第22回東京フィルメックス、最優秀賞作品賞はジョージア、タイ監督の2作品 コンペ7作品のオンライン配信決定
2021年11月7日 19:00
第22回東京フィルメックスの授賞式が11月7日に有楽町朝日ホールで開催された。ジョージアのアレクサンドレ・コベリゼ監督の「見上げた空に何が見える?」と、タイのジャッカワーン・ニンタムロン監督「時の解剖学」の2作品が最優秀賞作品賞に輝いた。
審査委員長の諏訪敦彦監督は、2作品を最優秀賞作品賞に選んだ理由について、「異例な結果となったが、それぞれユニークなアプローチで、映画の未来を開いてくれていると思っている。2本の優劣付け難かったとか、同等に評価した結果ではありません。2本に対して、審査員それぞれが映画に何を見よう、何を求めているか、そういった別の視点。それをひとつに取りまとめるのではなく、2つの違うアングルを提示しようと思った。映画の未来の多様性に対する励ましのメッセージと受け取っていただけたら」と説明した。
最優秀賞作品賞に輝いた2作品は、コンペティション出品作10本から選ばれた。「見上げた空に何が見える?」は、街で偶然出会い、一目で恋に落ちた男女の外見が、不思議な力によって翌日に完全に別人になってしまうという物語。審査員を務めた小田香監督は「カメラは存在するすべてのものに平等な視線を注ぐ。一方的な暴力装置にもなりうる映画=カメラを使いながら、被写体とフェアな関係を結ぶことに成功し、イメージは映画と世界への対話へと開かれている。『見上げた空に何が見える?』と問う、このユニークな挑戦は映画の未来に一筋の光を見せてくれる」と作品を評した。
「時の解剖学」は、1960年代後半と現代のタイを舞台に、一人の女性の人生が時を隔てて描かれ、そこに国家の負の歴史が交錯する物語。審査員のウルリケ・クラウトハイム氏は「登場人物の過去と現在、様々な時間や歴史の要素が魅力的な方法で組み合わされている。私たちは現実と非現実が共存するところに誘われ、物語の断片を繋ぎ合わせて、それぞれの観点からとらえ直すよう促されます。自然、登場人物のなどアンビバレントな要素もこの映画の魅力」と選出理由を述べた。
両監督は、ビデオメッセージで喜びと感謝を会場に伝えた。「見上げた空に何が見える?」は、学生審査員賞も受賞。コベリゼ監督は「この映画は孤独で長い道のりだった。私の孤独の長い旅が素晴らしい賞をいただいたことでハッピーエンドとなりました」と2冠獲得の喜びを語った。
最優秀作品が2作ということで、今年の審査員特別賞はなし。諏訪監督は講評にあたり、「私は審査をしたり、されたりする時に心の中でつぶやく言葉がある」と前置きし、「たくさん賞を獲るくだらない映画もある、ひとつも賞を獲らない素晴らしい映画もある。ただそれだけのことなんだ」というクリント・イーストウッドの言葉を紹介する。
そして、「審査をするのは作品に対し、判断を下したり、ジャッジをするのではなく、映画に対するしんさいんとしてのパーソナルなものを表現することだと思っている。様々な困難の中で、リスクを負いながら力強い作品を届けてくれた10本の作品の監督とチームに心から敬意を表したい。それぞれ社会や個人の中に存在する様々な問題にアプローチし、いかに映画にするという勇気あるチャレンジを見せてくれた」と審査過程を振り返った。
なお、観客賞は濱口竜介監督の「偶然と想像」。高田聡プロデューサーが登壇し、濱口監督作品としては、「PASSION」が2013年に第9回フィルメックスのコンペティション部門に選出されたことに触れ、「『偶然と想像』には『PASSION」の出演者3人がいることも受賞の喜びをさらに大きくしています。会場から大きな笑い声が響くたびに、幸せな気持ちになりました」と濱口監督からのコメントを代読した。
今回から新プログラムディレクターに着任した神谷直希氏は、「9日間、色々な方に助けていただいてこの映画祭が成り立っていることを実感しました。次回への準備を進めていきたい」と振り返り、今年もコンペティション作品のオンライン配信の決定を発表した。7作品がオンライン配信される予定で、11月23日まで特設サイトから鑑賞できる。詳細は東京フィルメックス公式HP(filmex.jp)で告知する。
観客賞:濱口竜介監督「偶然と想像」
学生審査員賞:アレクサンドレ・コベリゼ監督「見上げた空に何が見える?」
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