ジャック&ベティ30周年記念「誰かの花」 奥田監督「上映してほしい映画を作った」
2021年11月4日 20:30

第34回東京国際映画祭「アジアの未来部門」で、「誰かの花」が11月4日、上映され、Q&Aでは奥田裕介監督、主演のカトウシンスケ、村上穂乃佳が登壇した。
団地のベランダから植木鉢が落ち、通りがかりの住民が死亡した事件をめぐる、認知症の父(高橋長英)に疑念を持つ息子(カトウシンスケ)、亡くなった住民家族の姿を描く。ほかに吉行和子が出演し、ミニシアターの「横浜シネマ・ジャック&ベティ」が30周年として企画・製作した。

横浜生まれ横浜育ちで、10代の頃から同館に親しんでいたという奥田監督は「30周年のお祭り的なものではなく、ジャック&ベティで流れていてほしい映画を目指しました。最初は別のお話を書いていたのですが、5年前、身内が交通事故で亡くなったことを書かないと前に進めないと思った。最初は“交通事故ダメ”というお説教みたい話だったが、被害者家族が加害者になった時、心がどう動くのかと思った」と経緯を明かした。
東京育ちのカトウは「僕にとって、横浜は友達が住んでいる場所。(舞台となった団地は)僕が抱く横浜エリアの印象に近い。なんで団地を舞台にした映画になったのだろうと思ったが、やっているうちに監督が目指していることがわかった。リアリティーがあって、地続きで芝居ができた」。介護士役の村上は「(団地は)いろんなお店があって、小さな町のようだった。コロナ禍なのか、多くの店が閉まっていたけども、あそこに住んだら、全部が済んでしまうような場所でした」と振り返った。

観客からは「ヨレヨレが似合う人」「死んだ魚のような目がすごい」という“おほめ”の言葉をもらったカトウは「ヨレヨレで、死んだ魚の目を持ったカトウシンスケです」とユーモアたっぷりに改めて挨拶。「主人公は無自覚なところがあって、いい人間か、どうかは分からない。でも、自分の身内が傷付けられたら、法律よりも優先させてしまうかもしれない」と話した。
ラストは観客への問いかけのように終わるが、「みなさんはどう思われたのか、ご感想をいただきたいです」と奥田監督。「誰かの花」は12月18日、横浜シネマ・ジャック&ベティで先行公開され、1月29日から全国で順次公開される。
第34回東京国際映画祭は、11月8日まで、日比谷、有楽町、銀座地区で開催中。
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