アニメ監督の渡辺歩と水島精二が語る主人公の作り方 自分だけの“裏設定”で意気投合
2021年11月6日 14:00

第34回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門マスタークラス「2021年、主人公の背負うもの」が11月5日、東京・丸ビルホールで開催された。特集として上映された「漁港の肉子ちゃん」監督の渡辺歩、「フラ・フラダンス」総監督の水島精二が登壇し、アニメ評論家の藤津亮太氏による司会でそれぞれの監督作で主人公をどのように作っていったのか語りあった。
アニメ業界で長年活躍してきた両監督は意外にも今回が初対面で、1966年生まれ、初監督を務めたのが98年という共通点がある。水島監督が「(渡辺監督のほうが)完全にキャリアも年齢も上だと思っていました」と切り出すと、渡辺監督も「水島さんのほうが、はるかにアニメの監督としてバリューが確立されている方」と答え、お互いにアニメ業界の先輩だと思っていたことを告白しあうところからトークはスタートした。
(C)2021 TIFF今年6月に公開された「漁港の肉子ちゃん」の主人公は、肝っ玉母さん風の肉子ちゃんと一緒に暮らす11歳の少女キクコ。渡辺監督は「僕はスロースタートというか(作品を)読み解くまでに時間がかかってしまう」と話す。キクコが最後に自分のルーツを知って成長していく予感のようなものを物語の軸にすることで、映画として一本筋が通るものにできるのではないかと作りながら気がついたという。「今もって分からない部分があります」と吐露しながら「(製作)当時は不安でした」と振り返る。
水島監督が手がける「フラ・フラダンス」(12月3日公開)は、福島県いわき市を舞台に新人フラダンサーの成長を描くオリジナル作品。同作は東日本大震災から10年の節目に被災3県を舞台にしたアニメを製作する「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」の1作で、監督オファーの時から「応援する」がテーマだった。
(C)2021 TIFF同作のようなお仕事ものが見る側としても好きだと話す水島監督は、「見終わって劇場を気持ちよくでられて、映画で描かれたキャラクターや場所を大事に思えるような作品にしたかった」と企画当初からの思いを述懐。新人フラダンサーとして働く主人公の夏凪日羽(なつなぎ・ひわ)は物語を引っ張っていくタイプではなく、一緒に働く仲間たちが彼女を肯定し、導いていく人物だと紹介する。「みんなに愛してもらえるキャラクター像にすれば、この映画は上手くいくかなと思った」と「応援する」というテーマとリンクさせるためにキャラクターを配置していった経緯を明かした。
(C)2021 TIFFトークの終盤、両監督ともキャラクターの一貫性を保つために自分だけの裏設定をつくっているという話題で盛り上がる一幕もあった。「他の人にはまったく言っていないけれど、自分のなかだけで決まっているルールのようなものがあります」(水島)、「実は、同じ絵を描いている作画監督にも共有していない部分もある。そこがよくチェックでケンカする部分だったりする」(渡辺)と意気投合。さらに水島監督は、「絵描きのトップの人は、だんだん分かってきて『こういう表情にしたいんだろ、お前』みたいになる(笑)」と続けると、渡辺監督は深く頷きながら「それをね、こちらの意図を超されるとちょっと悔しい(笑)」と返しながら、2人とも一緒に仕事をするアニメーターの仕事を称賛していた。
第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催。イベントの模様は、YouTubeの公式チャンネルでアーカイブ配信中。
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