ごしています。このプロジェクトには、地域住民としての自分と、過去の表現者としての自分も含めた、夢の実現として取り組んでいます。ミュージシャンだった昔の自分がヒントを掴んだり、子どもたちが成長に合わせて刺激(時にちょっと背伸びした)を受けたり。年代関係なくみんな自然と居合わせて、混ざっていて、居合わせている以上の理由もいらなくて、連帯や共感を感じられる場。そんな場があったらとても素敵です。映画館にはある種公共性があって、それが年代や好きなジャンルを飛び越えて、受け容れて繋げてくれる力があると思っています。そもそも下北沢には色んなジャンルの表現やモノがある。すごいポテンシャルです。でも意外と交流はしていない。少なくとも若い自分がそうでした。そこの境界がもっと混ざったらどうか。その可能性にとても夢を感じています。新しい映画館『K2』を、そういった「街の仕掛け」にしていきたい。その仕掛けが生み出すものを一緒に見つめて育てていける仲間が増えることを願っています。
僕は、これまで一番影響を受けている時間は「映画館で映画を観る時間」だと実感することが多く、この本当に貴重で重要だと感じる文化発信の場に携わることの大きさを改めて感じています。映画が大好きで映画館に通い詰めていたものの映画に関わる仕事に就こうとなんて思っていなかった学生時代。しかし政治哲学という一見遠い領域を専攻していたことで結果的に映画やアートに携わりたいという方向性に導かれたり、はたまた脱サラして藝大に進学したのにそのまま映画製作ではなくクラウドファンディングを立ち上げるというこれまた一見遠い領域で活動し始めたのことが結果映画館の運営に携わることになったりと、本当に不思議なご縁を感じています。一方で、そんな振れ幅の中でも「文化」と「公共性(もしくは親密圏)」という社会彫刻という概念に収斂するワードが常に僕の中では活動に共通していました。映画館「K2」のコンセプトとして、下北沢の文化的“コモンズ(共有地)”を掲げさせていただきましたが、まさに文化の公共性である映画館を、下北沢に関わる人たちが主役となるコモンズとして運営していくことで、きっと下北沢に、そして映画文化に貢献することが出来るのではないかと考えています。もしかしたら向こう見ずな挑戦かもしれませんが、ぜひ1人でも多くの方に応援いただき、そしてそして1人でも多くの人に「映画館で映画を観る時間」をより良く届けることが出来るように頑張って行きたいと思います。応援よろしくお願いします。
K2開館、おめでとうございます。現下北沢唯一の映画館としては、お客さんや作品を奪われやしないかとドキドキして…というのは冗談で(笑)、本当に心から楽しみにしています。演劇でも古着屋さんでも複数ある方が、お客さんの選択肢が増え、それにより全体のパイを増やせるのだろうし、ひいてはそれが文化になっていくのだろう、とお互い、もっと面白いもっと変なことを探して、様々なものと出会える街を目指していきましょう。
下北沢にミニシアターオープン、 映画界も音楽会も演劇界も厳しい時代にとても明るいお話です。下北沢はライブハウスも劇場も多い街で 映画館はトリウッドさんだけでした。この状況で映画館をオープンされることに意気込みを感じます。芸術文化とか堅苦しい言葉抜きで街の皆様が気軽に観に来られて、楽しんでもらえる場所として映画館もライブハウスも劇場にも来ていただきたいと思っております。作品を観てもらえて、語り合い、集まれる場所。観た後も観る前も下北沢は温かい街です。ご一緒に少しでも下北沢を御盛り上げて行ければと思っております。 応援してます。
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