豚にタトゥー、大便製造機を作った芸術家がカメオ出演 難民問題と現代アートの風刺劇「皮膚を売る男」のインスピレーション源
2021年10月29日 21:00
第77回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で男優賞受賞、第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネート作で、チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督が、移民・難民問題をめぐる偽善や現代アートに関する知的欺瞞を風刺した映画「皮膚を売った男」。本作製作のきっかけとなったのが、ベルギーの芸術家ビム・デルボアの作品だったとハニア監督は明かしており、その驚くべき作風で世界の話題を集めるデルボアが、カメオ出演している場面写真を映画.comが入手した。
映画「皮膚を売った男」は、難民の主人公サムが自身の恋人に会うために芸術家と契約を結び、背中に「VISA」のタトゥーを彫り自らがアート作品となる風変わりな物語が展開される。ハニア監督は「パリのルーブル美術館で、ベルギー人アーティストのビム・デルボアの回顧展を巡っていました。その時にナポレオン3世の居室で『Delvoye's Tim』という作品を見かけインスピレーションを受けました」と、この映画の発端を語る。
デルボアは、豚にタトゥーを入れた「Art Farm」、大便の製造過程を機械化した排泄装置「Cloaca」など物議を醸す作品のほか、ゴシックやバロックなどの古典的な芸術様式を取り入れた作品群など、その多彩な表現で注目を集めるコンセプチュアルアーティストだ。2014年にはヨコハマトリエンナーレにも出品している。本作では美術展での撮影協力や、ハニア監督の脚本を読み、現代アートへのアプローチについてアドバイスしたほか、自身も映画への参加を希望。保険業者の役でカメオ出演している。
映画のインスピレーション源となった「Delvoye's Tim」は、肘掛け椅子に座った上半身裸のティム・ステイナーの背中に、デルボアがデザインしたタトゥーが施された作品だった。「ビムは以前に豚にタトゥーを施しそれを作品にするといったものを手掛けていました。そののち人間にもタトゥーを施し美術品にしていくことを手掛けるまでに至ったんです。豚にタトゥーをいれている頃から様々な議論が巻き起こっていましたが、いうまでもなく人間にタトゥーを入れるということでその議論は更に膨らみました」とハニア監督。続けて、「私がこの作品を見て考えたのは、一つはアートの市場やシステムの中で現代美術がどこまで挑戦していくのか非常に興味を持った事。そして、もう一つはこの背中にタトゥーを入れられた男は一体何者なんだろう?と。どういう思いがあって自らを美術品にするという行為に至ったのだろうと疑問に思いました」とビムの作品から受けた影響や疑問を語っている。
本人のカメオ出演に至った経緯を監督はこう話す。「ビムには是非作品に出演して欲しいという思いがありました。どの役を演じてもらうか試行錯誤しましたが最終的に保険業者の役をやってもらうことになりました。彼の作風から感じ取れるように彼自身挑発するのが好きなようで、乗り気で微笑みながら演じてくれました」ちなみに、デルボアは完成した映画を大変気に入り、その感想を監督に電話で2時間もかけて伝えたという。
本作は、第77回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門でプレミア上映が行われ、主演のヤヤ・マヘイニが男優賞を受賞。他にも第26回リュミエール賞合作賞の受賞や第31回ストックホルム国際映画祭脚本賞の受賞など、賞レースを席巻した。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、92%フレッシュという高評価を得ている(6月30日時点)。11月12日からmBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。ビム・デルボアHP(https://wimdelvoye.be/)。
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